第39話 ロディ、Cランクに昇格する
ギルド長室にはロディ、ナコリナが残っていた。
ゴルザたちが連れて行かれた後、ロディ達はこの部屋にとどまるよう指示されたからだ。
テーブルには3つの紅茶が用意されていた。フェルマーと、ロディ、ナコリナの為だ。
その紅茶を一口した後、フェルマーは切り出した。
「疲れている所をすまない。君たちとはゆっくり話をしたいと思っていたのだよ。」
「光栄です。先ほどは私たちの為に尽力していただいたみたいで、本当にありがとうございます。」
「気にすることはない。傍から見れば、彼らが卑劣な手段を取ったことは間違いないと分かっていたからね。しかし明確な証拠が無い。だから自白するように持っていかざるをえなかったんだ。」
「とても見事でした。」
ナコリナの誉め言葉に、フェルマーはフッと笑うことで応えた。
それからロディ達はフェルマーと雑談も交えながら話をした。
彼との会話で分かったことは、フェルマーは中央官僚の出身で、貴族ではないという。中央から派遣するギルド長には貴族出身の者もいれば、単に中央の役所勤めだったものもいる。王都から派遣されるということが共通項だ。
サリサに関しては話は出なかった。高位の冒険者かもと予想し、聞いてみようかと思ったのだが、ナコリナが怖いのでやめた。
「しかしよくオークキングを倒せたものだ。Bランク魔物で、しかも取り巻きも大勢いたならばB+の脅威度になったはずだ。」
「それは、仲間のテオとレミアの力が大きかったです。」
ロディとナコリナは再度戦闘の経緯を説明した。ただし誤魔化せるところは誤魔化しながら。
「なるほど。テオという少年の『獣化』の力が特別なものだったのだな。それにレミアも君を回復させたという。素晴らしい力を持った子たちだ。彼らがここ最近ダンジョンに住み着いているという話は耳にしていたが、そこまでの力を持っていたのだな。」
フェルマーが感心したようにつぶやいた。
「ロディ君が素晴らしい力の持ち主というのは判っていたが、知られざる力を持つ者は意外と多いな。」
フェルマーの言葉を聞いて、ロディとナコリナはドキリとした。まさか、ロディの秘密を知っている??
「私の力を知っていた、というのは?」
ロディは恐る恐る尋ねた。
「君が最初に彼らに絡まれたときに「ダントンと対決した」というようなことを言っていただろう。」
「よく覚えていませんが、言ったかもしれません。」
「ダントンと言えば無頼者のBランク冒険者としてこのミズマにも聞こえてくるほどだった。それがある時『Dランク冒険者に倒されて捕らえられた』という噂が流れてきた。そしてその後メルクーから君たちが現れ、ダントンと対峙した話をした。私の勘が『もしかしたら』と騒ぐのでね、メルクーに問い合わせさせてもらったんだよ。そして私の勘は正しかった。」
フェルマーの話を聞き、ロディは照れ臭くなると同時に、ほっとした。どうやら自分の秘密を知っているわけでは無いようだ。
「ロディってミズマにまで噂が聞こえてきてるのね。ニクいね。」
ナコリナがロディを茶化す。実はナコリナもダントンと戦闘した当事者だったのだが、本人は戦闘の役に立っていないと思っているので、誇るつもりは全くない。
「君たちのような力がある若い者がミズマに居ればとても心強い。出来る事ならここにずっといてほしいものだが・・・。」
「お言葉はうれしいですが、残念ながらそれは出来ません。」
「だろうな。力ある者にとってミズマは魅力が乏しい。ここには途中で腕試しで立ち寄っただけだろうと思っていたよ。」
フェルマーは残念そうな顔をしてため息をついた。ギルド長として、ミズマの価値を上げる努力をしているのだろうが、その土台となるものが無く苦労しているのだろう。
「まあ、君たちがミズマに偶然いたことでオークキングの被害を防げたのだ。最高の幸運だったと満足すべきだろうな。」
フェルマーが自分を納得させるようにつぶやいた。
そこで、後ろに立つサリサがフェルマーに耳打ちした。
「おっと、忘れる所だった。君たちにお願いと連絡がある。」
「はい、何でしょうか。」
「お願というのは、あのオークキングの魔石の事だ。出来ればギルドで買い取りたいのだがどうだろうか。無論安く買おうというわけではない。適正価格で買い取る。」
「ええ、問題ありません。お売りいたします。」
「そうか、良かった。ありがとう。」
買い取ったオークキングの魔石はギルド内で展示するとのこと。『ミズマダンジョンでオークキングが現れた』ということを目に見える形で示すことで、少しでもダンジョンの価値を上げたいらしい。
「そしてもう一つ。君たちを1ランクずつ昇格させる。ロディ、ナコリナはCランク。エマはDランクになる。」
「本当ですか!」
Cランクに昇格と聞いてロディとナコリナは前のめりになった。
「もちろんだ。オークキングを倒すという功績をあげたんだ。文句を言う者などいない。」
ロディとナコリナは大喜びだった。自分たちの目標にまた一歩近づいたのだ。
だが気になるのはテオとレミアの事だ。彼らは冒険者登録していないと聞いていた。
「残念ながら、テオとレミアは冒険者登録をしていないのでギルドとしては今回の功績に報いることはできない。だがCランク冒険者の推薦があれば冒険者登録ができるようになる。今後の事も考えたら登録しておいて損はないはずだ。それから先ほどのオークキングの魔石の価格に色を付けておく。これを彼らの貢献の対価とするしかないのが口惜しいがね。」
フェルマーがテオ達の冒険者登録と魔石の価格アップを約束してくれた。
ギルド長室を出るとき、フェルマーはロディに手を差し出した。ロディは少しためらいつつそれに応じた。
「君たちはいつまでミズマにいるつもりかね。」
「はっきり決めていませんが、あと2週間程度と考えています。」
「ではその間ミズマを隅々まで見て行ってくれ給え。ミズマにもいいところがたくさんあると思ってくれればうれしい。」
「わかりました。いろいろとありがとうございました。」
ロディとナコリナが礼を言い、ギルド長との会談は終わった。
◇◇
ギルドのホールではオークキング討伐の大宴会をやっていたらしく、へべれけになった冒険者たちが死屍累々となっていた。
オークキングについてはすぐ討伐されたため冒険者としてはほぼ関係が無かった話なのだが、飲む名目としてはうってつけだった。それに、ダンジョン封鎖による収入減の心配がなくなったこともあって、自然と大宴会になったらしい。
酒やらなにやらのにおいが充満しているのには辟易するが、酔いつぶれていた冒険者から絡まれずに移動することが出来たため、精神的にも体力的にも疲れていた2人にとっては幸いだった。
2人がギルドを出た時にはもうすでに真夜中近くになっていた。
「このまま宿に帰って寝よう。」
「賛成。もう何もやりたくないわ。」
テオとレミアの事が心配ではあったが、さすがにこの時間に移動することはできない。それに今日一日で様々な事があり、2人とも限界だった。
2人は宿に帰ってすぐさまベッドに横になり、そのまま2人とも寝息を立てて夢の中に落ちて行った。




