881話 村から町へ
今トレイの使用人として働いている者達は、12人であった。このうち小作人として働いている者は10人しかいない。元は20人の小作人が働いていたが、前村長の騒動で逃げ出していた。逃げ出した者達が何か関わっていたのかはトレイには分からないが、何かあったから逃げ出していたのだろう。
畑かぁぁ、あの広い畑が俺の物になるのは嬉しいけど俺には大きすぎるよな。村長としての税収があるから無理に畑やらなくとも食べていけるよな。
んーーー、どうしようかな。
トレイの村は人口900人。そう少しで町と言われるほどの人口である。村の中心地に村長宅があり、その周りに家臣の家(現在空き家)があった。それだけでもかなりの広さありその周りに村長の畑と一緒に捕まった家臣たちの畑があるのだ。
そして村長宅を囲むように村人たちの家と畑が点在している。
村の入り口付近には、商隊の集積所や簡易宿が固まっている。
トレイは村の中を歩きながら眺めている。
「これ使いにくいよな。」
トレイは村の配置がかなり使い勝手が悪い事に気づく、これは村長が村のいい場所をすべて自分の物としている為に変な形となってしまっていた。
以前トレイは税を納めるために一度だけ近くの町に行ったことがあった。そこは碁盤の目にように整理された綺麗な町であった。その時トレイはうちの村きたなっと思っていた。
トレイは、以前見た町の様になればと思っていた。
「畑を潰して、飲み屋、鍛冶屋、宿、食堂・・・ブツブツ・・。」
「あっ金がねーや。」
「金ならあるぞ。」
「えっ、本当に金あるの。」
「あるぞ、前の村長は金を貯めるのが趣味だったからな。」
「それ趣味じゃねーし。」
前の村長はかなりの蓄えを持っていた普通は財産全て没収なのだが、新村長がすぐに決まった事で引き継ぐことになっていたのである。
「村の蓄えと村長の資産を使えばやりようはあるな。」
「マジか。」
トレイは村の再開発の計画を立てる。使いがっての悪いこの村をきれいに区画整理しようとしたのである。家も畑も区画整理していこうというのだ。
だがトレイは、村長と言っても駆け出しであり、村の信用も全くない状態である。トレイがいくらやるぞーっと言っても誰も賛成はしない。
「まずは俺の畑からだな。」
自分の畑の半分を新たに雇った者達に任せ、残りの半分を区画整理し、商店街を造るつもりであった。
「村長、本当にこの家を移築していいんだな。」
「大丈夫だ。この4つの家をこことここに移築してくれ。」
雇われた大工たちは、こいつ何やっているんだと言う目で見ている。村長の意味不明な行動は村人も首をかしげている。村長の土地と資産から金を出している事であまり文句も言えないのである。
「兄貴。」
「おうトレイ。本当に俺に土地くれるのか。」
「大丈夫だ。協力してくれたら者達に土地を渡すよ。」
「「「「おおおおおお」」」」
トレイは、自分の兄と仲の良い者達に協力を仰いだ。それは新たに区画整理された土地に商店と集合住宅を造る計画である。集合住宅は、今回雇った大工や冷や飯食いたちの住処とするのである。
計画はまず、建物を建てると同時に村長の畑を碁盤目の様に区画整理をしていく。
「親父話がある。」
「何だ。村長か。」ニヤニヤ。」
「親父の土地をくれ。」
「あ”あ”ーーーーっ。トレイおめー何言ってるんだーーー。」
「村長の畑と交換してくれ。」
「えっ。おっおう。」
トレイは整理された畑と未整理の畑を交換していった。最初は自分の親父と親戚と親しい者達であった。それはきちんと整理された畑とそうでない畑で収穫量に大きな違いがあったのだ。
それを目のあたりにした村人たちは、村長の話を聞くようになっていた。
村は4つの地区に分けられ、住宅もなるべく密集するようにしていた。
「兄貴には畑3枚だ。協力ありがとう。」
「おう、俺の畑かー。まぁ村のはずれだけどな。へへへ、」
「兄貴これでチヨちゃんを嫁に貰えるな。」
「おおおおおおお前何でし知っているんだ。」
「兄貴有名だぞ。村人で知らない人いないぞ。だから今までチヨちゃんは誰とも結婚していないんだ。」
周りはニヤニヤとしていた。
「兄貴(3男)には、第5地区のとりまとめを頼むよ。第5地区は新しく広げた畑だ。兄貴の仲間も大勢いるだろう。」
「応、任せろ。だけどジム兄貴が騒ぐぞ。あの暴れん坊は・・」
「ジム兄貴(次男)の事は任せてくれ。兵士として雇うから。」
「あーーーそれなら問題ないな。兄貴が農家なんてやる訳ないもんな。」
「冒険者ギルド経由で話はもう着いているんだ。その内戻ってくるよ。」
トレイの村は村長宅(役場)を中心に小さな商店街、宿屋3件、飲食店3軒、鍛冶屋1件、雑貨屋2件、村経営作物販売所である。
村はこの2年で1000人を超えていた。
「村長。」
「どうしました代官さん。」
「村長、町に昇格だ。」
「へっ。」
「町に昇格となれば爵位が貰えるぞ。準男爵となるぞ。」
「爵位貰っても変わんないだろう。余計に忙しくなりそうだ。」
「いいや大きく変わるな。正式な家臣団を持つことが出来るようになるんだ。村長は爵位なしだから正式な家臣団は持つことが出来なかったが、準男爵は町を守る為に兵士隊を持つことが出来るようになる。」
「それって騎士を持つことが出来るか、騎士を指名できるようになるのか。」
「そうだ。オリオン王国の陪臣だがな。」
「何人指名できるんだ。」
「ん、数に制限なんかないぞ。だがあまり多いと金が続かないだろう。」
トレイの町は第一~第五地区(第一~第四の一部が商店街)が町となっている。代官の管理する村隣接の倉庫群なども町の一部とされているが、管理自体は代官がおこなっている。
第一地区から第四地区は各150人から180人、第五地区は80人そして街の中心地は機織り工場、商店で働く者達で約350人が暮らしている。
後に子爵に迄上り詰めるトレイは、各地区の地区長を村長扱いとして貴族にしていった。兄弟を長男も貴族(第一地区村長)次男を騎士(隊長となり後に騎士爵)三男も(貴族)第五地区村長)として物凄く家族びいきな一家であった。
後に家族が増えるごとに第6地区、第7地区と広げ、最終的には第10地区に迄なっていた。
身びいきな男爵であったが、仕事は出来た。文句は人一倍多いがやる事はやっていた。
男爵の町は後に都市になる。商都、王都からの中継地点として栄えていくのであった。




