780話 開発は進む?
「ジン隊長、それは本当ですか。信じられない。」
「うちの王様は戦闘狂なんだよ。戦大好きなんだ。」
「一国の王がそれでいいんですか。」
「いいんだよ、それで無敗なんだからな。」
フリードリッヒはジン隊長の話が信じられなかった。アレク王とカイン王の二人が戦闘狂であり。アース大陸を支配する大国の王であると言う事。そして自ら最前線に立ち戦闘を行なっていると言う事実にである。
「この砦もいずれは町になるぞ。保護している人々をいずれ住まわせる予定だ。どうだここに住むか。」
フリードリッヒは言葉に詰まってしまった。いい話過ぎるからだ。これまで自分たちを助ける存在はなかった。それが突然やってきた自分たちを温かく迎え、砦内に住む事を進めてきているのである。
「なぜそれほどの厚遇をしてくれるのですか。」
「え、あー、いやー実は出世争いだな。」
「はぁぁ。」
「あのな、ここタンドラ大陸にきている兵士たちは、みんな出世を望んでこの地にきているんだ。生き残れば出世間違いなしだ。俺たちは砦の警備の他に保護が任務となっている。そして保護した者達を独り立ちさせて村を任せる。その村は俺の領地となる訳だな。アハハハハ。」
「はぁぁ、それで言葉をしゃべれる我々は貴重という事ですか。」
「そうだ、言葉をきちんと理解している。」
それからも数時間にわたり話し合いがなされた。
隊長のジンが必死だったことも有るが、フリードリッヒも興味を引いていた。
だがこの100数十人という言葉をしゃべれる者達が問題となってしまった。
今現在開発中の村々で取り合いとなってしまったのだ。この砦も兵士たちが自慢してしまったのだ。
それはアレクに迄話が行く事となった。
「それで、砦に保護した者達を各砦の責任者同士で取り合いになったという訳か。」
「さようです、今開発に必要な人員確保は緊急課題です。各砦の隊長たちはいずれ自分たちの領地となる村に送り込む人員を取り合っております。」
「ハーーーー、そんな事俺が知った事か。」
「陛下、それを采配する事が陛下の仕事です。」
「保護した者が優先だろう。」
「普通はそうなります。ですが今回は人数が多く、人手不足です。一か所に置く事はデメリットしかありません。各砦の隊長もそこを付いてきています。」
こうして各砦の隊長20人がアレクの前に跪いている。
「面を上げよ。」
「「「「はっ。」」」」
「話は聞いている。ジン隊長の保護した132人だったか。通常ならばジン隊長の町に住む事になるだろう。」
「陛下。」
アレクは手で言葉を制す。
「まて、いいか今は各地を開発途中だ。人出はどこも欲しい。それは分かる。ジン隊長。所属はジン隊長の所とするが、各地に派遣してもらおう。その分の費用はオリオン王国が出そう。どうだ。」
「はっ、陛下の御心のままに。」
ハー、疲れたなんで俺がこんな裁きをしなければいけないんだ。砦だぞ戦争の最前線だぞ。戦う場所だぞ。
ブツブツとアレクは独り言を言いながら歩いている。
そう砦とは戦争の最前線にある施設なのだ。それが今は開発の為に施設となってしまっているのであった。それは邪気との戦争行為が落ち着いているせいもある。
邪気たちはアレクとカイン勢力に対して攻撃を控えているのだ。
「陛下お疲れ様です。」
「フン、最近こんな事ばかりだな。」
「そう長くは続かないでしょう。邪気も戦力の再編成でもしているのでしょう。そのうちまた攻めてきます。」
「嗚呼そうだな、今は開発に力を入れなければな。そうだ地下都市の物資はどうだ。」
「はい、かなりの高級品です。アース大陸では高額で取引されています。」
「だろうな、1000年進んだ世界の物だからな。」
その頃地下都市の騎士爵となったセンスは
「うおおおおおおおおおお。とやぁぁぁぁ。」
「お見事。」
「任せろよ。こんな岩ちょちょいのちょいだ。」
センスは煽てれていた。
地下開発の命を受けたセンスは家臣と領民たちを地下に移動させていた。地下都市の周りを開発するためである。
「センス閣下。」
フニャ、ニヤニヤ。
「な何かな。」
センスは閣下と言われるたびににやけ顔となっていた。まだなれない事もあるが嬉しくて顔がにやけてしまうのである。
「閣下、いいですかこの開発はオリオン王国の将来がかかっているのです。もっと真面目にやってください。」
「ややっているだろう。」
「やっておません。」
「ぐっぅ。」
「今日は、上から商人の一団が見学に参ります。早くお着換えください。」
「あっそうだった。平服でいいかな。」
「何を言っているのですか、軍服ですよ、軍服。閣下は一応軍人なのですよ。」
「あっそうだった。村長かと思ったよ。アハハハハ。」
センスは騎士爵である、領地を持つタンドラ大陸の貴族となっている。だがオリオン王国の軍人なのであるのだ。貴族と軍人オリオン王国では軍人が優先される。
「センス騎士爵様、ご機嫌麗しゅうございます。」
「よく来たな。こんな地下迄大変だってであろう。」
「いいえとんでもございません、我ら商人は例え地の底、水の底でもどこにでも行きます。」
「そうだったな、今回は交易品の輸送だな。」
「はい、前回の交易品はかなりの高額で取引されました。今は3日に一度の輸送ですがこれを2日に一度に増やして頂きたく参りました。」
「2日かに一便か、今の輸送船では無理だな。」
「オリオン王国に打診していただけませんか。」
「無理だろう。戦争に船を使っているんだ。交易にこれ以上船を回す事は出来ないだろうな。」
「・・・・・・・センス騎士爵様そこを何とかなりませんでしょうか。」
「お前たちが今回の様に此処までくればいいだろう。そうすれば取引は出来るぞ。」
「・・・・・」
それにはかなりの無理があった。現在この地下迄来ることは中々出来ないのだ。センスの預かる貨物船と小型艦のみがこの地下都市唯一の交通手段であった。
「とはいえ、無理だな。お前たちはマジックバックを持っているだろう。それを交易に使え。」
「「「「「おおおおおお」」」」」
「そうでした。我らはマジックバックを持っておりました。忘れておりました。」
「俺に貸し出されている。物もある。地上に上がる時はここの交易品を上にあげてくれ、下にもぐる時は物資を持って来てくれ。」
「お任せください。閣下。」
「うむ頼むぞ。」ニヤニヤ
センス騎士爵は、新米貴族である。何とか威厳を出そうと毎日努力しているのだ。この商人とのやり取りも実は商人が煽てるためにやっているのだ。センスに華を持たせようと商人たちがセンスを会話で誘導してるのだ。商人たちはこの地下都市を重要施設と位置付けている。タンドラ大陸最大の交易施設としているのである。
新米領主を煽てもてはやすぐらい商人にとって造作の無い事であった。




