88話
ガレオン号はドワーフ国の上空を旋回していた。
「何だこの人だかりは、着陸出来ないよ。」「誰か拡声器でどけるように言ってきて。」
「ドワーフの方々に、伝えます。本艦は着陸しますのでどいてください。」
ドワーフはどかなかった。
「帰ろうか。」
「そうですね。」
ガレオン号は着陸することなく、エルフ領に戻っていった。
「師匠、帰り早くないですか。」
「実はね、着陸できなかったんだよ。ドワーフがどいてくれなくて。」
ユリは、呆れた。マックは大笑いだ。
マックが「ドワーフ最高、凄いね、信じられないよ。ハハハ。」
数日後、エルフ領にドワーフのガストがやってきた。
「ガストさん、如何しました。」
「アレクス様、申し訳ありません。もう一度お越しいただけませんでしょうか。」
「それより、まとまったのですか。」
「まとまりそうです。」
「まとまってないんですね。」
「・・・・・・」
「自国の危機も、認識できないような人たちに何を言っても無駄でしょう。」
「そ、それは・・・・」
「お帰り下さい。」
「師匠、いいんですか。」
「いいんだよ。ドワーフはあんなふうだから滅んだのかもね。」
アレクは、エルフ領の開発を手伝っていた。
「アレクス様。」
「どうしたの、テルミナさん。」
「ドワーフが押し寄せてきています。国境付近に集結しています。」
「あいつら、バカなのか。」
「エルフに宣戦布告をするようです。ドワーフは力が強く、エルフではかないません。」
「どのくらいの数が、押し寄せているか分かるかな。」
「すぐに、調べさせます。」
「僕らもその場所にいこうか。」
アレクは、ガレオン号でエルフとの国境に来ていた。
「結構な人数ですね。」
「1万以上はいるね。」
ドワーフは、アレク達を脅迫しに来たのだった。大人数で押し寄せれば、相手も困って譲るのではと思ったようだ。
中央にアレク達とドワーフ数人が集まり、話し合いとなった。
「宣戦布告に来たのですか。」
「話によっては、戦をする。」
「話、なんの話です。」
「援助の話だ。」
「援助はしません。こんな攻めてくるような人たちに、何が援助ですかありえません。」
「・・・・・・・」「この人数で侵略をするぞ。」
「出来るものならやってみろ。お前ら勘違いをしているから教えてやる、この程度の人数で勝てると思うなよ。」
ドワーフたちは、顔を見合わす。話が違うぞ。って顔をしている。
1人のドワーフが、ハンマーを振り上げ突然アレクに襲い掛かった。
「うおおおおお。」
アレクは、何事も無いように、手で一の字を書く様に右手を横に振ったのだ。
ハンマーを振り上げて襲ってきた者の、頭が転がっていた。
「ひぃ。」「ひぃぃ。「・・・」「・・・・・」
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「ドワーフの皆さん、僕に喧嘩を売ったね。買うよ。一度陣にもどりなよ。」
アレクは、エルフ側に勝手に戻ってしまった。残されたものも後を追ってきた。
「じゃぁ、皆殺しでいいね。」
アレクは、軽く言う。エルフたちは顔面蒼白だ。アレクの直臣たちは、諦め顔をしている。
「僕一人でやるからね。みんなは見てていいよ。」
「アレクス様、」
「何かな、ケートス殿。」
「お1人では、無理ではないでしょうか。」
「大丈夫だよ、ねユリ。」
ユリ、何とも言えない顔をしている。「おやめください。アレク様は伯爵ですよ、立場を考えてください。」
ケートスは、いや、そこじゃないだろうと思う。「いや、立場ではなく1対1万ですよ。」
ドワーフたち
「脅せば、言うことを聞くのではないのか」
「話がちがうぞ。」
「やはり、ガストの言う通りにすべきではないか。」
「もう1人殺されてるんだ、引けるか。」
「1万以上いるんだ、負けるわけがない。」
エルフ陣営、総勢100人
「どうなるんだろう。」
「殺されるのかな。」
「死にたくない。」
「降伏しないのか。」
マックが、「師匠、ガレオン号の波動破は使わないのですか。」
「今回は、使わないよ。魔動破だと、一撃でしょう。ドワーフは負けたと思わないからね。だから今回は、僕一人でやる。完全に負けたと認識させる。」
アレクは一人で、中央に向かい歩いていく。
アレクは、歩きながら魔力を貯めていく。膨大な魔力がアレクの周りを渦を巻いていく。
一方、ドワーフたちは、もうやるしかない。勝つぞー。
ドワーフ軍1万がアレクに向かい走りだした。
アレクまで700メートル、600,500,400メートルになった時に異変が起きた。
アレクはドワーフが走ってくるのをじっと待っていた。段々と近づくドワーフ軍500メート、400メートルになった時、「泥沼」。
ドワーフ軍は、地面にのめりこんでいった。下半身が完全に地面に埋まってしまった。足掻けば足掻くほどハマっていく。「硬化」アレクは一言つぶやく。
すると、地面が固くなっていく。ドワーフたちは身動きが取れなくなっていた。アレクは、両手に持った短槍でドワーフの喉を、1人1人と突いていく。
「ブス、ブス、ブス・・・・・・・」延々と淡々と無表情に突いていく。
ドワーフたちは、逃げられない。ただ、死の順番を待っているだけである。
ドワーフが騒いでも、喚いても、謝っても、無表情で突いていく。
1000人が槍に突かれて死に、2000人になり、3000人になり、1人また1人と死んでいく。
ドワーフは、恐怖で、気が変になっている者もいる。1人、1人、又1人。
6000人ぐらいを殺した頃、一人のドワーフがアレクめがけて走ってくる。
アレクは、無表情のまま、槍を突く作業をしている。「ブス、ブス、ブス・・・」
走ってきた、ドワーフは、ジャンピング土下座をした。見事だ。10.0だ。
ガストである。「アレクス様、どうかお許しください。お願いいたします。どうかお許しを、お願いいたします。」ひたすら謝り続けるガスト。アレクが、槍を突きながらガストの近くに寄っていく。
「ガスト、殺されに来たのかい。」
「アレクス様、どうかお許しください。お願いいたします。」
「喧嘩を、いや宣戦布告をしたのは、ドワーフだ。」
「こ、こ、こ、降伏いたします。」
「ガスト、お前が代表者か。」アレクは底冷えのする低い声であった。
「わ、わ私が代表者になります、いえ代表者です。代表です。」
「今ここにいるドワーフを全員殺したら、賠償はいらないよ。だけどここで殺すのを止めたら賠償責任を取るよ。選びなよ、代表者よ。」
生き残っているドワーフはガストを見ている。声を出したくとも、怖くて出せないのだ。
ガストは、ドワーフを助けてくれと頼み込む。「生き残っている者をお助け下さい。お願いたします。」
「そうか。僕は一休みするから、それから話そうか。」 アレクはエルフ側に歩いていく。
ガストは力が抜けた、全身の力が抜けた。もう力が入らない。