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872話 島2

島のお屋敷は今日も賑やかだ。朝からワイワイと子供たちの声がかなりうるさい。


「あー、僕のだよ。」

「ごめん。間違えちゃった。」

「それ、貸して。」

「いいよ。」


子供たちは、難民生活からお屋敷生活に変わり、のびのびと生活が出来るようになっていた。難民区では与えられた家は狭く、外で遊ぶこともままならなかったが、この屋敷では広い庭もあり子供たちは毎日駆け回っている。楽しい声が聞こえてくると妖精たちも集まってくる。妖精たちも楽しい事が大好きなのである。


「今日のケーキはイチゴかなぁ。」ルンルン。

「今日は絶対にブルーベリーよ。」ジュルリ。

「あたちは知っているのよ、今日はショコラケーキよ。」


「「「「ショコラ?」」」」


「ショコラケーキはチョコレートなのよ。」

「「「「チョコレートォォォォォ。」」」」


妖精たちは一斉に飛ぶ速度を上げていた。


アレクは、数日おきにケーキ、クッキーを大量につくる事になっていた。シスターたちに作り方を教える事と毎日同じモノでは飽きると思いから、10種類ぐらい作っているのであった。

作り置き時の会話を一人の妖精が聴いていたのである。


そして朝の畑仕事も終わり、軽い昼食を食べ、待ちに待った3時のおやつの時間となる。


妖精と子供たちは、静かに席についている。普段であればワイワイガヤガヤとおしゃべりしているのだが、今日はみんな静かである。妖精がチョコレートの事を子供たちに伝えていたのだ。初めてのチョコレート、魅惑のチョコレートである。


「よーーーし、今日は新作のケーキだぞ。」


「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」」


「「「「「「「いただきまーーーす。」」」」」」」


「甘ーい。」

「おいちい。」

「あまーーい。」

「お口の中で溶けるーー。」

「美味しいーーーぃ。」



アレクは嬉しそうに子供たちを見ていた。アレクがケーキのお世話をするのも今日が最終日なのだ。


「シスター、たまに顔を出すようにするからな、何か問題が起きたらすぐに伝えるようにな。」

「アレク様、ありがとうございます。ケーキも何とか作れるようになりました。あんな高級素材を使うなんてもったいないですが、頑張ります。」


アレクは苦笑いである。ケーキやお菓子などは砂糖や蜂蜜等高級といわれる食材を大量に使うのだ。妖精の為に使うのだが、子供たちも一緒に食べる事が出来、シスターたちも食べる事が出来るのだ。ガリガリに痩せていたシスターたちも少しだけふっくらしたように見える。



「「「「「「おじちゃーーーん。またねーーー。」」」」」」


「おにいちゃんな。」




子供たちに見送られ、アレクは、海岸沿いの開発地区へと向かった。

この開発地区は、新しい町として今最も活気に満ちた場所である。


この島は素材の宝庫である。妖精たちが住んでいる事で、魔力に溢れ植物の成長が早いのだ。そして植物の種類も豊富で、場所ごとに育ってる物を分けているのである。



「おっ、ゴムの木は樹液を取れるのか。」

「あっアレク様、そうなんですよ。植えてまだ一月ですよ。信じられません。この島は普通じゃないですね。」

「まぁ妖精がいるからな、普通の島じゃないな。」




「親方---、この水変です、甘いです。」

「あー、この井戸は普通の水じゃないんだ、甘い水が出るんだよ、向こうの井戸は普通の水だからな。」




「おーーい、窓枠もってこい。」

「はい。」

「でも親方、この町全部の建物にガラス窓と作るんですかー。」

「そうなるな、凄い町になるな。」

「俺、あんな綺麗なガラス窓初めて見ました。」

「そうだな一つの歪みもない硝子なんて迷宮産以外にあり得ないからな。」


この開発地では建物にガラス仕様になっていた。窓ガラスは、建物の内部を明るくすることが出来る。まだフロンティアではガラス窓は一般的ではなかった。領主館や裕福な家ならば少し使われているが普通の家に使うにはまだまだ高価な物であった。それを惜しげもなく使用しているのである。



島開発指揮所


「アレク様。」

「どうした秘書官。」

「先ほどもゴムの木ですが、マリア様から物凄い催促が届いております。毎日手紙と通信が入り仕事に支障が出ております。」

「あちゃぁ、やっぱりか。どこから漏れたんだ。」

「食料輸送をしている商人でしょう。あんな白い液体を樽で運んでいるのです。商人が興味を示す物仕方がありません。」

「なんでうちに言わないでマリア姉なんだ。」

「それは・・・・モゴモゴ・・」

「ん、何だハッキリ言え。」

「・・・・・アレク様を怖がっております。」

「なんで俺を怖がるんだ。いたって普通の外見だろう。」


秘書官は言えなかった。夢遊病者の様に半居眠り状態で町を走り回り、眠った状態で島をつくり、時には熊さん柄のパジャマを着たり、ぬいぐるみの様に兎の耳をつけた着ぐるみパジャマも来ていたのだ。これは、アレクに付いていたメイドたちがいけない。面白がりアレクにお着換えさせていたのだ。たまにねむったまま突然動き出すアレクであったために、誰も止める事が出来なかったのだ。そしてフーリン名物となってしまっていた。誰もアレクに伝える事が出来なかったのである。


「そうなんですが、たまに眠った状態で動かれていたので、それで恐怖を感じていたようです。」

「ハン、そんな事か、半居眠りよりアンデットほうが厄介だろう。俺は眠っていても敵以外殺さないからな。」


秘書官には分からなかった。アンデットと比べられても答えようがないのだ。愛想笑いでこの場を乗り切るしかなかった。


「まぁ仕方がないマリア姉には俺から伝える。今はまだゴムを流通させない。流通は早くて来年からだな。」

「そうです、まだ一日に大樽3つしか取れません。需要は何百何千となると思われます。」

「だよな、車輪、窓枠、衝撃吸収と色々と使えるからな。」

「はい、盗難はありませんが、盗みに入った者は数人出ております。」

「そいつら馬鹿だろう。こんな島で盗みなんてしたって直ぐにバレるだろう。」

「それでもゴムは魅力的なのです。」


アレクは仕方なしに商人向けに説明会を開く事を了承した。その時に集まった商人たちは数百人になっていた。説明に当たった秘書官は、その時から専属ゴム担当となってしまった。

後にゴムの事はこの男と言われるほどにっまでなる。後世、ゴムの父といわれるのであった。

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