83話
ガレオン号艦内
アレクは、ほっとしていた。
「やばかった。良かった。しのげた。助かった。」独り言のオンパレードだ。
アレクは、自分の完璧な言い訳に酔っていた。マリア、イリアが水の都に居たときは焦った。ビビった。ちびった。けど乗り切った。
まあ、嘘は言ってはいない。本当は自分が仕事をやりたくない、したく無い、怠けたい、ので個体を製造したのだ。
アレクは、個体を製造しておいてよかった。とほっとした。もし無かったらと思うと身震いがする。
ブルブル。
「コンコン」
「どうぞー。」
「失礼します。カリーナです。」
「どうしたの。」
「改めて、謝罪に来ました。」
「いいよもう、怒ってないよ。それよりこれからの事を話そうか。」
アレクはカリーナと、水の都、湖の島、ローエム王国内ではあるが、迷宮都市のこれからの事を話した。
水の都はアレク伯爵領の中心地になる。この水の都を中心に空と運河を使い湖の島への行き来をしたり、交易の起点にする。将来は各国に、鉄道を作り大陸横断をさせると話を大きくしていった。
まだオリオン公国に鉄道は無い。そこまで手がまわっていないのだ。
アレクは、個体を水の都、湖の島、迷宮都市に各1体を常駐させることを告げる。
「水の都の個体はカリーナが管理してね。」カリーナから髪の毛を1本もらい個体登録をさせる。
「これで、仕事が捗るよ。」
「そうか、これからは水の都を中心にするから、・・・・水の都にもう2体常駐させようかな。」
アレクはカリーナに、個体の指示の仕方、使い方などを説明していく。これで仕事が楽になるとか、やり易くなるとか、僕も遠隔で指示が出せるからいなくても大丈夫とか、色々と説明の中に、自分は居ないよ、を妙にアピールしながら話をしていた。
カリーナは思う。やっぱり、サボりたいだけなのではと。
カリーナは、勘違いをしていた。オリオン公国はエレメル、マリア、イリアが中心になり国を支えている者と思っていた。間違いではなかった。正解でもない。
エレメル、マリア、イリアを中心にオリオン公国の運営をしている。だが元が違うのだ、アレクが中心なのだと解った。アレクが居なければ、オリオン公国自体が存在していないのだ。
魔法解放で名前は知っていた。重要な事をやり遂げていたことも、みんなが頼りにしていることも知っていた。
エレメルに言われたことを思い出した。「アレクをうまく使いなさい。でも怒らせてはダメよ。」
この人は、すべて自分で出来るのだ、でもやらないのだ。
カリーナそれは、誤解だ。
アレクは、カリーナの勘違いを利用して、上手くサボれるようになりそうであった。
ガレオン号が、水の都に到着したようだ。
「「「「「「師匠、お帰りなさい。」」」」」」
「おおぉ、会いたかったよ。リック、マック、ユリ、カイ、ホリー、バレー元気だった。」
「大丈夫です。忙しかったですけど、自分たちの領地の事も色々と出来ましたから。」
ユリはカリーナ女爵をみて、会釈をした。
「そうなんだ、自分の領地だもんね。これからは、なるべく領地に行けるようにしようね。」
「「「「「「はい。ありがとうございます。」」」」」
アレクと6人の直臣とカリーナは街の食堂へ行き、みんなでA定食を楽しく、おしゃべりしながら食べていた。
アレクは、直臣にも色々と説明をしていた。
アレクと6人は、湖の島の開発状況を見るために、またガレオン号に乗り込み飛び立った。
「いってきまーーす。」
湖の島
「なに、この人。」
「人、人、人、人ですよ。どうなってるんだ。」
サリーナ女爵を探そう。
アレク達は、サリーナ女爵を探して何があったのかを聞いた。
「サリーナ女爵、どうなってるの。」
「それなのですが、この大森林の中に住んでいる人たちが、ここに押し寄せているんです。」
「えっ、大森林の中に人って住んでたの?」
「私も、大森林には人は住んでいないと聞いていましたし、思っていました。」「獣人に聞いたのですが、こんなに住んでいるとは知らなかったようです。」
それは、長い年月により繰り返されていた、戦争、災害等で国をなくし、行き場をなくして流浪の民となった者の子孫たちであった。
大森林の奥に入り、静かに、目立たぬように魔物から身を守りながら暮らしていたようだ。
「それで、安全に暮らせる土地がこの島と言うわけなんだ。んーーーん。」
「数日前から、一気に人数が増えだしました。応援要請を出す所でした。」
「それじゃ、応援要請出すよね。とりあえず、貨物船で食料を運ばせよう。サリーナ女爵手配を頼むよ。」
この湖の島に来ているのは、魚人、獣人、エルフ、ドワーフ、人間までいたのである。
アレクは、各代表者を呼び出し、話し合う事にした。
アレクは、考えていた。こんな2キロ4方の小さな島に、この人数を入れるとはできるが、まだ人が増えていくだろうと考えられる。島内では賄いきれない。
島の埋め立ては大事業だ、そう簡単には出来ない。どうする、どうしよう、どうしようか。
答えは簡単だった。湖の近くに街を造ろう。
アレクは、各代表者との話し合いに向かった。
「ようこそ、湖の島へ。」
1人1人自己紹介をしていき、色々と状況が分かってきた。
カインが、大森林の調査に行った時ぐらいから、この大森林の中で噂になり始めていた。
獣人が安全な土地で暮らしていると、人伝に、徐々に広まっていったのだ。そして今回、湖で大工事が行われた。そこに魚人が川を使い色々と調査をしている。魚人たちから安全に住めると情報が広がっていき、この場所に人が集まってきたのだ。
「皆さんが、オリオン公国の民として暮らせるようにしましょう。」
「ワシたちドワーフは、あそこに見える山のふもとで暮らしている。」ドワーフ指を山に向けている。
「安全に暮らしたい、食料がほしい。この場所ではなく、今の場所で暮らしても食料を貰えるか。」
「今の場所で暮らせるなら、それがいいでしょう。食料はただでは上げれませんよ。」
「それなら、鉄鉱石等と交換はしてくれるのか。」
「鉄鉱石ですか、いいでしょう買い取ります。そのお金で食料等を買ってくださいね。」
「・・エルフは・・暮らしを・・・・・・」
「・・・・・できますよ。・・それに・・・・」
「・・・・・」
アレクは、この場所に住みたい人、今の場所に住んでいたい人を聞いた。今の場所に住んでいたいものが意外に多かった。だが食料が少ないようだ。大森林内では農作物の収穫が少ないのだ。
アレクは境界壁の設置を説明する、各所に住んでも、安全に暮らせるように境界壁で集落を囲めば安心して暮らせると伝える。こちらに移住したい者は湖の近くに防壁で囲んだ街を造るからそこに住むように説明をしていく。
一通りの説明が終わり、この大森林の中にどのくらいの人が住んでいるのかを聞いたが、誰も分からなかった。広い大森林で人から人に、伝言ゲームのように噂が広がっていき、大森林の各地から、バラバラに集まって来ただけであった。
各集落は、多くて200人少ない所は10,20人である。
後は、サリーナに任せて、アレクは湖の近くの街づくりの計画に入った。