81話
ローエム王国公爵邸
「疲れたーーー。」
「やっと帰れる。」
ルドルフはほっとしていた。
そこに、ハロルドとエレメルの二人が帰ってきたのだ。。
「ルドルフ。お疲れの所、悪いんだけどこれお願いね。」
ルドルフは、渡されたものを確認する。
「何ですかこれは。」
辞令 王立魔法学校 学長代理を命ず。
みんなソッポを向いている。
「知ってたんですか。」
ハロルドが「あきらめろ。」
ルドルフ、初めての、 (が、っ、く、り) 周りの人は知らんぷりだ。
こうしてルドルフはローエム王国公爵邸の住人となった。もちろんクリスも一緒だ。
ルドルフは、オリオン公国の外務大臣兼ローエム王国王立魔法学長代理となった。
ルドルフは、魔法学校の実質的な支配者になった。学長等の人々は経営は出来るが、教育は出来ない。そこで権威もあり、実力もあり、教育も出来る人、そしてローエム王国の利権に関係の無いもの、すべてに当てはまるのがルドルフであった。
ハロルドは、「学長代理は臨時だ。やれる人間を育てろ。代われるぞ。」と言い残して、ハロルドとエレメルはオリオン公国に帰ってしまった。
残されたルドルフは、やるしかなかった。
この頃、アレクは、食堂を経営していた。
「A定食2つ、お願い。」
「はいA定2つ。」
「いらっしゃいませ。3人様ですね、相席になります。」
「C定1つ。」
アレクは水の都に食堂を作ったのだ。
魚人たちが、漁をして魚を獲ってきたのだが、魚を食べる習慣がなく誰も食べなかった。そこでアレクは食堂を作り経営したのだ。
焼き魚、煮魚、生は無理だった。色々と料理のやり方、作り方を教え、領民に浸透させようとしていた。
魚料理だけではなく、野菜を使った料理、肉料理、特に鶏肉を使い、品数を増やしていた。
「鳥と魚は安くて美味しんだよ。」
「魚って美味しいね。」
「ホント、おいしい。」
「うまっ。」
中々の繁盛だ。
「アレク様、お時間です。仕事の時間です。」
「やだなぁ今、仕事の最中だよ。仕事中。」
「その仕事ではありません。書類の仕事です。」
アレクは、引きずられながら連れていかれた。ズルズルーーーーずるーー。
「いやだぁぁぁ、食堂ごっこをまだやりたーーーい。」
カリーナ女爵それは、強者であった。
アレクは、水の都に建てた豪華な城に連れていかれた。
アレクは、最初喜んだ、仕事が減る。二人も代官が来たのだ、みんな仕事を振ってしまえば遊べると。
甘かった、浅はかだった。仕事量が増えてきたのだ。
今迄は、直臣6人がしょうがないですね。とやってくれていたのだ。ところが代官が来た途端、それが出来なくなっていた。直臣たちも仕事を振られて、忙しくなり出来なくなったのだ。
アレクは、書類を見ながら、考えていた。この状況は不味い、非常に不味い状況だ。
何か、対策が必要だ。これではサボれないじゃないか。
アレクは、真面目に考える、考える、考え抜く。 ピンときた。
アレクは威厳に満ちた姿で立ち上がり。カリーナ女爵に対し。
「カリーナ女爵。我は暫しの間、留守にする。我の代理を命ず。」
アレクは、逃げた。ガレオン号に飛び乗り。素早く離陸して飛び立っていった。
ガレオン号は、迷宮都市にいた。
だが、アレクの姿が無い。アレクは迷宮の最下層にいた。
何やら、作業をしている。
アレクは考え抜いて、自分がもう一人いれば仕事を任せてしまえる。と考えて迷宮まで来ていたが、無理だった。迷宮核は人間を造ることが出来ないのだ。
アレクは不思議に思い調べていく。迷宮核は魔物は造れるが人間は造れない。
人間は造れない、ではなく造らないなのだ。
知的生物、ある一定以上の知能を持つ生物は造らない様になっているのだ。
これは、この迷宮核のいた世界のセキュリティーなのかも知れない。
アレクは当てが外れた。困った。
迷宮核の情報を調べていく。並列思考、多重思考、脳内強化、細胞活性、思考停止、機能停止、絶対服従、補修機能、修繕機能、自己修復、作成機能、設計機能、通信機能、・・・・・」
「んん。」
「これ、生物はダメだけど機械なら大丈夫だね。」
アレクは以前に木人を作成した。その時は魔法陣で動かした。意思はない、簡単な作業のみしかできなかった。命令をしないと動かない。
迷宮核を更に調べる。 「出来る。」
だが、エネルギー源である魔力を莫大に消費する。迷宮都市で魔力の蓄積を行っている。溜まっている非常に多く溜まっている。迷宮が活動できる100年分は溜まっている。それでも10体しか創れない。
「機能を落とせばいいのか。」
アレクの指示により、迷宮核は作業を開始する。
アレクは、高性能本体を2体造る。その命令で動く個体を20体作成する。
この本体はアレク経由で迷宮核と繋げられるようになっていた。その代わりアレクの負担が大きくなる。魔力の消費と脳の負担だ。解決方法も迷宮核の中にあった。並列思考、多重思考、脳内強化、細胞活性、自己修復、通信機能だ。
アレクは、この問題を解決するために、自分の腹を切り裂いた。「ぐぅぅ、ぅぐぅ」 痛い。
そして迷宮核が新たに作り出した、迷宮核を腹の中に入れたのだ。その迷宮核は成長はしない。
正確には迷宮核ではない、迷宮核の末端だ。
アレクの腹の中の迷宮は、アレクの命令により、体中に各細胞機能を張り巡らしていった。
アレクは自分の腹の傷を治し、迷宮末端が馴染むまで眠りについた。
目を覚ましたのは2日後であった。
「そうか、こうやって魔力を取り込むのか。」
迷宮核の能力が使えるようになったアレクは、大気中にある魔力(魔素)を取り込めたのである。
アレクの周りには、22体の個体がいた。
2体は、人の形はしている人工物だ。無機質、表情が無いのだ。動きはなめらかな様だ。
他の20体の内、10体は2体と同じように創られているが、残り10体は完全な鎧姿である。戦闘個体なのだ。
アレクは22体を引き連れて、ガレオン号に乗り込み、水の都に向かうのであった。
水の都は大騒ぎであった。
アレクが逃亡したとなっていたのだ。
これには、オリオン家の家族たちまで駆けつけた。
その後に迷宮都市にガレオン号があるのが解かり、一安心したが逆に怒りに代わっていった。
迷宮都市にアレクが要るのが分かった、ハロルドとエレメルは公都に帰っていったが、マリアとイリアが残り、アレクの帰りを待ち構えていた。
アレクは自分が逃げだしたとは思っていない、カリーナ女爵に代行を任せたのだ。
ガレオン号が水の都に着陸する。