766話 クリアの野望
リザードは冒険者を襲っていた。
そこに獣人達が飛び込んできた。リザードは完全に不意を突かれた形になり、獣人に殴り飛ばされた。
「そこだ、一気にやっつけろー。」
ジュンは倒されたたリザードに斬りかかる。夢中であった。
まさか自分がリザードに一撃を入れるとは思ってもいなかった。
ジュンのパーティーでリザードをタコ殴りしている。
「やー。」
「おりゃー、」
「とーーーっ。」
「そりゃー。」
「やったどーーーー。」
「「「おおーーーー」」」
リザードを倒したことで優越感に浸っていたジュンであったが、すぐに正気に戻る。
「大丈夫ですか。」
倒れている冒険者に駆け寄るジュン。
「まだ生きているぞ、すぐに外へ運ぶよ。」
ジュンは倒れている3人の冒険者を外へと運ぼうとしている。ジュンが一人を担ごうとしたが倒れている冒険者の方が大柄で担ぐ事が出来なかった。シュンとするジュンを置いて獣人達が担ぎ出していた。後をついていくジュンであった。
ここでまたジュンが手柄を上げたのだ。迷宮内で冒険者を救ったのである。
1層という低層にリザードのような強い魔物が出たのだ。それを領主が退治したのである。迷宮村はもう大騒ぎとなってしまった。
「ジュンさまーーー。」
「キャーーー。」
ジュンは治療院まで傷ついた冒険者たちを運び治療させていた。
「ジュン様。」
「あっクリアさん。」
「お手柄です。ジュン様は英雄です。」
弱いジュンはどんどん誤解されていく。
リザードを事実上倒したのは獣人達である。パーティーリーダーはジュンであるがゴブリンを倒せる程度の強さしかないのである。
クリアはジュンを英雄にしたかったのだ。丁度良くリザードが低層で暴れた。それをジュンが倒したのである。この事実を使わない手は無かった。
ジュンが英雄となれば噂になり遠いアースからもジャンジャン人がやってくるはずである。
クリアは、アレクへの報告も欠かさない。誇大報告は絶対にしないのだ。これはクリアの先輩からの申し伝えである。
誇大報告をすると出世できないと言われているからである。
事実だけを客観的目線で報告書かき上げるクリアであった。
「よし、これで領主へ一歩近づいたな。」
数日後
迷宮の出入り口で大きな歓声が上がった。
「「「「「うおおおおおおおおお」」」」」」
「黄金だーーーーー。」
「黄金が出たぞーーーー。」
それは迷宮内で金が出たのであった。
金はいつの時代どんな場所でも価値がある。
この噂は一気に広がっていった。
数日後には迷宮の周りにはテント村が出来上がっていた。それまでは北の村から通いで訪れる冒険者が多かったが、金が出た事により1分でも長く迷宮に潜っていようとテントで暮らし始めたのだ。
これにはジュンとクリアも困ってしまった。まだ宿が1件しかなかったのだ。食堂も1件であった。
ジュンが大工に職種変更となった。
「えっ、小屋作るんですか。」
「ジュン様、これは使命です。領主は困っている領民を救わなければなりません。」
「領民は、まだ3人で・・」
「領民を救うために領主自らが金槌を振るい家を作っていく。これは領民たちにとってまさに・・・」
「あのーークリアさーーん。戻ってきてーー」
(どうして僕が小屋作りしてるんだ、僕は冒険者だよな。大工じゃないよな。英雄って呼ばれたよなー。)
ジュンはものつくりが得意であった器用なのだ。
口の中に釘を放り込み器用に1本1本吐き出していく。吐き出した釘は左手に、そして釘は金槌で一撃2撃、3撃で板に完全にめり込んでいった。
「すげー、なんであんなに早く釘が打てるんだ。」
「さすが領主様だよなー、何でもできるってすげーなー。」
ジュンの作っている小屋は臨時の食堂である。
個人で煮炊きをさせると火事の原因となるために食堂を早急に作らなければならなかった。
今この迷宮に500人の人が押し寄せてきているのである。
領主館総出で対応しているのである。ジュンは大工、クリアは事務仕事、獣人3人は、食料調達(狩り)である。ほかの者達は冒険者ギルドの職員である。冒険者ギルドは宿屋と食堂も同時に経営しているが、そこはもうパンク状態であった。
ジュンは、ハッとした。
あれ、これ、冒険者を雇えばいいじゃん。と思ったのだ。
「ぼ僕は領主です。小屋作りと食料調達を依頼します。」
それからは早かった。何しろ500人もの人でがいたのである。小屋はは冒険者が泊まれるようになるために皆張り切って作っていた。
「さすがジュン様です。ご英断です。」
クリアのヨイショを聞きながらジュンは夕食を取っていた。
「クリアさん。お金は大丈夫でしょうか。」
「御心配には及びません。ジュン様の資金は潤沢です。アレク様より頂いた物は村の10個や20個作れるほどです。」
「えーーー、そんなにあるんですか。」
「何を言っているのですか。迷宮ですよ、迷宮の村ですよ、いずれは迷宮都市ですよ全然足りません。目指せ1万人都市ですよ。そしてフフフ・・・」
ジュンは思う。クリアと話すたびに話が大きくなっているのだ。村から町に町から今度は都市に変わっているのである。クリアの頭ではもうこの村は都市になっているのだ。
「今日の迷宮はどうだった。」
「へへへ、これ見ろよ。」
「おーーー金が出たのか。」
「2層で出たぞ。」
一人の言葉は2層で金を発見した。それは低層でも金が出る事を証明してしまった瞬間でもあった。
この迷宮の低層は鉱石がゴロゴロしている。それでも金が発展された階層は4層と5層であった。それが2層となると素人冒険者たちにもかなりのチャンスがやってきたのである。500人の冒険者の中で4,5層に進めるのは100人程度であったそれが2層になるとほぼ全ての者たちが到達できる階層となるのである。
「「「「「うおおおおおおおおお」」」」」」
その日から又、領主達の仕事が増えていった。500人の冒険者がお押し寄せてきたのだ。1000人もの人が入り乱れ。村はカオス状態となっていた。
流石にクリアも応援を呼ぶことにした。
アレクは状況を打開するためにジュンに機人を1体送った(貸出し)のであった。
「機人ですよジュン様、機人です。」
「クリアさんどうしたんですか、そんなに焦って。」
「いいですかジュン様、機人とは・・くどくど・・・」
「良かったですねこれで仕事が捗りますね。」
「そ、そんな簡単な、この感動を・・・・・」
クリアの目が光っていることを誰も気づかなかった。クリアは機人の有用性を知っているのだ。クリアの野望は完全に燃え上がっていた。
(フフフ、これで領主になれる。俺の時代がキターー。)




