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767話 邪気たちの混乱

「アレク様、タンドラ中央で、争いが発生したようです。」


それは、タンドラ大陸ではありえない事であった。タンドラ大陸は邪気と戯れが完全に支配している地域であった。アレクとカインの異分子が乱入したことで、北と南は混乱しているが、それ以外はいたって平穏であった。それが争いが起きる事等ありえない話である。


「どうして争いだと分かったのだ。」

「はい、上空からの監視です。監視船が中央付近を航行中に対峙する軍を発見しました。対峙する軍はすぐに戦闘に入りました。勝った軍はそのまま進軍して中央地域の町を支配したようです。」

「邪気対邪気の戦という事か。」

「はいそのようです。」


アレクは今までそんな報告を聞いた事がなかった。タンドラ大陸では邪気と戯れが支配している。その為に邪気同士での争いは起こらないと思っていた。

それが今回争いが起こったのである。これがアレク達が影響しているのかは分からない。

だが一つの切っ掛けにはなる。



「もう少し調査をしてくれ。邪気が争っているのならば、そのすきを突く。」


この争いははカインが関係していた。カインが南の地域で暴れた事で南に討伐軍が組織された。その討伐軍が敗れた事が原因であった。

西のシャーが戦死、南のジャドウも戦死となった。そして西と南の残兵は各地で食料を強奪していったのである。

邪気たちは、少し変わった形で支配されていた。支配しているトップが死亡すると混乱してしまうのである。トップとパスで繋がっているのである。そのパスが切れるのだ。パスが切れると今まで抑えられていた邪気の本性が見えてくる。邪気たちは欲望のままに行動するようになってしまったのである。


腹が減れば奪って食べる。女がいれば犯す。


タンドラ大陸で一番栄えている地域は中央である。この中央地域は人、物、金とすべてが集まっているのである。

狂った邪気たちは中央へ行けばすべてが手に入る事を知っている。西と南の邪気たちは皆中央へと向かっていったのである。



タンドラ中央


「ゲルググ様、西の邪気は撃退しました。ですが続々と中央を目指して寄ってきております。」

「フン、あのシャーが敗れるとはな。信じられんな。」

「事実でございます。シャー様は古代兵器の第一人者でございました。」

「あのようながらくたが役に立つ物か、それより南の邪気どもの討伐軍はどうなっておるのだ。」

「はい、この中央より5000の討伐軍を出陣させました。もうすぐ知らせが届くはずです。ですが本当によろしいのでしょうか。邪気に南の地域を任せるのですか。」

「いいのだ、我ら戯れがすべてを支配している。南の一地域を邪気が支配しても問題ない。邪気どもは大いに張り切っているようではないか。」

「はいそれはもう物凄い張り切りようです。南の地域一帯の支配権です。統率が取れなくなるほどでした。」

「欲望の邪気か、下等生物が。」



中央から南地域に向かった邪気の討伐軍は南地域に入ると一気に心が解放された。南地域の支配許可が下りた事で一歩南に入った瞬間、邪気の欲望が目覚めたのである。もうそれは誰にも止める事が出来ない者であった。邪気同士の殺し合いが始まったのだ。


南地域は、各小勢力に別れ戦国時代の様になっていた。元々の南勢力と中中からの勢力が各少数に別れ乱戦状態となったのである。


「おりゃー死ねー。」

「殺すぞーー。」

「此処は、ドロニーの支配地域だ。死ねーー。」


タンドラ独自の支配体系である。パスで繋ぎ支配していく。支配された邪気はトップに従うのである。

その為に常にトップが狙われるのであった。トップが死ねば支配された邪気たちは解放される。自分がトップになる事も出来るのだ。負ければ支配され勝てばトップになれるのであった。

それはもう大混戦である。日ごとに入れ替わるトップ争いである。


南地域では邪気が激減していった。毎日の殺し合いで邪気が死んで往ったためである。


これには中央のゲルググも計算外であった。中央の思惑では、邪気同士が戦い誰かが勝者となる予定であった。だが南地域では、勝者なき戦いとなってしまった。たとえ一人の邪気が勝っても他の邪気が生き残っていない状態となってしまうのである。



「まさか、これほどの馬鹿とは思わなかったぞ。」

「真でございます。ゲルググ様。」

「邪気同士でいなくなるまで殺しあうなど、ありえん。」

「南地域ですが、混乱状態です。ドラゴンも動く気配がありません。ここは中央との境に軍を駐留させ様子を見てはどうでしょうか。」

「そうだな、軍1万を張り付かせろ。」



その頃南のいるカイン達は


「どうなっているんだ。邪気同士で戦争しているぞ。」

「カイン、空から見て来たけど、酷いよ。みんな争っているよ。」

「マジか、俺たちも参戦するか。」

「カインそれはやめた方がいいよ。今参戦すると敵が纏まってしまうからね。カインを共通の敵としてしまったら大変でしょう。」

「そうだった。ここは静観しよう。その間にアレクと連絡とって内政やっても貰わないとな。」

「あーー、それいい考えだね。そして僕たちは戦いに身を投じるんだね。」

「そうだレッド、俺たちは戦いの中でこそ輝くんだ。」


カインとレッドはいつもの通りであった。近くで聞いている者達は大きなため息を吐いていた。


「「「「はーーーーーー」」」」


そんな南の港にドラゴンたちが戻ってきていた。新たな物資部隊を引き連れて戻ってきたのだ。


そして急速にカインの南の港地域は安定していく。

オリオン王国とカイン王国の文官たちは優秀であった。国王たちがいい加減である為に文官が優秀なのである。特にカイン王国の文官たちの地位は高い、オリオン王国の文官より出世が早いと言われているのだ。

それはカイン王国の事情でもある。アース北部に建国したカイン王国は文字の読書きの出来る人数が極端に少ないのだ。読書き出来れば役人になれ、計算でも出来ればそれはもう上級役人として雇われるほどであった。


「カイン様ーー、食料持ってきましたーー。」

「おーーありがとな。」


カインは名も知らない家臣に気軽に答えている。知ったかぶりともいう。


「カイン様、これが報告者です。」

「おう、ありがとな。ここまで大変だったろう。すぐに帰るのか。」

「え、あっ、いいえ、この地に残って領主を目指します。領主募集の広告で応募しました。」

「そうなのか、ならこの港を頼む。」


「えっ。」


軽い感じのカインにかたまる。一人の少年であった。

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