769話 エルフの隠里
タンドラ大陸、南地域は混沌としていた。
邪気同士の争い、カイン勢力、家畜達の逃亡とトップ不在という状況が続き、無政府状態となっている。
「カイン、これ如何すんの。」
「んー、どうしようかレッド。」
「南地域を纏めないと不味いね。」
「そうだな、邪気も減ってきているし簡単だろう。」
「カイン、敵を倒すのは簡単だけど、その後だよ。誰が仕切るかだね。」
「新しく来ている文官でいいだろう。」
「あー、あのベータだっけ。よく頑張っているよね。」
「俺の目は確かなんだよ。へへへ。」
「たまたまでしょうカイン。」
「うっ。」
この南地域で唯一平穏な場所である、カインの支配地域である。邪気たちもカインの支配地域には近づく事はしない。負ける戦いをしないのが邪気なのである。
「レッド、それより一狩り行こうぜ。」
「そうだね、考えても仕方ないよねー。」
カインとレッドは考える事を放棄した。
家臣が何とかしてくれると思っているのである。それは正解であるが、ダメ国王の烙印を押されることになるのだ。
カインはレッドの背に乗り優雅に大空を飛んでいる。今日の狩場を探しているのである。このところレッドの姿を見ると邪気たちは森や林の中に隠れてしまうのである。見つかれば殺されるからだ。
そんな南地域で家畜として扱われていた者達の集団がいた。総勢30人ほどの人間、エルフ、獣人達である。
この者達は、邪気の支配地域から逃げてきたのである。邪気同士の殺し合いで殺されそうになり仕方なくん逃げ出したのであった。元家畜達は生活するすべを知らない。食べる物もなく、飲み水もなく彷徨っていた。
集団は、木の皮を食べて凌ぎ、獲物を探し回っていた。そんな集団も1,2か月もすると慣れてきていった。意思疎通が重要であるために独自の掛け声や合図を開発していっていた。
連携も取れるようになり、野兎やネズミなどの小動物は罠や石槍で獲得する事も出来るようになっていた。
「エルフ、いた。」
「仲間?」
「分からない。」
集団は森の中を進んでいくと村が見えてきた。集団は警戒する。村は邪気が支配する物と思っていたからである。ところがそこには邪気は一人もいなかった。エルフの隠里である。
集団の中にエルフがいた事で惑わされず森を向けていたのである。
「止まれーーー。」
突然の大声に怯える集団
「お前たちは何処から来たのだ。」
「俺、家畜、逃げた。」
片言の言葉にエルフ達は困惑する。
「中隊長、こいつ等邪気の農場から逃げて来たんだろう。」
「そうなると追ってがくるかもな。」
「中隊長、俺が小隊を率いてみてくる。」
「頼む、2小隊連れて行ってくれ、2日進んで戻って来てくれ。」
「分かった。」
中隊長は、集団を村の入り口で待機させる。
「長、邪気から逃げて来た者達が30人ほど来ました。」
「またか。」
そうこの隠里には、逃げて来た人間たちが保護されているのである。その人数は100人を超えていた。
「長、どうしますか、もう受け入れは難しいですよ。」
「保護するしかあるまい。この場所を知ってしまったのだ。」
「了解しました。とりあえずは村の外で生活させます。」
「うむ。」
この隠里は、タンドラ大陸が邪気たちに支配される前からあった。世界大戦などの戦に嫌気がさした者達が、隠れ住んで出来たものである。エルフの力を使い、森の中で分からないように村を作っていった。
エルフの長は、通信機に向かっていた。大昔の遺物である。隠里を作った先代たちの残した遺物である。世界各地にエルフの隠里が存在している。エルフ達の中で定期的にやり取りが行われているのである。
長は、タンドラ大陸内のある。もう一つの里へと連絡を取ったのだ。
その里にはまだ人が逃げてきていなかった。
「なんでこの場所ばかりに人がくるんじゃ。」
長の愚痴はもっともであった。タンドラ大陸内で南の地域は大混乱となっている為である。
ドッコーーーーン。
そんな長の愚痴も外の騒ぎで中断された。
「長大変です。ドラゴンが降ってきました。」
「ハぁぁぁぁ。ドラゴンが降ってきたぁぁぁ。」
隠れ里にレットが墜落してきたのだ。
「レッドーー、大丈夫か、死ぬなよ。生きているかー。」
カインがレッドに叫んでいる。
「生きてるよ。カイン。びっくりしたねーーー。」
「何だったんだあれ?」
そうレッドとカインは優雅に空を飛んでいた。その時天から稲妻が直撃したのだ。一瞬心臓が止まるほどの衝撃を受けたレッドは気を失い墜落してしまったのだ。丈夫なドラゴンであった為に無事であったが、普通の者であれば確実に死んでいただろう。
「あれ此処どこ。」
キョロキョロするレッドとカインである。
周りにはエルフが武器を持ち睨んでいる。
「おーエルフの村か。俺はカインだ。宜しくな。」
「「「「「・・・・・・・」」」」」
警戒するエルフ達である。ドラゴンがいるためにかなり警戒している。万一ドラゴンが暴れてしまえばこんな村一つ壊滅してしまうからだ。
「このエルフの里の長だ。何しにこの地に来たのだ。」
「あーー、わりーな。ただの墜落だ。すぐに出ていく。」
頭をポリポリとしながらカインは答えていた。
「ドラゴンが墜落するほどの攻撃を食らったのか・・・」
ザワザワザワ
カインは、突然の雷で墜落したことを告げていく。
「そうだったのか、災難だったな。ここの里の事は、秘密なのじゃ。タンドラでは邪気たちが支配しているからな。」
「あーーそれは分かっている。俺の町はもう邪気がいないから心配すんなよ。」
長はカインの言葉に驚きを現した。邪気に支配されていない町がある事に驚いたのだ。
「その町は何処にある。」
「んーー、南の港町だ。」
カインは地図を見せて指さしている。
長はカインに逃げて生きた人間たちの受け入れを頼んだのであった。
「いいぞ、どうせみんな解放するつもりだからな。引き受けるぞ。」
快諾するカインであったが苦労するのは家臣たちである。
それからカインとレッドは港町に戻り再びエルフの隠里へ戻ってきたのだ。マジックバックに食料満載、酒満載で戻ってきたのであった。
「おーーい、食料持って来たぞ。酒もあるぞー。」
「「「「「おおおおおお。」」」」」
そしてエルフの隠里は宴会に入っていった。
 




