84話
アレクは、オリオン公国へ救援を頼むのをためらっていた。
先日の件で、言いにくかったのだ。
そこでアレクは、領地内で処理をすることにしたのだ。
カリーナとサリーナに陣頭指揮をとらせ、食料の確保、人員の確保をさせたのだ。
そして個体をフル活用して、防壁を造っていたのだ。
「いやぁ、水の中より楽だね。」
「地上は、いいですね。」
「空からも吊るさないし楽だね。」
「でも、一番楽な理由は、あの鎧のひとたちだよ。防壁を一人で運んでるよ。」
「あれは、ありえないよ。防壁を持ち上げる人なんかいないよ。」
「目の前にいるじゃん。」
「・・・・・」
こんな話を作業員たちはしながら工事をしていた。
一方、アレクは大森林内を飛び回っていた。
「よーーし、この位置に境界壁降ろすぞ。」
「俺もうやだ、手が、手に力が入んないよ。」
「もう少しだ、これで終わるからな。」
「よーーし。終了。」 「次行くぞーー。」
「・・・・・」
アレクは、無暗に防壁をつくらなかった。
それは、管理運営が出来ないからだ。ある程度の、人口のある場所で防壁を造り、村を町に変えていくように誘導していたのだ。獣人の村を中心としていたのだ。
「リック、これどう思う。」
「そうですね、広いです。」
「分かってるよ、そんなこと。」
この広い大森林で集まってきているのは、一部の地域のみなのだ。まだまだ未開の地域があり、人が集まってくる可能性があるのだ。
「こりゃ、根本的に変えないとどうにもならないかも。」
「師匠、こんな広い大森林、師匠だけでは無理でしょう。オリオン公国を頼りましょうよ。」
「・・・・・・」
「まだ、やれる。考えがある。」
防壁だけは何とか出来上がった。そこで一度各種族の族長を湖の島に呼んで今後の話をすることになった。
集まった種族は、獣人、ドワーフ、エルフ、人間、魚人、の5種族である。
「ここに集まってもらったのは、今後の話をするためだ。今後は、アレクス領の承認した町、村、集落にのみ援助等を行う。それ以外の要請には応じない。わかったな。」
「伯爵様、よろしいでしょうか。」
「猫族のたしかジャルだったか。どうした。」
「ジャルでございます。その今後と言いましたが、新たに来た者はもう、援助はしてもらえないのでしょうか。」
「こちらに来るなら援助もする。だが集落にまで行って援助はしない。」
「集落ごと、こちらに移る場合は援助してもらえますか。」
「そうだな、領民としてルールを守る事を誓う事、働く事が出来るのなら最初だけ援助する。あとは働いて金を稼げばよい。」
「領主様、例えばわれらエルフの村に、迎え入れることは出来るでしょうか。」
「村の責任者の許可があれば構わんよ。」
「・・・・・・・・」
「・・・・」
「そこで各所属の代表者に、取りまとめをやってもらいたい。いいか無暗に援助はしない。働く者には手助けを行なう。仕事は与える。
このことを頭に入れろ、忘れるなよ。 お前たちは今まで各種族のみで、生活をしてきたのだ。生活が出来ない訳ではないはずだ。違うか。」
各種族は下を向く。
「間違えるなよ、善意だけで援助はしない。」
「明日までに、各所属をまとめ上げろ。出来ないやつはいらん、出て行ってもらう。良いな。」
「ではまた明日に。」
各種族は困惑気味だ、今迄の生活がみじめに思えてくるような生活なのだ。それもすべて援助してもらっているからだ。援助が無くなると元の生活に戻ってしまう。
「獣人は、まとめられるか?」
「大丈夫だろう、もう色々な種族が領民になっているし、働き口もある。」
「魚人も問題ないね。みんな喜んでるよ。」
ドワーフとエルフが黙り込む。
「ドワーフのドルドよ、働けば金を稼げるぞ、この金で物を買えばよいではないか。何の問題があるのだ。」
「昔から、この地におるのだと、言い張っておる奴がおおくての。領民になってやる代わりに援助しろといっておるのよ。」
獣人と魚人は呆れた。「じゃなんで援助してくれと、此処まで来たのだ。お前らおかしいぞ。」
ドワーフは黙っている。
「・・・・・・」
エルフも同じようなものであった。
獣人と魚人は、助けてくれるのは困っている者だけだ。困っていないなら必要ないだろう。エルフは困っている者もいるんだ。だけど若い領主と思い、搾り取ろうとしているようだと説明をする。
それを聞いた獣人が驚いた。お前ら本気で言っているのかと。獣人はアレクの事を教えた。数々の出来事を、自分たちの滅びた国を復活させてくれたことを。
獣人以上に驚いたのは、エルフとドワーフである。そんなことが出来るのかと。グラムット帝国と戦で勝っていると言う事実を知らなかったのだ。
大森林の中にいれば、知らなくて当然だが。
獣人は、今のグラムット帝国周辺の事を詳しく教えたのだ。エルフの国も復活している。ドワーフも同じだ。
エルフもドワーフも、驚き過ぎて呆けてしまっている。他のドワーフとエルフを呼び、再び説明をしたりとその日は大変であった。
次の日
再び集まった、各種族たち。
「皆、結論はでたかな。」
獣人は、領民になり、働きたいと答える。魚人も同じである。ドワーフは、ドワーフの国に行く者、今のところで生活をする者、領民として働く者に分かれた。エルフも同じく3つに分かれた。
アレクは、領民として暮らす者は問題ない。エルフ、ドワーフの国に行く者も問題はない。現状の場所に残り領民とならない者と領民になる者が存在することが問題だと伝え、エルフとドワーフは今回の話は白紙に戻すと宣言をしたのだ。
エルフとドワーフは、再交渉を願い出た。だが応じなかった。
エルフとドワーフは出ていくように伝えられた。
獣人と魚人たちに新しい家、仕事が与えられた。給料が入るまでの援助も与えたのである。
エルフとドワーフはまだ出ていかなかった。残っているのだ。だが食料も何ももらえていないのだ。
エルフとドワーフは、再度交渉に挑んだが相手にもされなかった。結論は出ていると伝えられた。
領主側は、早急に出ていくようにと要請してきたのだ。
ドワーフとエルフは一部を残して出ていった。3つに分かれていった。2つの種族は各自で話し合いをした。復活した国を目指す者、領民となる者、種族を離れる者の3つに分かれたのである。
今度は、獣人と魚人を通してこの話を伝えたのだ。領民になる者は認められた。
出ていった者達は、領地となる村にも入れなくなり。分かれて残された村に集まるようになっていった。
援助はしないが、同じ種族が勝手にやる事には問題ないと伝えられたのは、一月後であった。
各種族の領民たちが、その村に着いて驚いた。以前より貧しくなっていたのだ。
領民たちは、残った村人に、どうしてこうなったのかと聞いた。村人は、残った者達はもとから人を頼っていたので自分では何も出来ないと語っていた。語ってるお前もだ。
領民たちは、迷った。援助をしたら、まずいのだと。だが結局、持って来てしまっているので物資等を渡したのである。
のちに渡した者達は、後悔したのだ。
働かぬ者、食うべからず。
領民となった、村の開発は急ピッチで進められていた。
何しろ人口増加が急激なのだ。場所がないので、今ある物を拡張してしのぐことになったのだ。
「おーーい、次にいくぞーー。」
「俺もうヤダ。手が、手が痛い。」




