第34話 ロディ、ギルドに戻る
「ロディ!」
「お兄ちゃん!」
ナコリナがロディの元に笑顔で駆け寄る。エマはテオを心配して動かずにいたが、ロディに向けた顔には喜びに満ちていた。
「目覚めたのね。良かった。」
「心配かけてゴメン。俺はもう大丈夫。」
ロディは笑顔で答え、そして周りを見て驚いた
「レミアまで倒れてる。いったい何があったんだ?」
ロディの横では治療していたレミアが倒れ込んでいた。ロディを復活させて精魂尽き果てたようだ。
ロディは目覚めたばかりで、すぐにオークキングが斧を振りかぶっている姿を目の当たりにし、とっさにファイヤーアローを3連射したのだ。なのでそれまでの状況が全く分からない。
ナコリナは手短に状況を説明した。
◇◇
「・・・つまり、テオとレミアは魔力を使い尽くして、それで倒れているということか。」
あらましを聞いてロディは驚きと共に、よくあの状況からオークキングに勝てたものだと感心するしかない。
「テオ。あの魔物たちをほとんど一人で倒すなんてすごいな。そしてレミアも、俺を一生懸命治療してくれたんだな。2人ともありがとう。」
まだ意識のないテオとレミアを交互に見ながら、口に出して感謝した。聞いてはいないだろうが、そうせずにはいられなかった。
「でもテオとレミアは魔力枯渇で危険な状態だわ。ダンジョンの魔力が濃いとはいえ心配よ。」
ナコリナが不安顔で、並んで横になっている二人を見た。二人とも青白い顔をして息苦しそうな呼吸を繰り返している。魔力枯渇は最悪死に至る場合がある。安心はできないだろう。
しかしロディはそんなナコリナに「心配いらないよ」と落ち着いて言った。
「要は魔力を早く補充できればいいということだ。じゃあ大丈夫。」
「ロディ、何かいいアイデアがあるの?」
「もちろん。これもナコリナのおかげだよ。」
「?」
ロディの誉め言葉に、ナコリナは何のことかわからずに疑問の表情で首を傾げた。
「ナコリナ、忘れたのかい。ナコリナが依頼していた新しい魔法陣のこと。」
「新しい魔法陣?・・・あ、そうか。魔力譲渡!」
ナコリナが気づいて大きな声をあげた。そう、魔力譲渡魔法をロディは作っていたのだ。
「もう出来てたの?お兄ちゃん。」
「昨日完成したんだけど、もしかしたらと思って魔法陣を今ここに持ってきているんだ。」
ロディは収納の中から魔法陣の描かれた魔紙を取り出した。
ロディが魔力譲渡の魔法を覚えれば彼らにロディの魔力を譲渡して、2人は危険な状態を脱し回復を早めることが出来る。ロディの魔力量であれば2人へ譲渡する魔力量も十分賄えるだろう。
「やったわ。これならレミアたちの魔力がすぐ回復できるわ。」
「急いで2人を助けてあげて。」
「もちろんさ。」
ロディは即座に魔法陣に魔力を流した。魔紙は光輝き、魔法陣は浮かび上がってロディの中に吸い込まれるように消えていった。
「これで魔力譲渡できるはず。早速やってみるよ。」
ロディはそう言って、まず消耗が激しそうなテオに向かって魔法を発動した。
ロディの手から青い光が出て、それがテオに向かって伸びる。そして青い光でロディとテオがつながった。この青い光を通じて魔力がテオの体内に流れ込んでいるのだろう。しばらくすると、テオの顔色が戻ってくるのが分かった。
「テオがの顔色が戻ったわ。」
エマが嬉しそうに言い、テオの髪を撫でた。
この戦いで一番頑張っていたのはテオだ。そのテオが目に見えて回復するのを見て、エマは無意識のうちに行動していたのだった。
「次はレミアだね。」
ロディは同じようにしてレミアにも自身の魔力を送りこんでいく。しばらくするとレミアの顔色と呼吸も回復してきた。
「ふう、これで一安心だ。」
2人はまだ目覚めないが、顔色もよくなり呼吸も安定している。しばらく寝かせておけば目覚めるだろう。
「さて、じゃあこれからどうしようか。」
2人の危機は脱したが、今はまだダンジョンの途中にいる。このままでは危険なので安全な場所に移動しなければならない。
3人で簡単に話し合い、まず2人を安全地帯まで運ぶこと、次に今回の事をギルドへ報告するためにミズマに移動することを決めた。
「エマは2人を見ていてほしい。ギルドへはナコリナと二人で行く。」
「分かった。そうしましょう。」
3人はさっそく立ち上がった。
と、ロディが立ち上がったところでふらりとよろめいた。ナコリナがハッと気づいてロディに駆け寄る。
「ロディ、大丈夫?頭をうっているんだから無理しない方がいいんじゃない?」
考えてみれば、ロディは棍棒で頭に打撃を受け血を流していた。レミアのおかげで傷は治ったが、流した血は戻らないため完全に復活しているわけではない。さらに新たに魔法を覚え、かつ2人分の魔力を分け与えている。いくら魔力が潤沢なロディでもその量はかなり減っているだろう。
実は今一番体調を心配するべきはロディなのだ。
「大丈夫。ちょっと立ち眩みしただけだよ。」
ロディは立ち直って平気な顔で言った。しかし、外見はともかく体の中はどうなのか本人にしかわからない。
「ギルドには私だけで行ってきましょうか。」
ナコリナは心配してそう提案したが、ロディはきっぱりと拒否した。
「いや、あいつらが先にギルドで話をしているはずだ。だからナコリナ1人より俺もついていって2人で説明した方が絶対にいい。」
あいつらとはもちろんゴルザ一味の事だ。あいつらはレミアを突き飛ばして犠牲にし、その隙に逃げようとした。それまでの事はともかく、この事は決して許すことはできない。そして彼らと対峙するにはロディも居た方がいいだろう。
「本当は心配なんだけど・・・。分かったわ。一緒に行きましょう。でもその前にここから2人を連れ出さなくちゃ。」
「そうだな。急ごう。」
3人は、2人を交互に背負いながらひたすら安全地帯へと向かう。エマの索敵で出来るだけ戦闘を避けた為その分時間はかかったが、なんとか安全地帯へ無事たどり着くことが出来た。
「じゃあ行ってくる。エマ、2人を頼む。」
「こっちは任せておいて。お兄ちゃんたちこそ気を付けて。」
安全地帯の拠点にエマ、レミア、テオを残し、ロディとナコリナはダンジョンを出てミズマの街に向かった。
ダンジョンから街までは歩いて2時間の距離だ。歩けないわけではなかったが、これまでの事でロディもナコリナもかなり疲労していたため、お金はかかるが馬車に乗ることにした。
◇◇
ミズマの街へと戻ったとき、すでに日が傾いていた。
「だいぶ時間がかかっちゃったわね。急ぎましょう。」
馬車を降りた2人は、夕闇が迫る中ギルドへと急いだ。
2人がギルドに到着した時、ギルド内は通常とは違う喧騒に包まれていた。
連絡です。
これまで毎日更新で頑張ってきましたが、多忙によりストックがなくなってきました。
申し訳ありませんが、これから2日に1回くらいの投稿になってしまいます。すみません。
間隔は開きますが、これからもよろしくお願いします。




