818話 その頃オリオンでは
「何、ドラゴンの湯。」
「はい、アレク様。今フロンティア大陸フーリン領でドラゴンたちの観光地となっております。」
「・・・・・」
「その観光地は大変な賑わいで、鄙びたフーリン領が3倍の人口増加となっております。」
「まぁ戦争よりいいが・・・・ドラゴンたちは何やっているんだか。」
「はい、ドラゴン信仰の厚いフロンティアでこれほどのドラゴンが集まっている事で人々が押し寄せているようです。」
「フロンティア大陸は群雄割拠の時代ではなかったのか。」
「さようです。ですがドラゴンとなれば話が変わります。ドラゴン1体を味方に付ければその領地は安泰となります。誰もドラゴンに戦争を仕掛ける者はフロンティアにはいません。」
「そう言う事か、ドラゴンを自分の領地に引込もうとしているのか。」
「憶測ですが、そう考えております。」
アレクは、オリオン王国に戻っていた。タンドラ大陸はルドルフに任せる事となり、雑務の溜まっているオリオン王国に連れ戻されていた。
「温泉かー、俺も温泉に行っていないよなー。」
「アレク様、温泉はオリオンにもあります。」
「・・あるな。」
「政務はオリオンにしかありません。アレク様の両隣の部屋には山積みの書類がまだ残っております。その書類が終わらなければアレク様に休みはありません。」
「・・・・・・」
アレクの周りには護衛兵200人態勢で守られていた。それは表向きの事である。アレクが逃げ出さないように見張っているのである。
アレクは逃げ出そうとは思っていなかった。さすがに王である事と自覚しているのである。オリオン王国発展の為に仕事をしなければいけない事は分かっているのだ。
「秘書官、この港建設だが却下だ。」
「えっ、これですか。」
アレクの一言に驚く秘書官であった。その港建設はオリオン王国のこれからを考えて計画された案件であった。オリオン王国内商業ギルドからの提案として費用のすべてを商業ギルド持ちというオリオン王国としてみれば素晴らしい物であった。
「アレク様、何故却下なのでしょうか。」
「これはな、商業ギルドがすべての費用を持つと言う事だろう。だからだ。」
「オリオン王国にしてみれば、ただで国の港が手に入るのです。問題はないと思います。」
「いいか、このアース大陸内にはオリオン王国の敵はもういない。国として対立する敵はいない。だが商業ギルド、冒険者ギルドなど各ギルドの利権は別だ。この者達は己の利権の為に国も利用しようとしているのだろう。」
「なぜ、わかるのでしょうか。」
「それはな、この租借200年だ。」
「それは開発の資金を回収するためと聞いております。」
「そうだろうな、だが200年もの間、その土地を好きにできるのだ。港は世界と繋がっている。その港を商業ギルドが好きにで仕切るのだ。租借地として自治領地としてオリオン王国の法的外となるのだ。」
「御禁制の物も輸入出来ると言う事ですね。」
「そうだ、麻薬などの物もオリオン内に入れる事も出来る、まぁ商業ギルドがそれをやろうとしているかは不明だがな。長い年月でそういう者が出ないとも限らん。港や公共施設はオリオン王国監視下に置かなければならない。これは絶対だ。」
「はっ了解いたしました。」
商業ギルド
「なにーーー、許可が降りないだと。」
「オリオン王国からの返答書です。」
「クソーあのオリオン一家め。」
商業ギルドは、オリオン王国を始め、各国と対立する事が多くなっていた。マリア、イリアの政策で、商業ギルドに頼らなくとも各商店や商会が商いを行なえるようになってきたのである。一昔前までは、交通手段が限られていたために、遠方への輸送が困難であった。盗賊や各領主などから身を守るためには一商人ではかなりの金額が掛かっていたのである。それをキャラバンを組みギルドが仕切っていたのである。その為にギルドを通さなければ飽きない自体が出来なかった。
「戦争してるときはまだよかった。我がギルドからも物を買いに来たからな。だが今はどうだ平和になった事で各自が好きにやっている、我が商業ギルドに金が入らないではないか。」
「ででですが、もう戦争は終わりました。」
「そうだ、だが内乱が起これば又商業ギルドで物が売れるぞ。そうだ内乱だ戦争だーー。ガハハハハーー。」
この商業ギルドのギルド長は少し頭がおかしくなっていた。
今オリオン王国では、商都を中心に経済圏を作っている。これは各領主(領地)の街道整備を進めているのである。新しく貴族となった者達は、領民の為、自分の為に道を整備して人の往来を多くすることを目指しているのである。これはマリアとイリアの政策の賜物であった。各領主は二人から経済とは何か、人物金が無ければ何も生まれないと教えられていた。
オリオン王国貴族が他の貴族と違う所は、この経済感覚を持っているかである。
その為に各領主は、商売にも手を出している者が多くいる。領地の特産を作る努力をしている。酒を作る者、布を作る者、一次産業ではなく二次産業として領地で付加価値を作り売り出しているのであった。
これをもろに影響を受けているのが商業ギルドであった。領主主導で領地全体がおこなっている為に入り込める余地が全くなくなっていた。
職人を領地に派遣する事もできなくなっていたのである。領主や領地の名主たちは、領地内の情報網で直接雇っているからである。これによって商業ギルドは中抜きが出来なくなり、人もいなくなってしまったのである。
職人にしてみれば、手取りが多くなり、長期雇用となり安定した生活が保障されるのである。それも故郷など、見知っている場所で生活が出来るようになっているのであった。
「いやーー、俺の村でビールが飲めるとはな。うめーーーー。」
「そうだな、生まれ故郷で酒を造れるとはなー。」
「だよな、新しい領主様は、凄いよなー。」
「嗚呼、何か元兵士だったようだぞ。」
「えっ兵士、騎士じゃないのか。」
「何か、兵の募集で半年で武勲を立てて、出世したんだと。」
「凄いなそれー。普通ありえないだろう。」
「いや、そうでもないぞ。この辺の村の領主(村長)達は皆そういう人たちの様だぞ。」
「マジか。おおおお俺も兵士になろうかな。」
「無理だろうお前じゃ。」
「だよなーーー。」
「「アハハハハ」」
オリオン王国内には小領主が多く生まれていた。これは武勲を上げた兵士や騎士たちの褒賞であった。




