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880話 ある村

オリオン王国内



俺は、この開発村で生まれた。いいやもう開発村じゃないな。元は辺境と言われた俺たちの村は今じゃ、辺境では無くなっている。もっと南に新しい開発村が幾つも出来上がり毎日馬車が開発村に向かっている。



俺は、この村の農家の4男だ。農家を継ぐことは出来ない。上に3人もいたんじゃ無理だよな。

それならばと村で婿入りを探したが俺はモテなかった。まぁ4男じゃ相手にもされないよな。トホホ。

開発村に行って一旗揚げようとも思わない。毎日ご飯が食べれればいいや。と思っている。



カーーン、カーーン。



「ん、広場に集まる合図だな。」

「おー何かあったのかな。」

「へっ、俺たちは関係ない話だろうよ。」

「それもそうだな。」




「皆、忙しい所すまぬな。この村で大問題が起こった。」


ザワザワザワ。


「この村の村長が不正を働いた。余って村長は重労働20年とする。他4人も不正にかかわり重労働10年とする。」


ザワザワザワザワ。


「だ代官様、この村はこれからどうなるのでしょうか。」

「うむ、出来ればこの村から次の村長を選ぶことにする。読書き計算が出来る者はこの村に居るか。」


村人たちは周りをキョロキョロしている。そして一斉に一人の男をみんなが見つめている。


「えっ、えっ、えーーーーー、俺ーーー。」


「デンバーの4男坊は、読書きが出来たな。」


(おいそこの爺ぃ、俺の名を知らないのか。俺も爺の名前死なないけど。)


「お代官様、村のデンバーの4男は読書きが出来ます。4男なので継ぐ畑もありません。お好きなようにお使いください。」


(えっ、えーーーー、村長を推薦するんじゃないのか、お好きなようにお使いくださいだとー、何をさせようとしているんだ。もしかして村長ってやばい仕事だったのか。)


「おーーそうかそうか。デンバーの4男だったか。名は何というのだ。」


そこのじじいは周りをキョロキョロとしている。名前を知っている者がいないのだ。

「・・・・・・」


「俺の名前ぐらい覚えとけー。俺はデンバーの息子、トレイだ。」

「トイレか、なんだか小便がしたくなる名前だな。」

「トレイだ、トレイ。トイレじゃない。」


「トレイよ。今日からお前がこの村の村長だ。頼むぞ。」

「ままま待ってくれ、そんなに簡単に決めていいのかよ。普通村長って言ったら偉いんだぞ。村の代表なんだぞ。」

「あーっ、まぁ普通はそうなんだが、この村にはオリオン王国からの内政官が3人常駐している。ここは開発村の拠点だからな。心配するな大丈夫だ。本当にダイジョウブだから。心配するな。」

「そんな心配するな、大丈夫を連発されると余計に心配になるぞ。」

「コラー、トレイ黙って村長をやれーー。」

「親父、何言っているんだ。」

「お前は、畑持っていないだろう。このままじゃ一生畑は持てないぞ。」

「うっ。」


「決まりだな。トレイ君。早速仕事の打ち合わせだ。」


俺は連行されるように元村長宅へ連れていかれた。そこで初めて村長たちが何をやったのかを説明された。


「そんな、あの村長が人買いですか。」

「そうだ、開発村に嫁という名の奴隷を販売していたのだ。」


開発村は男がほとんどであり、女はいない。開発が上手くいっても嫁がいないのだ。嫁を探すために金を払う者がいる。そこで遠くの女を攫い嫁として売買する者が出てきたのである。


「この村は荷の中を確認する場所だ。違法な物がないかを確認するんだ。村長はそれを見逃し、金銭を貰っていたんだ。」

「信じられない。あの人の好さそうな村長が・・・」

「トレイ、いいや村長。この村は他の村より裕福だ。4男だった村長が暮らしていける程豊かなんだ。豊かになればなるほど人はもっと豊かにと思ってしまうんだ。村長がいい例だな。」


俺は村長宅を見回す。そこは応接間となっているが高級なソファー、椅子と普通の村の村長では買えないような高級家具であった。


「俺に出来るんですか。」

「読書きが出来るんだろう。大丈夫だ。書類にポンポンとこの印を押す簡単な仕事だぞ。」

「あのー、これめくら判じゃ拙いですよね。」

「おっ、よく気づいたな。そこを気づけるのなら本当に問題ないな。」


トレイは今までテストされていたことに気付いた。

だがトレイの気づきはそこまでであった。トレイは村長職の使用期間であった。


翌日から、トレイは仕事にかかっていく。

村長の仕事とは、朝一に荷出しの見送り、見送りが終わると残っている荷の確認作業である。昼を過ぎると新しい荷が届いてくる。その荷の中身を確認である。


「これ俺一人でやるのか。無理だろう。」

「人を雇ってもいいが、雇った者が不正を働けば村長の責任となるぞ。余程信頼できる者でないと任せられないぞ。読み書きが出来ないものでは務まらんがな。」


(なんだこの仕事量は、普通じゃないぞ。みんな(村民)は知っているな。だから誰もやりたがらなかったんだ。)


この村はかなり忙しい。多くの荷が毎日出入りするために村長は休む暇がないのだ。今までの村長は、人を雇い仕事を行なっていた。昔から信用できる家臣がいたのだ。


へとへとになる迄働いたトレイは夕飯を食べるとそのまま寝てしまった。翌日起きると夜にやる仕事が溜まっていた。



そして数日後


「無理です。辞めます。」

「ダメだ。一度引き受けたんだ。もうお前は貴族になったんだ。辞める事は出来ない。」

「えっ。貴族?」

「ん、知らなかったのか爵位はないが、村長はオリオン王国内では貴族だぞ。」

「えーーーーーーー。」


トレイは、貴族となっていた。爵位もない貴族籍に名を連ねるだけの貴族である。村長という貴族は微妙である。仕事量が異常に多いのだ。村の統治者である村長は土地の売買、税の徴収から納税迄、村の中の行政をすべて行うのである。オリオン王国からの給料はない。村の税(一部)が収入となるのであった。


一度貴族籍となると抜けられないんだ。余程へまをしないと貴族籍は無くならないぞ。まぁ貴族籍が無くなる時は死ぬ時だけどな。アハハハ。」

「わわわ笑い事じゃありませんよ。」

「この村の村長の畑を引き継げるんだ。悪い話ばかりじゃないぞ。」


トレイはここで顔が真っ青になっていた。

「畑を引き継ぐんですか。ままま拙いじゃないですか。」


元村長の畑は村全体の2割もあったのだ。それがこの騒動で村長の雇っている者の6割がいなくなっていたのだ。


その日、新村長は、村中を駆けずりまわっていた。村の冷や飯食いを雇うためである。


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