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826話 ヒーロー誕生

ギャァーーー。


大きな悲鳴が聞こえる。


そこには巨大な虎がいた。口からは涎がたれ眼がいってしまっている。


「何あれ、変だよ。」


虎は人を咥えたままぶんぶんと振り回している。

パープルは人では勝てないと思い大きな虎に向かっていく。


「とりゃーーー。」


パープル渾身の一撃、体当たりだ。


大きな虎は何が起こったのかすぐには理解が出来なかった。まさか自分が吹っ飛ばされるなど思ってもいなかったのだ。



こうして虎とドラゴンの戦いは始まった。



虎はパープルに対して俊敏な動きで捕えようと襲ってくる。力も速さも虎の方が勝っていた。パープルももう少し大きくなっていれば力は勝っていたのかもしれない。だが今は虎の方が力は上であった。


「正義パワー全開。」


パープル謎のことばをはきながら、虎に特攻していく。


「正義パーーンチ。」


「正義の力が効かない。こいつは悪の化身かな。でも僕には必殺技があるんだ。昨日覚えたバリバリ光線だ。行くぞーーー悪の化身。」


パープルは大きく飛び上がる。虎の真上まで来ると大きく息を吸い込み一気に吐き出す。


バリバリバリバリバリ。


虎は白目をむいて泡を吹いている。体から煙も少し出ていた。そしてビクビクしている。


「「「「おおおおおおおおお」」」」


虎とパープルの戦いは村人たちが見ていたのだ。パープルが勝ったことで村人たちが歓声を上げたのである。


パープルはもの凄く気分が良くなっていた。戦いに勝ち村人たちがパープルをたたえて歓声を上げている。それは紛れもないヒーローの姿であった。

パープルは短い両手を高々と挙げる。勝利のガッツポーズである。


村人たちがパープルに群がっていく。勝利の胴上げをしていく。一瞬ふわりとした感覚と下に落ちる感覚は何と見えない面白さがあった。


「デヘヘヘヘーーー最高ーー。」


村はもう大騒ぎとなっていた。


ドラゴン信仰の強いこのフロンティアで子供のドラゴンであるが目の前で大きな虎を仕留めたのだ。


「パープル様ーー。」

「パープル様、このお肉美味しいですよ。」

「パ-プル様、はいあーーん。」


あーん。パクリ「美味しいねー。」


パープルは正義マンから王様になっていた。



翌朝


「おじさんおはよー。」

「おっ起きたか。昨日はありがとな。それにしてもグフッ。」

「えっどうしたのおじさん。」

「パープル顔洗ってこいよ。」


パープルは表の井戸で顔を洗おうと桶をのぞき込む。


「ああーーーーー。」


パープルの頭に大きなリボンが付いている。


「何これー僕は男だーーー。」


パープルは直ぐに大きなリボンを取りジャブジャブと顔を洗い家の中に入っていく。


「おっやっと気づいたか。」

「おじさん僕にリボン付けたの誰ー。」

「パープルは男の子だろ。それを聞いてどうする。その子を殴るのか。」

「うっ・・・」

「男はな、小さい事は気にしないんだ。お前はドラゴンで英雄なんだぞ。」

「えっ英雄。ヒーローだね。デヘヘヘヘーーー。」


ニヤケ顔になるパープルである。



「あっそうだ僕帰らないと。」

「そうだったな。フーリン領に住んで居るんだよな。」

「そうだよ、空を飛んでいくからひとっ飛びだけどね。」

「そうだ帰る時お土産持っていけよ。昨日村人たちが英雄さんに持ってきたんだ。」



そしてパープルは大きな荷物を抱えていた。


「パープルそれで飛べるのか。」

「うん、多分大丈夫。少しゆっくりになるけど行けるよ。」

「そうか、又来いよ。」

「うん必ずまた来るよ。、またねーーー。」


パープルは、ゆっくりと空へ上がっていく。


村人たちは皆、パープルに手を振っている。


「みんな又来るねーーー。」


パープルは泣いていた。なぜか涙が出てきていた。


視界がぼやけているが飛行には問題がない。

一路フーリン領へと向かったのであった。







パープルが空を飛んでいるともの凄いスピードで向かってくるドラゴンがいた。母である。


「パープルぅぅ。」

「お母さんただいまぁぁぁ。」


マッカと感動の再開をしたパープルであったが、これからお説教タイムである。


お説教されているパープルであったが、自分が喋りたくて仕方がなかった。


ウズウズ。


「聞いているのパープル外泊は不良の始まりです。ママに一言言ってからですよ。泊まるお家に挨拶にも行けないなんてドラゴンの威厳にかかわるわ。明日にでもそのおじさんにご挨拶に行きます。いいですね。」

「うん分かったよーー。おじさんはいい人だったんだ。それにねー、僕ヒーローになってねー、魔物退治したんだ。虎の魔物ががおーーーっ来てバリバリバリって倒したんだ。・・それから・・」


それからもパープルの語らいの時間が続いていく。



バタン。



「パープルお帰りなのじゃぁぁ。」

「あっ姫様ーーただいまー。」


マッカはそっとパープルから離れていく。もう2時間もパープルの自慢話を聞いていたのだ。母であっても自慢話は聞いていて疲れるのである。我が子は可愛いがこれはこれそれはそれである。



「パープル、旅行に行ったのじゃな、この姫も行くのじゃぁ。」

「いいよ。明日お母さんがおじさんちに行くから一緒に行こうよ。」

「何、本当かぁぁぁ、行く行くのじゃぁぁぁぁ。あっ旅行の準備をしないといけないのじゃぁ。」


姫様はぴゅーーーっと去っていった。


姫様はもう行く気だったが行けるかどうかはまだ誰も知らない、じいの許可が無ければ外に出れないのであった。



パープルは、温泉に向かっていた。それが拙かった。今度は父であるマッサオに捕まってしまった。


「パープル、マッカが昨日泣いていたぞ。パープルが不良になっったと大変だったんだぞ。」

「ごめんなさい。」


マッサオはここで父の威厳を発揮した。


「まぁ少しぐらいやんちゃな方がいいか。」ニカッ。

「お父さん。カッコいい。僕もお父さんみたいになるよ。」


怒られると思っていたいたパープルであったがまさかのスルーであった。文句を言わない父は大好きであった。


「そうだ俺みたいな偉大なドラゴンになれよ、男は背中で語るんだ。」


全く意味の分からないパープルであったが、分かったふりをする。これはマッサオ一家で学んだことである。そうすれば父はご機嫌なのだ。


「うん分かったーーー。」


親子二人はドラゴンの湯で男の語らいをしていた。のぼせる寸前で何とかパープルは脱出に成功した。


「フーーー、この牛乳サイコー。」



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