901話 小人の領地
美味しそうにパクパクと食べている小指がいる。もとい小人がいる。
「美味いなー。美味いなー。・・・」
美味いなーしか言わない小指に、皆が微笑ましく見ている。
「ほら、もっとあるぞ。好きなだけ食べていいぞ。」
「美味いなー、美味いなー。」
「余は満足だー。」
「よかったな。それじゃもう用はないだろう。早く帰りな。」
ガーーーーーン。
アレクのこの一言で小指はウルウルと瞳から大粒の涙を流し始めた。
「まさかお前、帰り方を知らないのか。」
首を横に振る小指。
ほっとするアレク。
「じゃぁ早く帰れよ。」
「元気でなー。」
「小指ーー元気でねー。」
アレク、カイン、レッドは早く帰れと言う様に別れの言葉をかけるが、一向に動こうとしない小指であった。
「余は、余は、余は、帰る場所がない。」
「「「はぁぁ。」」」
「何言っているんだ、神の所に帰ればいいだろう。」
「かかか帰っても小指には戻れない。神の小指はもう再生されているもん。」もじもじ。
「別に指が6本でもいいじゃないか。5本より使いでがありそうだぞ。」
「アレク、それは無理があるだろう。」
チラチラ。
小指は天使たちの方をチラチラと見ている。
アレク達も何も言わない。
「余は、余はここに住む。」モジモジ
「小人神様、この屋敷に住む事は問題ありません。神の一部であった小人神様は神の使いであります。」
「おーーーーー、そうかそうか、そうだよなー。」ニコニコ。
イレブンの言葉で少し余裕が出来たのか、小指はニコニコ顔である。
「話が着いたところで元に戻すが、戦争をやらないと言う事でいいな。」
天使たちがハッとした表情になる。小指の事で戦争の事を完全に忘れていたのである。
「戦争はやりません。」
「「「「うんうん。」」」」
「ちょっと待てーーーー、余が解決するぞー。余は神だからな。人々の生活を助け、見守らないといけないんだ。」エッヘン。
「いや、今戦争しないって決まったし、もうやることないぞ。」
「余は、余は、役に立ちたい。そそうしないと住む所がなくなってしまうー。」
小人神は、必死だった。追い出されないように役に立つ所を見せたかったのであった。
「「「「・・・・・」」」」」
こそっと
「必死そうだし、可哀そうだろう。」
「カイン兄、今甘やかすと一生付いてきますよ。」
「それは嫌だなー。」
「カイン、でも一応同じ神だしー。」
「レッド、じゃぁお前が面倒見ろよ。」
「えーーー、面倒くさおよー。」
天使達
「どうする。」
「どうするって言ってもどうする事も出来ないだろう。」
「神に仕事されられるのか。」
「無理だな。」
「無理だろう。」
「でもこのままだと、余計なことやりそうだぞ。」
「「「「だよな。」」」」
「なぁイレブン。うちとこの国の境に小人の領地を作らないか。」
「はい?アレクさん、何言っているんですか。」
「いやな、小人が可哀そうだろう。居場所を作ってやらないさぁ。」
「ですけど、小人神様一人しかいないじゃないですか。無理でしょう。」
「小指さぁ、自分の神域(領地)持ちたくないか。」
「持ちたい。持ちたい絶対持ちたーーい。」ニコニコ。
「ですが領地となると・・・・」
「あーーー、心配するな、うちから割譲するよ。100メートル四方もあれば十分だろう。」
「100メートルシホウ?。」
「いいか、小人の身長が10センチぐらいだ。お前が寝そべって1000人ぐらい長さだな。」
「広いのか。?」
「一人なら十分な広さだな。」
「・・・・やめる。此処に居る。一人は嫌だー。」
「そうだな、一人は嫌な。お前は神なんだろう。蟻んことか芋虫とか、蝶やバッタとか何かを国の住人にしたらどうだ。」
「それで、せ世界征服できるかーーー。?」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「まぁ頑張ってみろよ。蟻んこなんかで密が採れるかもしれないぞ。働きものだしなー。」
「おーーー密いいなー。じゃぁ手伝って。」ニコニコ。
「・・・・・」
「そうですね、アレクさんが手伝えば完璧ですね。」
「アレクがいいな。」
「「「「「うんうん。」」」」」
「流石アレクだねー。」
アレクは余計なことを言ってしまった。ニコニコしながら期待の目で見ている小人を無碍にする精神力はアレクは持っていなかった。
「ハァーーー、仕方ない。造ってやるよ。」
アレクは小人を手のひらに乗せて表へと出ていく。他の者達もゾロゾロと着いて行く。
「何だお前たちも来るのか。」
「イヤー、一応確認しないとな。」
「「「うんうん。」」」」
アレクは領地の境にくると周りを確認していく。領地の境といってもかなり曖昧である。ここまでという境は無いのだ。大体このあたりという程度である。
「おおおおお余の信者がいっぱいいるぞー。」キラキラ。
「蟻んこがいるな、小人さぁ、蟻の言葉解るか。」
「大丈夫だ。分かんないけど大丈夫だー。」
小人はアレクから飛び降りると蟻の方へと駆けていく。
蟻は敵がきたと警戒している。だが小人はそんな事はお構いなしに近づいていく。ぞろぞろと集まる蟻の数は尋常ではない数になっている。
蟻に囲まれている小指の姿が隠れてしまっている。
「これからは余の国民だーーーーー。」
唖然とする付添者たちである。
「おいおい、あの小人蟻と話せるのか。すげーなー。」
「神だからじゃないでしょうかね。」
「虫の神なのか。」
「小人神でしょうが。」
そして小人はバッタや蝶と虫を国民としていった。
「余は、余はここに国を建国するーーー。」
「おーーーい、小人建国はいいけど。お前の家どうするんだ。」
「おーーー余の城だな。」キョロキョロ。熱いまなざしをアレクに向けていく。じーーーーーっ。
「ほれ、これだ。」
アレクの取り出した物はミニチュアの家だった。
「おーーーーー豪邸だー。」
アレクは幾つかのミニチュアの家で小さな町を造っていく。
「アレク、」この道石畳にしようぜ。」
「いいですねー、じゃぁここは商店街にしましょう。」
「アレク、この町を踏まれないようにしないと。」
「そうだった。人に踏まれないようにしないとな。」
「看板でも出しとく。」
「それだけじゃダメだろう。」
アレクは10メートル四方を1メートル盛り土する事にした。神域の中心地となるミニチュアの町を高台としたのである。
「いい出来だな。」
「かなりいい出来ですね。」
「あれ、あの蟻、立っていないか。」
「立ってますね。」
 




