8話 父ハロルド魔法使いになる
家族会議
ハロルド一行は、無事にオリオン領まで帰ってきた。
「母上、ただいま帰りました。」
「王都は、どうでしたか無事終わりましたか」
「えぇ、予定通りにいきました」
「アレク坊、予定外ばっかりでしたよ」
アレクにはそんな声は聞こえない。
「母上にお土産を買ってきました」
「アレク、俺(私)にはお土産は?」
「もちろん、きちんと買ってきましたよ」
「中で渡しますから、家に入りましょう」
ちなみにハロルドは、お土産を買うのを忘れていた。
これはハロルド一人を責められない。お土産を買う時間さえなくさせたのはアレクのせいである。
でもアレクは知らない。自分がお土産を買えたのだから、父も買う時間があったはずだと。
オリオン一家にこの後、衝撃の事実が告げられるのをまだ知らない。
ハロルドパパ、がんばれ。
お土産争奪戦が終わり、落ち着きを取り戻したころ、一人だけの敗者、ハロルドが魔法が使えるようになったと告げたのである。
ハロルドは、魔力の練り込みはうまくいってないが、魔力を循環できるようになり、まだ不完全だが身体強化ができるようになっていた。
母、兄、姉、みんなびっくり、言葉がでない。
それはそうだろう、魔法使いなど稀なのだから。
アレクは説明する。
魔法は誰でも使える。
使える内容は人による。
魔力の循環が出来れば魔法が使える。
魔力の練り込みは時間がかかる、すぐには出来ない。
魔法使いは、イメージが大事。
等々の説明をしながら、自分の魔力を感じないと話にならない。
アレクは家族に短剣を向けて、ごめんねと言いながら少し深めに傷をつけて、魔力を感知しやすいように魔力を流す。
やはり家族全員に魔力があった。
当分の間、魔力循環の練習をする。
魔力循環ができると魔力の通りがよくなり、魔力が多少濃くなる。
魔力循環が出来るようになったら、次の段階に移る。
魔法の件は、当分の間家族だけの秘密とした。
話が終わると、みんなそそくさと部屋に戻っていった。たぶん練習するのだろう。
翌日
アレク、リック、マック、ユリの4人が話をしているようだ。
「俺たち、なんの仕事するんだ」
「まず、勉強してもらう。勉強は僕が教えるよ」
「「「「 えぇぇぇ 」」」」
「もちろん、剣、槍、弓の練習もやってもらうよ。訓練は従士と一緒にやるからね」
「毎日、午前中は勉強で午後は訓練でいくよ」
仕事って勉強なのかと、ガックリしてるリックとマックをユリが慰めている。ユリは勉強大好きみたいだ。
まずはそろばんを、出来るようになろう。
アレクはそろばんの動かし方、計算のやり方を丁寧に教えていく。
「あっ、時間だね。訓練場まで案内するから」
「じゃぁ、訓練がんばってね」
アレクは一言いって、去っていった。
リック、マック、ユリは唖然として、見送っていたが、従士長のデリックが声をかけてきた。
「アレク坊の行動を気にすんな。」
「訓練を始めるぞ。まずは走れ」
リックたちの地獄の訓練がはじまった。
そのころアレクは山を、疾走していた。いや逃げていた。
ビッグボアに追いかけられているのだ。
アレクは山の調査をしていたところ、ビッグボアの縄張りに入ってしまい。
追いかけまわされているのだ。
「しつこいな」
「しょうがない、倒すか」
アレクは右へ左へと逃げながら、見通しのよい場所を探す。
広場になっている場所を目指し、誘導していく。
広場に入ったところで、一気に加速してビッグボアを引き離し、100メーターぐらい離したところで
、ビッグボアに向きを変え、人差し指をビッグボアに向ける。
「バン」指の先から魔力弾が飛び出し、ビッグボアの眉間に突き刺さる。
ビッグボアは、2,30メーター走ったところで前のめりに一回転して倒れた。
指を口に近づけて、ふーっと息を吹きかけるアレク。
この仕草前世の名残なのか、今時そんな仕草をする奴はいない。ちなみに「バン」という音は、アレクが自分で言っていた。何十年前の西部劇か。
アレクは、ビッグボアにマジックバッグを近付けると、すっとビッグボアが消えた。
マジックバッグ便利すぎる。
アレクは、肉だー、肉だーにっくだーと騒ぎながら村へ走って行った。