第32話 ロディ、治療中に
「「ロディ(お兄ちゃん)!」」
テオ、ナコリナ、エマの3人がロディを呼ぶ。
しかし、ロディは動かなかった。
ナコリナのファイヤーボールが飛び、ロディの近くにいた片腕のオークはその直撃を受け後退しながら倒れる。
その隙に3人はロディとレミアを囲むように位置取った。
他のオークたちは、彼らを前にしてゆっくりと立ち止まって様子を眺めていた。おそらく”王”の到着を待っているのだろう。
30体以上のオークたちと5人との間に、わずかの間の膠着状態が訪れる。
「ロディ!レミア!起きて!」
ナコリナが倒れている2人に声をかける。
その声に反応したのはレミアだった。
「う・・・ううん・・・」
うめき声と共にレミアが目を開き、ゆっくりと体を起こそうとする。
「レミア、目を覚ましたのね。良かった。」
体を起こしたレミアはきょろきょろと周りを見回した。
「私はなぜ倒れていたのだ?この状況は何なのだ?みんなは・・・ロディ!」
状況を理解できていないレミアだったが、倒れているロディ気付くと、あわてて近づいた。
「ロディ!どうしたのだ!なぜ倒れているのだ?起きるのだ、起きるのだ!」
「待って、ロディから、血が・・・。」
ロディは床に横たわり、頭から血が流れ出ていた。オークの棍棒はロディの頭に直撃ていた。
「ロディ!ロディ!目を覚ますのだ!」
レミアが半狂乱になりながらもロディに呼びかけ続ける。
幸いにもロディは生きているようだった。
オークの左腕を切ったことにより幾分か棍棒の勢いがそがれていた。またロディは身体強化をかけていたため頭部の打撃も軽減できていた。
しかし東部から血が流れ出ており危険な状態であることは変わりがない。
その時、大広間の空気が変わった。
魔力の密度が濃くなり、空気が震えるように振動している。
3人が奥の方を見ると、通路からそれは現れた。ゴルザたちが言っていたオークキングが、その姿を現したのだ。
それはオークの姿とほぼ似てはいるが、しかし体ははるかに大きく3m以上はある。そして纏う気は桁違い。さらに他のオークやオークソルジャーたちとは格の違う装備を身に付け、また大きな斧を手にしていた。
オークキングは斧を杖代わりにするように立ち止まり、そして雄たけびを上げた。
「グオオオオオオオオオァァァァァァァ」
部屋全体が震えるかのような恐ろしい声が響き渡る。その声はナコリナ達はおろか、オークたちですら恐怖しているようにも感じる。
「あれが・・・オークジェネラル。いや、オークキング。」
ナコリナが、その声に圧倒されながらもつぶやく。
オークキングは周りを見渡し、5人を見据えると、口角を上げて不敵に笑った。魔物の王から見れば5人は単なる路傍の石にも見えたのだろう。取るに足らぬ存在、そういう笑いだった。
「これは、大ピンチってとこじゃない。」
ナコリナが重い雰囲気を払うように軽い口調で言う。
「ここから逆転できればヒーローになれるんじゃないかな。」
エマも乗ってくる。そうでなければプレッシャーに押しつぶされそうになるからだ。
しかし、圧倒的不利な状況は変わらない。頼みのロディは倒れたままだ。
その時、一つの声が響いた。
「ハイヒール!!」
3人が声の方を見ると、レミアが魔法「ハイヒール」を発動させていた。
レミアがロディに手をかざし、ロディから光があふれる。その光は尋常ではなく、ロディを完全に包みこんで見えなくするくらいの、そしてオークたちがたじろぐぐらいの強烈な光だった。
「レミア・・・それは」
明らかに通常の魔法ではない輝きにエマがつぶやく。
レミアはハイヒールをかけながら顔を上げ、テオを見ら見つけるかのように見た。
「テオ。私はロディの傷を治すのだ。私の命に代えても治すと決めたのだ。テオ、だからお前も覚悟を決めるのだ。お前が守りたいものを守るのだ。」
「レミア・・・。」
レミアの真っすぐな言葉に、テオはちらりとエマを見て、そしてまた正面のオークたちを見据えた。
「そうだよな。ここでやらなきゃ男じゃ無い。」
テオの顔つきが変わり、覚悟が決まった男の顔になった。
テオはオークキングを睨み、そして良く通る声で叫んだ。、
「獣化!」
テオがそう叫んだ瞬間、テオから赤い光が立ち上った。
テオ体が見る見るうちに大きくなり、その膨張に耐え切れず、着ていた服がすべて破れる。。
テオの顔はウルフに似た獣のように変化し、体は獣のように茶色の毛が全体に生え、腕と足は丸太のように太くなり、胸と腹は筋肉が大きく浮き出るようにたくましくなっていった。
テオはギフト「獣戦士」の能力を発動させたのだった。




