911話 カイン対大天使
カインと大天使の戦いは、一方的だった。カインが攻め大天使が防御をする。だがカインにも誤算があった。
大天使の防御力が高いのだ。ボロボロにされながらもカインの攻撃を防いでいる。
「へーーー大したもんだな、俺の攻撃を食らってもまだ立っているんだからな。」
「・・・・・負けん。絶対に負けない。」
大天使は、必死に耐えていた。神であるカインの攻撃は並の者ならば、一撃で粉々になる程の攻撃力を持っている。それを数十発も耐えているのである。体中の骨に無数のヒビが入り、自慢の翼は片方が千切れてしまっている。
「俺様は、大天使だ。主様の使途だーーー。俺様は負けん、ぜーったいにまけーん。」
大天使は奥の手である神の血を飲み込む。(ゴクリ)
通常、神の血は1滴が使用料である。それを一口も飲んでしまったのだ。
「うおおおおおおおーーーー、体の中が燃えるようだ。俺様の中が力が燃えているぞーーー。アハハハハハ最高の気分だ。これなら俺様は最強になれるぞーーー。ダハハハハ。」
大天使は体の中から力が漲っていく。その力は今まで感じた事の無い熱いモノであった。
燃えるような熱さは、本当に大天使を中から焼いていた。
「あっあついぃぃぃぃ。熱っ。ああああああああああああ。」
適量を守らなければいけない。
「きききききさまーーー、俺様をだましたなーーーー。」
「ギャハハハハハハ、馬鹿は死ななきゃ治らない。ギャハハハハ。」
内から焼かれている大天使に近づくもう一人の大天使がいた。
大天使は燃え最後に一つの玉を残した。
「うほほほほほぉぉぉ、コレコレこれが欲しかったんだよねー。」
「お前たちは仲間じゃないのか。」カインが新たな敵である大天使に問う。
「キャハハハハ、仲間ーーー、何それ美味しいの?この玉はもの凄く美味しいんだよ。それも最高の力の元なんだよーーーー。これで私は神に成るんだ。」(ゴックン)
玉を飲み込んだ大天使は、何の変化も起きていない。
「あっこれねーー、特殊な能力玉、いいかえるとスキル玉だね。神の能力が使えるようになるんだよ。神の血とある程度の能力者(強者)を混ぜて作るんだよ。神の血が普通1滴だけどこれは30滴以上使用しないと作れないんだよ。普通の人なら一瞬で蒸発してしまうんだ。だ・か・らある程度の能力者でないと作れないんだねーー。えへ。」
「お前嫌れ者だな。」
「嫌われ者、いいねこの言葉。私の好きな言葉だね。嫌われても私についてくるしかないんだよ。強い者には従うしかないんだよ。弱いやつは悲しいねー。理不尽、暴力、全てに妥協しないといけないからねー。」
「俺がお前を殺してやるよ。可哀そうな弱者にしてやる。」
「おりゃーーーーーー。」
カインと大天使は戦いを始めた。先ほどまでの大天使とは格が違っていた。
「キャハハハ、ダメダメそんな攻撃じゃ私は殺せないよ。」
ブンブン振り回すカインの拳だが、一発も大天使を捕らえる事が出来ていない。全て空振りしている。
「攻撃はねー当たらないと意味がないんだよ。どんなに攻撃力があっても当たらないと意味がないんだよね。私には攻撃が当たらないんだよ。キャハハハハハハ。」
「お前も攻撃しなけりゃ俺に勝てないぞ。」
「するよ攻撃するよ。」
大天使は腕を上げ、カインを指さす。すると指先が、いいや爪が伸びカインの右肩に突き刺さる。
「キャハハハハハ、うけるぅぅ。どう私の攻撃醜くないでしょう、優雅でしょう。賢いでしょう。」
大天使はカインに向って爪を伸ばしブスブスと刺していく。
「キャハハハハハ、面白ーーーい。プシューだって、血が出てるよーー、弱者さん。キャハハハ。」
カインは本能で生きている。物事をあまり深く考えない。今までのカインの攻撃は全て避けられていた。だがカインに突き刺さった鋭い爪をそのままならば行動が制限され避ける事が出来ないと頭が考えたのではなく、カインの感覚がいっている。これが戦闘センスなのだろう。
カインは大天使に向って走り出す。大天使はカインに向って爪を伸ばし合計10本のつけがブスブスと刺しては引いていく。
「これで止めかなー。」
5本指が一つに纏まり螺旋状になっていきながらカインに突き刺さった。
ブスッ。
「捕まえた。」
カインが戦いの中で初めて大天使を捕まえた。
「うりゃぁぁぁぁぁぁ」
ボコボコボコボコボコボコボコボコ・・・・・。
カイン渾身の100連打。
カインの一撃は岩をも砕くほどの威力がある。それが100連打なのだ。一呼吸の間に100発放つこの技はカインにしか出来ない。アレクでさえ精々30発が限界である。
ピクピクピク。
「おっすげーな。まだ死んでいないのか。普通死んでるぞ。」
カインは驚いた100連打を喰らって生きていた者は今までいなかったのだ。大天使といえども完全に仕留める事が出来ると思っていたのであった。
「まぁでもこれで終わりだけどな。100連打×2倍。」
ボコボコボコボコボコボコボコ・・・・・」
大天使の体は丸くなっていた。腕も足も翼も無くなりぎゅっと押し込められた肉の塊となっていた。もちろんもう死んでいる。
「浄火。」
カインは炎によって大天使を浄化させていく。カインの浄火は神の力である。別の神によって作り出された大天使は、いわば異物である。創り出された力、能力、恨みつらみのすべてを浄火で土に返していくのである。
カインは感動していた。本能で浄火をしたが、いいことをしたと本能が語っている。神としての仕事が出来た事が嬉しかった。
カインの浄火の炎は段々と広がっていく。神の国の兵たちを飲み込んでいった。アレクやレッドにまで広がっていく浄火の炎。
「ん、熱くないぞ。」
「あれ、全然熱くないねー。」
「熱っ、ぎゃーーーー。」
「熱い熱い熱い。」
「いやぁーーーー熱い、苦しい、助けてくれー。」
「熱い、熱い、苦しいー。」
「ギャーーーーー嫌だーーー。」
カインは炎に包まれている。その浄火の炎は優しく温かい物である。だが不浄の者達には苦しみと熱さ痛みを与えている。
「カイン兄、凄いことできますね。」
「流石カインだねー。」
「おう任せろよ。全部計算通りだ。」
アレクとレッドには分かっている。カインが計算。出来る訳ないだろうと言う事を解っている。だがそんな事は言わない。アレクとレッドは気の利く奴なのだ。
「スゲーーー。僕も計算高い正義マンになる。」
「うっ、ワラワは算数は嫌いじゃ。」




