784話 死の騎士団
死の騎士団、それは大陸中央最強騎士団である。正式名中央騎士団。自称 死の騎士団である。
この死の騎士団は、最強と言われるゆえんは大陸中央が一番偉いからである。中央を支配するゲルググの騎士団であるからであった。そのために死の騎士団員たちは一度も戦ったことが無いのである。
誰も死の騎士団に喧嘩を吹っ掛ける者がいなかったのである。
「我らはこれからドラゴンに挑む。我が死の騎士団は最強だ。」
「「「「「おおおおおおーーーー。」」」」」
都市の中央に聳え立つ城から死の騎士団が豪華な鎧と共に出陣していく。騎士団総勢100騎である。
騎士団団長は感激していた。初めての出陣初めての戦闘である。今までの辛い訓練をさせたことが頭に浮かんでくる。
嫌がる邪気たちを無理やり走らせ。鍛えてきたのだ。
もし自分が訓練を行っていたら。1時間で逃げ出していたであろう。それを毎日団員たちに課していたのである。
(我が死の騎士団は最強だ。何しろ一日2時間走り込み(ちんたら走って15キロ)死剣流の訓練(団長の我流)をやってきたのだ。負ける要素など一片もないな。フフフこれで我は中央最強騎士団の永久団長だな。)
死の騎士団は、レッドドラゴンの前面に到達していた。
「これよりドラゴンに突撃をする。いけーーー。」
団長の掛け声とともに死の騎士団員たちは馬を走らせる、だがドラゴンを目の前に馬がビビりみんな脇にそれていく。実際は馬も騎士たちもビビって脇にそれていっていた。
「だ団長、馬が言う事を聞きません。完全にこの馬ビビっています。」
団員の一言で騎士団員たちもみんな同じように名俳優のような演技で逃げていく。
それは仕方のない事であった。初めての戦闘が狂暴最強なドラゴンである。これが同じ大きさの戦いであれば違っていたのだろうが、蟻と像、羽虫と人間ほどの違いである。ビビるなという方が難しいのであった。
「ヌググググ、我が騎士団が馬ごときに勝利を邪魔されるとは、ヌグググ。」
「ねぇカイン、あれって何かな、陽動作戦的なものかなー。」
「んーわからん。だけど攻撃の意思はないな。」
「だよね、闘志が全くないもんねー。」
「あれは多分陽動だな、どこかに兵がい潜んでいるな。」
「だよね、あれならさっきの門兵の方が強いもんね。」
そう兵は潜んでいた。レットが侵入した方向とは別の門兵たちがレッドを攻撃するために駆けつけていたのだ。
「放てー。」
ドッカーーーン。
レッドめがけて魔法が放たれる。それは複合魔法であった。同時には放たれた各種魔法が絡み合い。混ざったのであった。
それはレッドにかすり傷を負われるものであった。
「あああああ、僕の鱗に傷がついたーーー。」
「大丈夫だよレッド、それ煤だからな。拭けば落ちるぞ。」
「そうだった僕の鱗に傷なんかつくはずないもんね。デヘヘヘ。」
レッドは布を取り出し自分の鱗をごしごしと擦っている。
「なな何なんだ、あれは化物か。俺達の最強攻撃に付いたのは煤だと。」
「隊長、あれは化物であり、ドラゴンです。それも凶暴なレットドラゴンですよ。」
「てっ撤退だー。」
門兵たちは隠れながら撤退していった。だが撤退できないものがいた。
それは死の騎士団団長である。騎士団長はゲルググの命令は絶対である。レッドドラゴンに傷を負わせるという任務があるのだ。
団長は、自分を奮い立たせていく。
(最強だ、最強だ、我に敵う者なし、我は最強だ、最強だ・・・・・・)
自己暗示が効いたのか団長は自身に満ち溢れていた。
「ドラゴンよ。一騎打ちを申し込む。」
「・・・・・・」
「どうしたドラゴンよ、ビビって返事も出来ないのか。」
「・・・・・・」
団長は調子に乗って来ていた。自分が一騎打ちを申し込みドラゴンがビビって返事も出来ないのだ。
(最強って最高だーーーー)
「フン、ザコドラゴンが行くぞーーうおおおおおお」
団長は馬をけり、ドラゴンに向かっていく。
対するレッドは、一生懸命に鱗を拭いていたために全く聞いていなかった。
まぁ聞いていなくとも何の問題にもならないだろう。
団長の馬は考えていたどうやって団長を振り落として逃げるかを考えていたのである。
馬も馬鹿ではない、邪気たちよりよほど優れているのだ。敵わない相手に突撃するほど野生の感が鈍いわけではないのである。
「いいぞ、いいぞ、我が死馬よ。」
団長はレッドがビビっていると思っていた。何しろドラゴンはずっと下を向いていたのだ。団長の迫力にドラゴンはビビっていると思っても仕方のない事なのかは分からないが、誤解している事だけは間違いがない。
「カイン見て見てこの鱗の輝き。」
レッドはどうだ。というポーズを取る。そこで気づいた汚れのついた布を持ったままではポーズが決まらないのだ。ポイっと布を放り投げた。その布は、ひらひらと飛んでいく、そして偶然にも(お約束)団長が走り込んできたのであった。
布はかなりの大きさである、ドラゴンのハンカチである、キングサイズのベッドほどのおおきさがあった。
そんな布がもし高速で走る邪気に当たってしまった大変な事故になってしまうだろう。お約束どうりに団長の顔に絡まっていく。
死馬は、必死だった。何とか生還しなければならない、此の侭では確実に死んでしまう。その時布が死馬めがけて飛んできていた。死馬は首を下げて避ける。その時、馬上の団長は英雄となる想像の世界の住人であった。
「うおおおおおおお、ななな何なんだーーーー。」
ゴキッ。
見事に布にからめとられた団長は空中を飛んでいた。そして落下(落馬)したのだ。頭たら落ちた団長は首の骨を折ってしまった。
即死であった。
「レッド綺麗になったな。」
「へへへ。」
遠目で見ていた者達は、死の騎士団団長の雄姿に皆感激していた。団長の独りよがりの演説を信じていたのだ。
団長にドラゴンがビビった。勝負を避けたと都合の良い解釈をしていた。
「団長の仇を撃つぞ。」
一人の青年騎士が掛声を上げる。
「そうだな、訓練して頑張ろう。もっと強くなったらな。」
「訓練頑張ろうぜ。」
「強くなったら仇打とうぜ。」
「だよなー。」
逃げていった死の騎士団員たちは訓練をする事を誓い合っていた。
「違うだろう。ドラゴンに特攻しないか。」
「勝てる訳ないだろうが、新米がーーー。」
「新米は黙っていろー。」
「いずれゲルググ様が仇を取ってくれる。それまで俺達は訓練して強くなっていればいいんだ。」
「そうだな、それまでに強くなっていればいいんだよな。」
「「「「「そうだそうだ。」」」」」」
「・・・・」




