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第41話 ロディ、魔力制御を教える

「みんな、今後の事について話をしましょう。」


 ナコリナがそう切り出した。ロディ達の今日のメインの目的はそれだった。

 皆の、とくにテオとレミアがまじめな顔つきになる。


「徘徊ボスのオークキングを倒したことで、私たちのこのダンジョンでの目標は達成されたわ。今さら通常ボスのオークジェネラルを倒す必要はないと思うの。」

「そうだね。もうやる気も無いしな。」


 ロディとエマが頷く。


「そうすると、近々ミズマの街を出ていくことになるけど、そうなるとやっておかなければならないのが、テオとレミアの魔力の事。」


 ナコリナが2人を見る。テオもレミアも黙ったまま若干緊張の面持ちで聞いている。


「安心して。2人とも一緒に行く。それは変わらないわ。」


 その言葉を聞いてほっとしたように、2人のこわばった顔が緩んだ。2人には『連れて行きたい』と伝えてはいたが、やはり気が気ではなかったのだろう。


「2人を連れて行くには魔力対策をする必要があるわ。大丈夫。ちゃんと対策を考えてきてるから。今からそれを説明するわね。」

「俺から説明するよ。」


 ロディがナコリナから話を引継ぎ、説明を始める。


「テオとレミアは、お腹のあたりに埋め込まれた何かの物・・・わからないけど仮に『魔道具』と言っておこうか。この魔道具が魔力を使用し続けるために魔力が減り続ける。これで間違いないよね。」

「そうなのだ。これのおかげで魔力が減っていくのだ。」

「それなら、まず2人にやってもらうことは、魔力制御の訓練だ。」

「「魔力制御の訓練??」」


 テオとレミアはイマイチピンと来ていない顔をした。


「魔力制御というのは、自分の体内にある魔力を制御して、自分の思い通りに操るようにするということだ。」

「それをやるとどうなるのだ?」

「魔力制御が上達すれば、身体強化も出来るし、魔法の速度、命中率、持続率などが上がるから、普通の魔法師などはみんな訓練しているよ。」

「そうなのか・・・。」

「知らなかったのだ。」


 レミアたちはどうやら魔力に対しての訓練があるということを知らないようだ。田舎の村々にはあまり知れ渡っていないらしい。

 ロディは更に説明を続けた。


「訓練して体内の魔力を操れるようになれば、魔力を体の一部に送り込んだり、体内で魔力が濃い部分と薄い部分を自在に作り出したりできる。それが出来れば、」


 ロディはテオのお腹を指さす。


「テオ達のお腹の魔道具の部分に、魔力を流さないようにできる。魔力が流れなければ魔道具は魔力を使うことが出来ない。そうなればテオとレミアは魔力が減り続けることが無くなって、外に出ても魔力欠乏症にはならない、ってことになる。」

「そ、そうなのか!」


 テオとレミアの顔がパッと明るくなった。外に出られる可能性が、空想ではなく現実的な話で示されたのだ。喜ばないわけがない。


「2人にはそれを出来るようになってもらう。だから2人はこれから魔力制御の訓練をするんだ。いいかい。」

「「もちろん(なのだ)!」」


 2人はこれから行う魔力訓練に意気込んでそう答えた。


「私はやるのだ。絶対に魔力制御できるようになって外に出るのだ!」

「ロディ、早く教えてくれよ。」


 ロディは二人に気合を頼もしく思ったが、その前に言っておくことがあった。


「2人とも落ち着いて。教える前にちゃんと伝えておかなければならないことがあるんだ。」


 ロディが落ち着くように言うと、2人はやや落ち着いたようになり、ロディの話を聞く体勢になった。

 それを見てロディはゆっくり話し出した。


「魔力制御はそう簡単には身に付かない。ある程度できるようになるまでには、1週間、あるいはそれ以上かかることもある。俺も一生懸命に、それこそ寝る間も惜しんでやってきた。2人にもそれをやってもらわなければならない。」

「やるよ。どんなに苦労しようとも、絶対にやる。」

「私ももちろんやるのだ。」

「それと、ある程度できるようになれば外に出て一緒に旅をする。けど魔力制御訓練はそれで終わりじゃない。時間がある時や、できれば歩いている時もずっと訓練し続けてもらうことになる。目標は、意識しなくても自然と魔力制御で魔道具に魔力が流れないようになることだ。」


 意識せずに常に同じように魔力の流れを制御するのはかなりの時間を要する。ロディも2年ほどかかった。でも2人はそれを出来るだけ短期間でやらねばならない。出来なければ命のリスクが減らないのだ。


「それと、魔力制御ができるのは起きている時だけだ。寝ている間は制御できないので魔道具にも魔力が供給されるから、目が覚めた時には魔力がかなり減っているだろう。時には気分が悪くなるかもしれない。それでも起きてすぐに魔力制御を始めなければさらに気分が悪くなるんだ。苦しいだろうが、これも覚悟していてほしい。」


 ロディの言葉を聞いて、魔力制御の困難さが少しずつ分かってきたのか、2人の顔が引き締まり口も開かなくなった。けれどその目は変わらずやる気に満ちていた。


「どう?やれそうかな。」

「当り前だよ。やれなきゃ一生外に出られない。絶対にやってやる。」

「もちろんなのだ。ロディたちと一緒に行きたいのだ。苦しくても頑張るのだ。」


 テオとレミアは変わらぬ意気込みでロディに答えた。

 これなら大丈夫だろう、とロディは思った。おそらく最初のうちはいろいろ予想外の事も起きるかもしれず、時には魔力欠乏になってしまうかもしれない。しかしその場合にはロディの『魔力譲渡』で対処が可能だ。それに2人のやる気があれば、案外早く問題ないレベルの制御ができるようになるかもしれない。


 最終の目標としては、ロディがやっている『魔力を密集させて壁を作り、中に魔力を入れないようにする』ことが出来るようになることだ。壁を硬く作れば寝ている間も崩れることなく魔力を通さない。

 しかしこれが出来るのは今のところロディだけだ。それに出来るようになるには緻密な魔力制御ができるようになる必要がある。まだまだ先の事なので今は話す必要はないだろう。


「その意気なら大丈夫だな。じゃあさっそく魔力制御を訓練しようか。」

「よし、やるぜ。」

「お願いなのだ。」

「じゃあ、まずザゼンを組んでもらおうかな。」

「「ザゼン??」」

「ザゼンというのはね・・・・」


 ロディは、最初にザゼンを教えてもらったアーノルドの事を思い出して懐かしさを感じながら、テオとレミアに教えていくのだった。

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