887話 多難の航海(後悔)
「これで準備は整ったな。」
アレクは、3隻の船を眺めていた。巨大魔物内に飲み込まれた船を改造して造られた脱出船である。この船で巨大魔物の胃袋から脱出する計画である。
船を海水の流れている場所へ移動させる。
「アレク、何でこの場所は海水がいつも流れているんだ。」
「多分ですけどこの巨大魔物は、海水からも栄養を取っているんだと思いますよ。外で見た時に大口を開けたままだったでしょう。」
「フーーーン。」
「よし、シュッパーーツ。」
3隻の脱出船は風魔法によって肛門へと向かっていった。
「そろそろ、消化液の雨が降るぞー。準備しろー。」
甲板にはアレク、カイン、レッドの3人しかいない。後の者達は船内で待機中である。
ドバドバドバーーーーー。
「うおーーー、すげーなー。」
「消化液に耐えてるな。これなら何とかなりそうだな。」
「アレク、今更実験かよ。もし耐えれなかったらどうするつもりだったんだ。」
「大丈夫ですよ。いざとなったらバリアを張って凌ぎますから。」
脱出船は順調に進んでいく。
「おーーー、こうなっているんだ。すげーなー。」
「洞窟ですね。」
「生きている迷宮だよな。洞窟が動いているもんな。あっあれって消化しているんだろうな。」
それは、消化液によって程よく溶かされた物を消化吸収している場所であった。
「あまり見たくないですね。」
「アレクーー、敵だーーー。」
「えっ、敵?」
「ほらあそこ、白いニョキニョキした奴らがいるぞ。」
「・・・・・・・カイン兄、あれって人でいうと寄生虫ですよ。」
「寄生虫ってあの小っちゃいやつだよな。何であんなにでっかいんだ。」
「巨大魔物だからでしょう。」
巨大魔物内を住処としている。寄生虫は巨大であった。それに体内には色々な巨大な微生物も住んでいる為にアレク達は戦いながら航海する事になっていく。
ズドーーーン。
「おりゃー。」
「カイン兄あまり派手にやらないように、洞窟に当てないように。」
「お、おう分かっているぞ。」
「アレク、めんどくさいよー。派手にやろうよ。」
「ダメだ、魔物を刺激するな。外は海の中だぞ、深海に潜られたら脱出した時みんな死ぬぞ。」
アレク達は慎重丁寧に寄生虫を狩っていった。巨大魔物に触れないように寄生虫を殺していく。
「アレク、これかなり面倒だな。」
「仕方ないでしょう。魔物に影響しないように殺らないといけないんですから。」
「でもこれ気持ち悪いな。オエッ。」
「これかなり貴重ですよ。見てください。白いニョロニョロは、巨大魔物の中に入れるんですよ。普通皮膚の中に何て潜れませんよ。」
「あ”あ”ーーーっ、斬っても斬っても分裂するぅ。」
「もうすぐここをぬけますから、もう人働きですよ。」
アレク、カイン、レッドの3人で白いニョキニョキを斬っていく。斬られても斬られても死なない白いニョキニョキはかなり面倒くさい生き物であった。
「あーーーアレク、船にヒルみたいなやつがくっ付いているぞ。」
「微生物も大きいですねー。凍らせましょう。」
「いくぞー,氷結。おーーーーいいなこれー。巨大微生物が動かないぞ。」
「カイン兄、これからはみんな凍らせていきましょう。」
そしてアレク達の旅もかなり順調に進んでいった。
「今日で十日だな。」
「もうすぐで肛門ですよ。」
「肛門っていうなよ。何かケツがモゾモゾするから。」
「アレク、大変だよー。」
「レッドどうしたー。」
「外見て、外ーーー。」
船内いから出たアレクが見た物は
「・・・・・」
「・・・・・」
「アレク、一つ質問なだけどいいか。」
「ダメです。答えたくありません。」
「アレクーーーー、これ糞だよなーーー、糞詰まりじゃねーかー。」
「アレク、僕もヤダよー。もしかしてこれの中を行くなんて言わないよねー。」
「・・・・・・」
アレク達に大問題が発生してしまった。何と巨大魔物は糞詰まり状態であった。
「重大会議を開きます。」
「・・・・」
「・・・・」
「カイン兄、レッドそうふてくされるなよ。偶々糞詰まりだっただけだろう。人は生きていれば便秘にも下痢にもなるだろう。」
「・・・・俺は手伝わないぞ。」
「僕も嫌だーーー。」
「もしかして俺一人にあれの処理をさせるつもりなのか。」
そして
「アレク、ガンバレヨー。」
「アレク、ガンバだよー。」
「・・・・・バリア、全開5重がけーだー。いくぞーーーーっ。」
アレクは、岩の様に固くなった糞の中に特攻していった。
「うおおおおおおおおーーーーーー。ファイヤー、ファイヤー。」
岩のような固い汚物を抜けるとそこは柔らかくなっていた。
「いやーーーーー。」
アレクの叫び声が響き渡る。固い汚物はまだよかった。柔らかいと言う事は、軟便であった。
「ななななんだこりゃー、便の中に生物もいるのかー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤーーーー。」
壮絶な戦いを繰り広げていくアレク。それは永遠のような時であった。
「抜けた。ハァハァーー。くさっ。」
アレクは後ろを振り向いた。そして唖然としてしまった。アレクの開けた穴は軟便部分がふさがれていたのだ。
「凍らせばよかった。」
アレクは、氷のトンネルが完成するのは翌日の事であった。
「「くさっ。」」
「中和剤をかけてくれーーーー。」
「と溶ける前に船を出すぞー。」
アレクは疲れ果てていた。肉体ではなく心が疲れ果てていた。だが休んでいる暇はない。氷のトンネルはそんなに持たないのだ。生き物は温かい。氷が熔けるまでにトンネルを抜けなければみんなで汚物まみれになってしまうからである。
「いくぞーーーーー。」
「「・・・・・」」
カインとレッドは嫌そうな顔をしている。この状況になっても汚物の中に入るのを嫌がっているのであった。
一人気を吐いているアレクが、3隻の船を操っていく。
「アイス、アイス、アイーーース。ウオオーーーーーー、アーイースー。絶対凍結ーーーー。くそーーーもう溶けかかっている。船に糞が着いた。あっ臭ってくる。アイス、アイスアイス。洗浄、洗浄、洗浄。」
アレクは必至だった。トンネルを強化しながら進んでいく。もう糞まみれになるのが嫌だった。必死でアイスで凍らせていく。
「おっ抜けたなーアレク。」
「・・・・・」
氷のトンメルは抜けたが、まだ肛門へはたどり着いていない。




