915話 アレク死ぬ
「アレク、アレクーーーーー。」
パープルと姫様、そして貧乏神はアレクに駆け寄ってくる。
ニコリと笑うアレクがいた。
アレク、カイン、レッドの微妙な空気を和ませたパープルたちであった。
「フォフォフォ、こりゃ凄いのーーー。龍の因子じゃと魂を使って気合で生きているじゃと。フォフォフォ。」
「笑い過ぎだ、貧乏神。」
少しだけふてくされるアレクがいる。
アレクは、レッドに背負われて運ばれている。生きていると言ってもかなり消耗しているのだ。
人狼の村へ戻り、寝かされる。
「アレク、ゆっくり休みなよ。」
「ありがとな。」
アレクはベットに入るとすぐに寝息を立てていた。
静かに意識の中に落ちていく。
「アレク、アレク。」
「アレクスかどうしたんだ。」
「アレク、お前は助からないよ。」
「だよな。かなり消耗してしまったからな。」
「分かっていたのか。」
「分かるさ、神を封印したんだ。俺のすべてをかけなきゃ無理だよ。」
「神の封印はどのくらい持つんだ。」
「封印は10万年は持つだろうな。」
「10何年か・・・・」
「10万年じゃ足りないか。」
「足りないな。まだ力を持っているだろう。せめて10億年はそのままで、玉の中なら力を落としていくだろう。そして神の格を失い、ミジンコ並で解放されるな。」
「ミジンコかぁ、神にはもう慣れないな。」
「無理だろうな。その間に星が滅びるよ。」
「魂の欠片を持って来た。これを使え俺とアレクは同じだからな。」
アレクは魂の欠片をじっと見ている。
「なぁアレクス。魂を欠片にしていいのか。」
「普通はしないな。魂の格が高くなければ欠片にすることもできない。アレクの魂の力は今封印に使われている。多分今玉の中で必死に脱出しようともがいているはずだ。アレクに力がすり減っているのが分かるよ。」
「あの中で暴れても外には出れないよ。暴れられないけど。」
「そうだな、動けないがもがいているのだろうよ。」
「もし万一の時に、この欠片を使って封印を強化してくれよ。」
「お前この魂の欠片を使わないのか。」
「使わない。俺はこのアースが好きなんだよ。みんなで楽しく生きているアースが愛おしいんだ。あの神が復活でもしたらアースが滅んでしまうからな。その保険だな。」
「アレクそれがどういうことか分かっているのか。」
「魂が無くなるんだ。俺は普通の死じゃないと言う事だろう。」
「そうだ、無くなるんだ。全てが無くなる。」
「いいさ。アレクとして生きた。」
「アレク、俺とお前は元は一緒だ。だが魂が離れ同じであって同じではなくなってしまった。双子のようなものだ。その片割れが消えるのは耐えれないな。輪廻転生が無くなるのだぞ。」
「仕方ないだろう。あれしか方法がなかったんだ。殺せないなら封印しかないからな。それも普通の封印じゃ無理だしな。」
「そうか、長い間お疲れさん。」
「アレクも元気でなアースを守ってくれよ。」
「任せろ。」
アレクの意識は段々と薄れていく。その中でアースが発展していく夢を見ていた。戦争が無くなり人々が豊かに暮らしている。
真夜中、ベッドに寝ているアレクを月あかりが照らしている。
月明かりの照らされているアレクが静かに息を引き取った。
幸せな夢を見ながらアレクは死んでいった。
アレクの体の中から一つの光が出てくる。それは小さな光であった。
無垢な魂が生まれた瞬間であった。
アレクの記憶もない。何もない、何も持たない最低ランクの魂である。
フラフラと夜空を彷徨い。その光は一人の女性のお腹の中に入っていった。
一応おわり。