表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/9



【モリナガ視点】


 モリナガは木に登り望遠鏡でガーネットの部屋を覗いていた。

 彼女は読唇術どくしんじゅつが使える為、二人の会話を注意深く観察している。


「アン、漫画って知っていますか?本の種類です」


 木の下で見張りをしているアンドリューに、モリナガはピンクの髪をクールにかき上げながら尋ねる。


「うーん、ごめん、知らない。初めて聞く言葉だよ。 殿下はその漫画?の話しをしているの?」


「ええ、そうです。 ガーネット様に事細かく書き方をご説明されております」


(殿下は何でも知っている。本に精通した私やアンも知らない種類の本があるなんて。本と言えば殿下が僅か12歳の時に印刷という新技術を提唱し本の流通が盛んになった。うんん違う、もっと昔から、私がお仕えした7歳頃から木くずで紙を作る製法を提案されて、当時は羊皮紙や木版に文字を書いていたのに現在は殆どが紙になりました。殿下はそのような知識をどこから得ているのでしょうか?)


 モリナガは常人の16倍の速さで思考を巡らせる。


「お嬢、それで殿下とガーネット様は、ど、どうなの? 応接室を盗み聞きした時は婚約破棄前提って言ってたけど……」


「婚約に関しては話しが進んでおりません……、 ただ、お二人は良い雰囲気です」


「そ、そっか。 ガーネット様、綺麗だったもんなー……、で、殿下も婚約したそうだったし……」


「 ………… 」


(殿下は先程、漫画を読みながら本の内容を褒めておられました。そしてガーネット様が『褒めてくれてありがとう。ずっとジャンに読んで欲しかったのよ』と返事をし、嬉しそうに涙を流されて。殿下は本に夢中で気付かなかったようですが、あれではガーネット様のお気持ちは殿下にあると言っているようなもの。そもそも殿下は勘違いをされております。破棄狙いの娘よりも殿下と結婚したいと願っている女性の方が圧倒的に多いのに)


「僕じゃ、全然敵わないよ」


 クールなモリナガは投げやりな口調で話すアンドリューを無視して、ガーネットの部屋を見詰めながら思考を続ける。常人の16倍の速さで!


(殿下の父君、国王陛下はこの国で最も気高く美しい鳥セキレイ鷲に因んで、セキレイの君と称されたお方。王妃様は春先、雪上に咲く儚く美しい花、白雪花しらゆきかに因んで白雪花の姫君と称されたお方。そんなお二人からお産まれになったジャン殿下は当然ながらそれはもう見目麗しいお方です。ハァ ハァ ごくり。そんな美しいお方が肩に息がかかる程近い距離で、優しく笑顔で漫画の書き方をご説明されている。ガーネット様の惚けたお顔。そうなりますよね、普通の女性なら!ガーネット様羨ましいです!)


 モリナガの双眼鏡を握る手に力がこもる。






間に合えば夜にもう一話投稿します。次回からはジャン、ガーネットの続きになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ