804話 タンドラ大陸の事
今、タンドラ大陸は熱かった。人々で溢れかえっている。カインの支配している南地域の港は、オーガ族を始め、多種多様な種族で溢れている。
「メメ様ーーー、お待ちください。」
メメといわれるオーガ族の娘は、ルドルフの妻である。3人の子持ちとは思えない程、幼く見える。
「あっパパーーーー。」
「メメーーーーっ。」
ルドルフとメメは熱い抱擁を交わしている。人目もはばからず、二人の世界に入っている。
「コホン。」
「あっ、ごめんね久しぶりだったから、へへへ。」
「ルドルフ様、お元気そうで何よりです。」
「おー、ゼゼも久しぶりだな、オーガ族を率いてきてくれたんだな。」
「はい。一族350人を連れてまいりました。他の種族も300から500を連れてきております。」
「おー助かるよ、ここは人手不足だからな。」
「あっパパー、お母様が子供30人にしろですって。」
「はぁぁぁ、さささ30人だぁぁぁー。」
「私頑張るよ。寝ないで頑張ろうね。」ニッコリ。
「・・・・・・う、う、うん。」
ルドルフはタンドラの王となる。その下にアレクの子であるファース、セカス、サース、メーサ、メーク、メーナの6人が各地の代表領主(王)となる予定である。
ルドルフの構想(アレク案)では、ルドルフを王として6人に各地を任せる。6人の下には貴族に指名した者達が配置される。
この案には母であるエレメルの意見が大きくかかわっていた。
エレメルによれば、王は忙しく、子供を作る暇がない。ルドルフにはゆったりした生活の中で王としての責務(子作り)を果たす事が重要だと、鼻の穴を膨らませて語ったのだ。
兄弟姉妹たちは母エレメルの意見をすべて受け入れていた。ルドルフ一人が何か喚いていたが誰一人聞き入れる者はいなかった。父であるハロルドでさえ、エレメルに従っていたからである。
だがハロルドはやはり父であった。騒ぐルドルフにボソッと「あきらめろ}と耳打ちしていた。
ルドルフはカインの支配地域であった南の港を王都と定めまずは屋敷の建設に入っていた。
「ルドルフ様。」
「おーファースたちか、お互い災難だったな。」
「何を言っているんです。俺たちは張り切っていますよ。こんなチャンスないですから。」
「えっそうなのか、いやいやだと思っていたんだが・・」
「そんなことないですよ。アレク父上からもルドルフ様の役に立てと言われています。」
「・・・それより、ファース木人と機人と連れてきたのだな。」
「はい、タンドラ大陸は人手不足ですから木人と機人が活躍できるでしょう。」
「俺は大事な責務があるから、政治には中々かかわる事が出来ない。お前たちに任せるから頼んだぞ。」
「「「「「「任せてください。」」」」」
「いや、少しは関わらせろ。絶対に係るぞ。」
「ルドルフ様、大丈夫ですよ、今だけですほとぼりが冷めたら大丈夫です。」
「そうだよな、ほとぼりが冷めれば大丈夫だよな。」ほっ。
淡い期待を抱いているルドルフであった。
タンドラ大陸の北の町では
「いやー、よかったなーー。」 アレク
「ホントだな。兄貴が全て背負ってくれたからな。」 レオン
「危なかったですよ、母上が子供20人なんて問題発言しましたからね。」
「俺は背中が汗でびっしょりだったぞ。」
「そうですよね。」
「アレク、俺もう行くぞ。」
「カイン兄、本当に行くんですか。」
「いくぞ、一度フロンティア大陸をこの目で見てみたいからな。」
「ですけど、オリオン会議で決まったんですよ。フロンティアには干渉しないって。」
「観光だよ観光。今フロンティアが熱いんだ。何かグンユウカッキョといって力と力のぶつかり合いがあるんだってよ。これを見なかったら男じゃないだろう。」
「アレク、カインは会議に参加していないから知らなかったで通すつもりなんだよ。なぁそうだろう。」
「ハハハ流石レオン兄貴だな。分かっているな。」
「知りませんよ。後で助けてくれといっても知りませんよ。」
「そんな事無いから安心しろよ。レッドと俺は神だからな。」
「余計心配なんですけど。」
カインとレッドはフロンティア大陸を目指して飛び立っていった。
「まぁアレク、カインは心配ないと思うぞ、あれで結構しっかりしているからな、それより兄貴の方とアース大陸だ。」
「アースは問題ないでしょう。マリア姉とイリア姉が仕切りますから。」
「俺の言いたいのはその事だ。マリアとイリアが仕切っているから強くなりすぎると言う事だ。」
「一人勝ちになると言う事ですか。」
「そうだ。アース、タンドラ、フロンティアと3つの大陸は力が拮抗してこそうまくいく。一つの大陸だけ強くなることは先々よくない。」
「それは分かりますけど。今更アースの力を落とすことは出来ませんよ。」
「そうなんだよな。タンドラの力が弱すぎなんだ。人も金もないこのタンドラにアースの商人たちが押しかけるぞ。今も続々とやってきているからな。下手したらすの植民地となるぞ。」
「大丈夫ですよ。その為のルドルフ兄ですから。」
レオンの危惧は当たっていた。アース大陸の貴族、商人たちは、己の欲望のままに支配地域以外を自治領として宣言したのだ。
誰も住んでいない土地を自身の領地としたのだ。だがタンドラは甘くなかった。不毛の地である土地には浄化前の魂が蔓延っているのだ。
各地で商人、貴族の被害が続出した。
「ルドルフ王はいるか、緊急事態だ。」
「陛下は、おりません。」
「合わせろ、緊急事態なのだ。」
「ルドルフ王国は平和です。何の問題もありません。」
「うっ、ワシはロード王国の伯爵位を持ち、このタンドラ大陸でも領地を持っている。ワシの領地に魔物が出たのだ。」
「それならばロード王国に救援を求めてはどうですか。ルドルフ王国とは関係ないでしょう。」
「うっだがだが、ルドルフ王国は隣なのだ。困っている領主を助ける事は道理だろう。」
「いいですか、伯爵。不毛の地をかってに領地として宣言しているのすよ、各国から通達があったはずです。撤退しろと。」
「うっ・・・・」
不毛の地で魂が暴れていた。人々が押し寄せた事で人に魂が集まって来たのだ。魂は人に集まる。
ファースはルドルフと話し合っていた。
「陛下、どうしますか。」
「どうも出来ないだろう。魂の浄化を急がすしかないだろう。」
「そうなんですが、中々進んでいません。」
「不毛の魂が多すぎるのだな。」
「はい。今生命の神が必死で働いていますが、発狂寸前です。見ていられない程です。」
「・・・・神も大変だな。あそこ迄働かなきゃいけないんだな。人間でよかっよ俺。」
「俺もそう思いますよ。神にしか出来ない事で神が一人ですからね。神は死なない、疲れないですから。24時間働いています。あれ見たら誰も神に成ろうと思いませんよ。」
「私は神です。・・生命の神です。・・神の所業です。・・・・神です・・・」




