895話 ホビット族
神の国の領地内に全く信仰していない村が一つだけ存在している。その村は元からある村で、旧タンドラ時代であっても独立していた。
それはこの村というより種族が特殊であった。森の中に住み目立たないのだ。
大きな木をくり抜きその中で生活をしている。
ホビット族それが彼ら種族名である。
森の奥深くに1000人ほどのホビット族が暮らしている。
ホビットの村
「外が騒がしいようだ。」
「又人間どもが戦争をしているのだろうよ。」
「この森までは来ることはないだろうが、一応用心をしとくか。」
「それがいいだろう。我らは素手では敵わないからな。」
「フン、馬鹿力だけが力ではない。人間は脳筋ばかりだからな。」
ホビット村は、人と交流を断って1500年にもなっていた。それまでは多少であるが外とのつながりがあった。文明崩壊の戦争時に逃げ込んできた文明人たちが何人かこのホビット村に移り住んだことも有るのである。
数日後、ホビット族は外へ偵察に行き。情報を集める事になった。情報はすぐに集まり、村に報告がなされていた。
「族長、外に天使がいる。」
「はぁ?天使じゃと、あの羽の生えた人間か。」
「そうだ、羽が生えた人間だった。」
「族長、このアースには天使などいなかったぞ。」
「そうだ。天使がいるなんて聞いたことがないな。」
「おい誰か、本で調べろ。昔の種族大辞典があったであろう。」
惑星アースのすべての種族を網羅したこの大辞典は大昔に文明人が持ち込んだ遺物であった。
「天使なんてないな。」
「そうだろう、全く記憶になかったからな。元はいなかった種族だな。」
「新たな種族という事だな。族長どうする。」
「親種族ならば、挨拶をしなければなるまい。」
「いいのか。幾ら仕来たりとはいえ大昔の仕来たりだ。」
「仕方ないだろう。ワシの代で破る事は出来ん。やりたくない。」
ホビット族は元々山に中に住んでいたわけではない。きちんと町や都市に住み人々と生活をしていた。だが人々とサイズが違い生活が上手くいかない事が多く。次第に差別を受けるようになっていた。その為に当時の国のトップは、小さな種族を集めた村や町を造っていったのだ。だがそれもサイズが違う事で人々が寄り付かず廃れていったのだ。その為にホビット族は自給自足を基本として森の中で生活をするようになっていった。
「族長、今回は挨拶だから、お土産はこれでいいか。」
「おー、森の茸かそれでいい。」
ホビットの一団は、森の外へと向かっていった。
数日後、森の外へと出たホビット族は囲まれていた。
「貴方は神を信じますかーーー。」
「「「「「・・・・・・」」」」」
ホビット族は神の国の村に着いた。そして囲まれた。
村の代表者がきたことで神への勧誘活動は一時中止となった。
「すまぬな。信仰の厚い者が多いのだ。」
「・・・・我らはここから森の中で生活しているホビット族です。新たな所属が生まれた事で挨拶に参りました。」
「新たな所属?あーーー天使たちの事か。」
村長らしき人間ははっとした顔で頷いている。うんうん。
村長自身は人間である。もちろん子供は天使である。
村長は子供自慢から始まり、いかに神が素晴らしいかを語っている。神への勧誘が始まってしまっていた。
「わわわ分かりました。村へ帰ったら一度村長へ伝えます。」
「おーーーーそうか頼むぞ。神の国へ住む同じ住人だ。神の為に一緒にやって行こう。」
ホビット族は神を信じていない。それは過去の迫害された事が大きく影響していた。
アース内で信仰されていた宗教は何人もの神をまつり称えていた。だがその神は誰一人ホビット族を救ってくれなかった。
迫害され虐められ、追い出され、森の中で暮らす事になったホビット族は信じる者は己たちの先祖にみであった。
そんなホビット族は神域内でも影響を受けていない。神を信じない事で神域が作用していないのだ。
あのアレクでさえ影響を受けてしまう強い力に全く影響を受けていなかった。
もしこの場に神の国の重鎮がいれば、仰天していただろう。
村で色々な情報を手に入れたホビット族はお土産を渡しお土産を貰い森の中に戻っていった。
「あの村ダメだな。」
「ダメだ、宗教かぶれな村だ。もう行かない。」
「そうだな、この地域の神の国もだめだな。」
「あーみんな同じだろうよ。」
ホビット村
「族長、挨拶は住めせて来た。だがあの村人は宗教かぶれの村だ。近づかない方がいいな。」
「聞いた。馬鹿な奴らだ。神より御先祖様を敬え。」
神かぶれと馬鹿にしたホビット族であったが、それほど警戒はしていなかった。森の奥に住んでいる事と戦士ではなく村人であった事で森まで来る事は無いと勝手に思っていたのである。だが宗教信者は盲目である。
一人でも信者を獲得するために多くの者達が森へ入り魔物に襲われ死んで往った。
森の中
「神よーーーー。」ガブリ。
「ヒェーーー、神様ーーーー。」ガブリ。モグモグ。
「お助け下さい。かみよーーー。」ガブリ。ゴックン。
「ヒェヒェー、嫌だーーー。誰か助けてくれーーー。」
多くの者が魔物の餌食になる中で一人だけ生き残った者がいた。何日も森の中を彷徨い。ホビット族の者に保護された。
「おい大丈夫か。人間か。」
「・・・助けて。魔物が魔物が・・・」
気を失った男は震えていた。気を失っても震えているのだ。
ホビット族の何倍もある為に二人のホビットでは運ぶことが出来なかった。仕方なく村へ戻り応援を呼んでホビット6人で一人を運でいった。
「迷惑だな。」
「ホント迷惑だ。」
「魔物が活性化するぞ。」
「だな。」
「・・・・」
「族長、森で拾ってきた。」
「・・・・・仕方ない。傷の手当てをしてやれ。ハンモックを作って寝かせてやれ。」
「「「「「はぁーーー。」」」」」
ホビット族の家に人は入れない。大きな木の中に住んでいるが、サイズが合わないのである。その為に木と木の間にハンモックを吊るして寝床を作っているのだ。
「落ちないように縛っとけよ。」
「了解。」
「傷の手当済みましたー。」
「おうご苦労さん。」
そして半日後男は目覚める。目覚めた男は自分が縛られている事に気付きもがいている。
(俺はどうしたんだ。森の中で魔物に襲われて必死で逃げて・・・ホビットに助けられて・・・ぇっ。何で縛られているんだ。助けてくれたんじゃないのか。もしかして人食いホビットだったのか。俺はおしくないぞ。多分不味いぞ。筋ばっかりだからな。どうしよう、どうすれば逃げれるかな。)
そんな男に近づく影。
「おっ気づいたか、傷は痛むか。」
「だだだ大丈夫です。」
「そうか気づいたんなら、落ちることないだろう。縛っている縄をほどくぞ。」
そして男はやっと気づいた。落ちないために縛られていたことに気付いたのだ。さっきの自分の豊かな想像力に1人赤面していた。
そして縄をほどいているホビットを見て赤面していると誤解もされてしまっていた。