80話
ローエム王国王都
王立魔法学校の設立式となった。
ローエム王国も張り切っているようだ。王国の家臣たちが、来賓たちを迎え入れ、にこやかに対応している。普段は偉そうにしている王国の家臣たちも今回の重要性を十分に理解をしているようだ。
「場所を王城にして正解だったね。普通じゃこの人数は入らないよ。」
「ルドルフ兄もお疲れさん。国中を飛び回っていたでしょう。」
「もう疲れたよ。レオンも王都で大変だと聞いたよ。」
二人で「ハーーー。」
「「あなた」」
「クリス」
「メアリー」
「「今回は大変だったね。」」
「まだ、これからですわよ。」
「え、そうなの」
「もしかして、お義母様の事かな。」
「そうですわ。」
王城で開かれた今回の魔法学校の設立式、異常に女性の人数が多いのである。
普段のローエム王国の式典などは当主のみの出席、或いは夫妻での出席である。今回は当主夫妻での出席がほとんどであった。その子供たちまで出席をしている者までいるようだ。
「始まりますわ。」
魔法学校の設立式は順調に進んでいった。
「それでは王立魔法学校、初代学長、カトリーヌ・ローエム国王妃のご挨拶です。」
「おおおおおおぉぉぉぉ。」
「・・・・・・・・・この魔法学校の設立に当たり・・・・・・・・・・」
そうこの、王立魔法学校の学長は、ローエム国王妃なのだ。それもおまけ付きだ。今回の魔法学校での貴族達の、利権争いは、もの凄い足の引っ張り合いになってしまった。貴族間で牽制し合い、皆が不適合と言い合って役職者の選出が出来なくなっていたのである。
困った国王と貴族の盟主たちは、相談してはいけない者に相談をしてしまった。エレメルに話を持っていってしまったのだ。
エレメルは、相談に乗りアドバイスをしていった。
国王、各盟主は確実な利権が確保できれば良いのかと。
国王たちは、自分たちの利権、派閥の利権を、誰も文句の言えない者に出来れば問題ないと答えた。
エレメルは、国王、各盟主達が、学長になり采配をすればよいといったが、国王たちはそれはできないのだ。自分たちが先頭に立てば、誰からも文句は出ない。だがこの者たちは偉すぎたのだ。貴族の中でも偉いのだ、他に仕事があり学長までできないのであった。
出来ないので、他に回してしまうようになったが、そこで貴族たちの牽制、罵り、足の引っ張り合いがあり、収拾が付かなくなっていた。
エレメルは、自分たちの利権を守り、意見を反映してくれる者、それは奥様たちだと伝える。
国王、各盟主達は考える。自分の妻なら誰からも文句は出ないだろう。
そして、利権も守れる、意見も反映できる。決定してしまった。
王立魔法学校、初代学長はカトリーヌ国王妃、そして、王立魔法学校〇〇〇校(各盟主の魔法学校)の学長も盟主の妻たちで決まったのだ。
そこからのエレメルの動きも速かった。エレメルは、貴族の妻たちを集めて話をしたのだ。
エレメルは貴族たちの利権を公平に分配をした。貴族の妻たちを通して夫を納得させ、きちんと利益が出るようにしたのだ。
貴族の利益ではなく、本当は妻たちの利益であったが、その時は誰も気づいていなかった。
こうして魔法学校の人事も決まり、学長を筆頭に学校理念に基づき運営をされていくのであった。
アレクの教育した教師たちも、各魔法学校に散らばっていった。それなりのポストに就き、重要な役割を果たしていくことになるだろう。
王立魔法学校の設立式も無事に終わり、祝賀パーティーが開かれていた。
「エレメル公王妃、此度の活躍は素晴らしいですわ。」
「これはカトリーヌ様、お恥ずかしいですわ。ほほ。」
実はこの二人仲がいい。社交の場の為、体裁を気にしてしゃべっているが、ずぶずぶな関係である。
ルドルフとクリスティーナの母親なのだ、知らないわけがない、仲がいいのだ。
エレメルとカトリーヌの二人が、貴族の妻たちをまとめ上げたのだ。ローエム国王妃とオリオン公王妃の二人がタッグを組み魔法学校を支配下に置いたのである。
二人の約束事として、大陸の北部はローエム王国、南部はオリオン公国が受け持ち学校教育を行う事だ。
二人には、強力なブレーンたちがいるマリア、イリア、クリス、メアリーを筆頭に優秀な妻女たちを各地に配属したのだ。
彼女たちは本気で国の事を考え、行動をしている。貴族の利益だけを追求するようなことはせず。国力の底上げを行なっているのだ。
レオンは女性たちに囲まれていた。
「レオン様、愛人はいりませんか。」
「レオン様、私を側室に。」
「レオン様・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
レオンは逃げ切った。やっとの思いで逃げてきた。ホッとした所にメアリーが声をかけてきた。
「レオン、モテモテだったみたいね。」
「嫌味を言うなよ、やっと逃げれたんだ。」
「そうね、ごめんね。」
二人は、他の貴族達に挨拶をしていく。
「これはこれは、オリオン大使ご夫妻ではありませんか。」
「お久しぶりです。ダルト大使。」
「レオン殿、ご相談がありましてな。少しお時間をいただきたい。」
「メアリー、大使夫人のお相手を頼むよ。」
「分かったわ。大使夫人、一緒にお話をしましょう。」
「ありがとう、あまりなれていないので困っていたの。宜しくね。」
レオンとダルトは、別室に移り話を始める。
「どうしました、ダルト殿。」
「実は、わが国にも魔法学校の設立を、お願いできないかと思いまして。」
「まぁ、そうでしょうね。」
「ダルト殿のイングリット王国とローエム王国は友好関係にありますが、私はオリオン公国の大使として今、ダルト殿と話をしていますが、オリオン公国としてでよろしいか。」
「イングリット王国は、ローエム王国とオリオン公国の両国と話がしたい。」
「魔法学校の設立なら、ローエム王国との話で十分だと思うのですが、なぜオリオン公国なのですか。」
「魔法を学ぶのなら、オリオン公国でしょう。お判りでしょう。」
レオンは悩む。この問題は不味い、ローエム王国との関係を悪くする。
「私は、魔法学校とは関わっていませんので、即答しかねます。」
「いや、即答は期待しておりません、イングリット王国は、オリオン公国と良い関係を築きたいのです。」
「そうですか、オリオン公国としても良好な関係は大事に思います。」
二人は表面上の話しかしなかった。
レオンは、イングリット王国がローエム王国にも、何か言っていると確信している。イングリット王国はローエム王国が、これ以上の大国となることを警戒しているのだ。ローエム王国とオリオン公国との関係を少しでも崩したいのだ。
魔法学校の件で、ローエム王国に楔を打ち込んできたのだろう。
レオンは、イングリット王国の考えが分からない、敵対か味方でいたいのかを見極める。これは少し厄介かもと思う。オリオン公国としての対応を考えるべきと思い、少し揺さぶるように話をする。
「ダルト殿は魔法を使えますか。」
「ええ、私も、魔通機で使えるようになりましたが、中々魔法とは難しいですな。」
「そうだ、ローエム王国と合同で一度話し合いますか。」
「それでもいいですが、最初にオリオン公国と魔法についての話をしたいですな。」
「そうですか、では改めて時間を取りましょう。」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・」
レオンとダルトは部屋を出て、パーティーに戻っていった。
パーティーも大成功に終わった。