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作者: 桃山いぶ

久しぶりの投稿です。

まだまだ文章力があれれ?状態なので暖かく見て頂けると有難いです!

 幼い頃に親同士で決められた婚約。

 最初は仲も良く、一緒に遊んだり、お茶をしたりしていた。1つ年上の婚約者が学園に入ると手紙が途絶え、帰って来てもお茶会をする事がなくなった。


「まぁ、あの方にも付き合いがありますから」


 なーんて言って気づいたら出会ってから5年。

 連絡が途絶えてからは関係も変わらず3年も顔を見ていない。


 これは婚約者と言っても良いのだろうか?


 まぁ、私も学園に入る前も入学してからも婚約者の事なんか全然気にしてなかったので、楽しく過ごしていた。





 今日は卒業パーティーの日。卒業生が煌びやかな衣装を装いそれぞれの道を歩み始める日でもあった。


 皆が和やかに過ごしている中……

「アイリーン・ウルスラ!!」


 突然名前を呼ぶ声がして、その姿を見た時、アイリーンは目を見開いた。

 そして少し動揺した。


「……はい、何でしょうか?」

「貴様との婚約を破棄する!!」


 突然の声に、会場中の視線が青年に集まる。


 ケイト・マッカーサ伯爵令息。

 マッカーサ伯爵の嫡男で黒髪ストレートの見た目美青年。


 そんな青年に声を掛けられたのはアイリーン・ウルスラ侯爵令嬢。

 黒髪ウェーブの艶のある髪を背中まで流し水色のドレスを着た気品のある少女。


「どういう事でしょうか?」

「貴様っ、しらばっくれるつもりか!?」

「と言いますと?」

「貴様は侯爵令嬢でありながら身分が低いというだけでエレナに嫌がらせをしてきていただろう!」


 ケイト・マッカーサの隣には自分の身体を寄せ涙を溜めているエレナ・ウエスト男爵令嬢が立っていた。

 彼女はピンクの髪をしていて、出る所は出ており男性ならば一度は見てしまうようなボディをしていた。


「ケイト様っ、私が悪いんです! 私が学園に不慣れなばかりにケイト様に助けて頂いていたから…アイリーン様も悪気があった訳ではないと思うのです!」

「あぁ、エレナ。君はなんて美しい心を持っているんだ」

「ケイト様…」


 二人が見つめ合う中、アイリーンが口を開いた。


「あの、一つよろしいでしょうか」

「なんだ、今更謝ったって俺の気持ちは変わらないぞ」

「いえ、お聞きしたい事がありまして。誰と誰の婚約が破棄なんですか?」

「はっ! 一体何を言うのかと思えば…俺とお前の婚約に決まっているだろう!」

 堂々と宣言する中アイリーンは不思議に思い首を傾げる。


「それはおかしいですね」

「何がおかしいんだ!」

「そもそも私とケイト様……いえマッカーサ様との婚約はとっくに解消しております」

「なっ!?」

「ご存知なかったのですか?」

「そんな事! いつの間に!」

「いつって二年前には終わっていましたが…」

「そんな!」


 この話には周囲も驚いていた。

 もちろんケイトとアイリーンが婚約解消していた事ではない。二年前には決まっていた事を本人が知らないという事実にだ。


「マッカーサ伯爵様からお話はお聞きにならなかったのですか?」

「父上からはそんな……」


 いや、そういえばアイリーンについての手紙を貰っていた気がするがその時は婚約者を大事にしろなどの小言が多かった為、そんな内容だろうと思い中身を見ずに捨ててしまった気がする。


 まさかそれが婚約解消についての内容だったなんて……。

 さぁっと顔色が悪くなる中、王族が出てくる合図があり、一同は壇上を見た。



 そこには国王陛下と、今年卒業する王太子殿下が立っていた。


「面をあげよ。今日は卒業生を祝うめでたい日だ。各々楽しむがよい。」


 国王陛下が軽く挨拶した後、隣の王太子が口を開いた。


「今日まで君達と共に切磋琢磨出来た事を嬉しく思う。私の方から一つ皆に伝えたい事がある」


「アイリーン・ウルスラ侯爵令嬢、こちらへ」

「はい」


 ザワつく貴族達。先程まで会場中の注目を集めていた令嬢が次は殿下に呼ばれ、再度注目を浴びる。


「今日アイリーン・ウルスラ侯爵令嬢と婚約を発表する」

「なっ!!」

「そしてウルスラ嬢も今日をもって卒業とする」


 王太子の隣でも堂々と立つ気品ある令嬢に周りからは尊敬の眼差しが送られる。


「お、お待ち下さい!殿下」


 そこへケイトが口を開く。


「アイリーンはまだ一年生です! 殿下と共に卒業は不可能です!」


 そう、アイリーンはまだ去年入学したばかりの一年生なのだ。

 なのに今年卒業というのは普通に考えたらおかしいのである。


「それにアイリーンは私の婚約者で……っ」


「貴様とは既に婚約解消されている。……元婚約者として一度だけは許そう。しかし貴様はもう関係がないのだから彼女を呼び捨てで呼ぶのは止めてもらおうか」


 王太子の鋭い眼差しにケイトは慄いた。


「アイリーンは一年生ながら様々な薬の開発をしていて、既にたくさんの薬がこの国の治療薬として使われている。更にその成果を論文にし国にとってなくてはならない存在なのだよ。勿論、既に卒業の為の単位は取り終えている」

「な、まさかっ」

「ケイト・マッカーサ。婚約者でありながらアイリーンを蔑ろにし三年もの間手紙も贈り物もしてこなかった最低なやつだとは分かっている」


 ケイトのしてきた事が公の場で王太子の口から出てきた事で、アイリーンが今までどれだけ耐えてきたのだろうと涙ぐむ者もいたが、当の本人は何も感じずむしろ自由だやっほー!と思っていたため全く気にしてなかった。


「しかし殿下! アイ…ウルスラ嬢はこのエレナに嫌がらせをしていたのです!そんな人が王妃になるのは如何かと思います!」

「わたし……とても悲しくて……」


 涙をうるうるさせながら殿下を上目遣いするエレナ。

 そんなエレナを冷めた目で見ながら王太子が口を開けようとするが、アイリーンが制止した。


「殿下、ここは私が」

「アイリーン……」

「エレナ様。貴女は、私が貴女に嫌がらせしたとおっしゃいましたね」

「そうです、頭に水をかけられたり、教科書が破られていたり……いくらケイト様が自分を見てくれないからって、ひどいと思います!」

「私がやったという証拠はあるんですか?」

「ケイト様と話をした後は必ず嫌がらせをされました!」

「では姿を見た訳ではないのですね」

「っぁ…」


 エレナは言葉に詰まってしまった。


「私はやっておりません」

「嘘よ! 私がケイト様と仲良くしているのに嫉妬したんでしょ!」


 絶対そうよ!と腕を胸に寄せながら身体を抱き締め実りのある胸を揺らす。

 庇護欲をそそる姿に、これで男が落ちると思っているんだろうなという事が丸わかりである。現にアホな令息達は鼻の下を伸ばしている。


「私が嫌がらせを出来ないのには理由があるんです」

「それは一体なんだ!!」

「私、この学園に在籍はしていますが通ってないのですよ」

「「はぁ!?」」


 ケイトとエレナの声が重なった。


「私は薬の開発をしているので、普段は研究室に篭っているんです。それに殿下の仰った様に卒業の単位は取り終えているので通う必要がありません」


 ぽかんと口を開ける二人。

 そんな二人の姿を余所に周りは…


「確かにアイリーン様を学園で見た事がないですわ」

「お忙しい方だとは思っていたけど研究室に居たとは」

「それじゃあエレナ様が言っているのは嘘?」

「そもそも婚約者がいる殿方と親しくする事がおかしいのではない?」

「逆に、エレナ様がアイリーン様に嫉妬していたんじゃないかしら」


 貴族の間の中でどんどん二人の疑惑が浮上する。


「違っ!」

「うそよ……!」

「貴様らの戯言は聞き飽きた!その者達を捕らえよ!」


 ケイトとエレナを兵士が囲む。


「ちょ、何するのよ!」

「離せっ! 俺を誰だと思っている!!」

「貴様らは未来の王妃アイリーンを侮辱するだけでなく陥れようとした。裁判の結果が出るまで地下牢に監禁だ」

「そんな!」

「私は……こいつが婚約者と別れたいから手伝って欲しいって言われたから協力しただけで私だって被害者よ!」

「な! お前それは言わない約束だろう!!」

「うるさい! あんたのせいでこんな事になったのよ!」


 さっきまでの姿とは違い鬼の様な形相でケイトを睨むエレナ。


「その話も後々聞かせてもらおう。連れて行け!!」


 罵倒し合う二人が連れて行かれ少し微妙な雰囲気になったが、そこは貴族。自分たちに飛び火しなければいいと思い何事も無かったようにパーティーを楽しんだ。




 バルコニーでは王太子とアイリーンが和やかに会話をしていた。


「殿下、ありがとうございました」

「アイリーンの為だからね。何でもないさ」


 学園に入る前にアイリーンは父親を説得し、マッカーサ伯爵に婚約の解消を求めたのだが、何処から聞いたのかその次の日には王室から婚約の申し込みが来ていたのだ。


「あの時は驚きましたわ」

「私も焦っていたのだよ。ずっと想っていた人がやっと婚約解消をしたんだから、誰かに取られる前にってね」

「ふふっ」


 王太子は幼少期にアイリーンに一目惚れしていた。その頃アイリーンは既にケイトと婚約していた為叶わぬ恋だと思っていたが、アイリーンへの態度が酷いと知り、怒りを抑えるのは大変だった。


 しかしアイリーンが婚約解消すると父である国王から聞き、すぐさま行動を開始した。

 その行動力には流石の国王も驚いたが、アイリーンが関わると冷静ではいられなかった。



「改めて言うよアイリーン。僕と結婚してずっと傍にいてくれ」

「勿論です。殿下」




 ところでケイトが最初に話し掛けた時少し動揺したのはやはりショックだったからなのかと王太子が聞くと…。


「いえ、顔を見た瞬間久しぶりすぎて一瞬誰だか分からなかったのです。なので名前が出て来なかった事に焦っておりました」


「あぁ、君は全ての貴族の顔と名前を覚えているから」


「その後の会話で思い出したのですが……要は」






「存在を忘れていただけ」








王子の名前一回も出ず終わりました!

元々出す気もなかったので考えてません!

誤字脱字があったらすみません!

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