74話
ガレオン号艦内
「師匠、お客様です。」
「誰。」
「カイン様とバッハ様です。」
「応接室にお通しして。」
「カイン兄、バッハ殿、突然にどうしました。」
「アレクそれがな、ちょっと相談があってな。」
それはグラムット帝国から独立を果たした小国からのことであった。
「はぁ~。名前ですか。」
「そうなんです。」
「獣王国この名前を変えろと、最近できた獣王国が言ってきていると。」「バカなんですか、くだらない。」
「そうおっしゃらずに、何かいい案はありませんか。」
「じゃぁ、バッハさんの所が名前を変えるんですか。」
「とんでもない、獣王国は過去に滅んだ大いなる国の名です。変えられません。」
「相手もそうなんでしょうね。」
「・・・・・・・・」
「なぁ、アレク頼むよ。俺も困っているんだよ。家の脳筋たちがうるさくてな。」
「・・・・」「では案として、バッハさんの獣王国はバッハ獣王国。小国は○○獣王国でどうですか。こうすれば、獣王国の名を捨てずに国の区別もつくでしょう。」
「おおぉぉ、ありがとうございます。相手に伝えてみます。ありがとうございます。」
「なぁ、あいつら、何しに来たんだ。」
「名前の相談です。」
「・・・・・・・・・・・」
このくだらない、脳筋たちの悩みが解決する頃、本当の相談者が来るのだ。
「報告します。難民のような人が、保護をしてほしいと来ております。」
「難民のような人。??」
「はい、魚人です。」
「魚人なんだそれ、ユリ知ってるか?」
「初めて聞きます。」
「取りあえず、こちらに連れてくるように。」
「了解しました。失礼いたします。」
「始めまして、私は魚人族のガッパといいます。」「俺はギョギです。」
「僕は、この水の都の領主、アレクスです。伯爵位を貰っています。よろしく。」
「伯爵様、よろしくお願いいたします。」
「それでガッパさんは、保護してほしいと来ていますが何から保護してほしいのですか。」
「魔物です。私たちは、この広い川の奥、大森林から来ました。我々魚人は川辺で小屋を建て、集落をつくり生活をしています。川辺には、同じような集落がたくさんあります。最近魔物が頻繁に襲ってくるようになりました。」
「魔物の襲撃ですか。それに大森林の中に人が住んでいたんですね。」
「はい、私たちは、見た目がこうですから、隠れるように暮らしてきました。」「私たちは、この手を見ていただければ分かりますが、泳ぎが得意です。川からこの町の様子を見ておりました。」
「水かきですね。」
アレクは魚人をじっと見る。(肺とエラ呼吸だな。魚より両生類に近いのかな。)
「こちらに移住したいのですか。」
「はい、出来ましたら移住をお願いいたします。この町は水が街に流れています。ぜひくらしてみたい。」
「私たちは、物を作るのが得意ではありません。ここの人たちが道具を使えるのがうらやましい。」
「そうですか、作れないが使えますね。」
「指のえらが邪魔して細かい作業が出来ないので、物づくりは下手ですが使えます。」
「それなら、問題ないでしょう。」
アレクは、魚人に色々と大森林について質問をした。
大森林の奥には大きい湖がありそこからこの川が出来ている。その奥には魚人も入ったことが無い。
魚人はあまり水辺から離れないのでと言われていた。
アレクは大森林内のすべての集落が移住をするのか、一部なのかを確認していく。
アレクはガッパ、ギョギ達の集落の移住許可を出した。その上で提案をした。
「ガッパさん、別の集落を一度集めて、話し合いはできますか。」
「私たちは、水の中は得意ですから、連絡に泳ぎます。」
「そうですか、オリオン公国は、大森林を領土としています。魚人たちの生活を脅かすつもりは一切ありませんが、魔物の脅威があるのであれば、それを排除しましょう。そのことを集落にお伝えください。」
「はい、分かりました、では早速行ってまいります。」
「では、また会いましょう。」
「師匠、どうするつもりですか。」
「うん、魚人は、攻撃的な人種じゃなさそうだし、話し合いが出来れば、大森林に街を造れると思ってね。」
「また、仕事が増えますよ。」
「・・・・・・・だって、思いついちゃったしさぁ。大森林に行ってみたいでしょう。」
「まぁ、見てはみたいです。」
それから数日後、魚人のガッパから連絡があり。ガッパの集落に集まる事となった。
アレク達は、ガレオン号を川に浮かべてガッパの集落に向かった。
「やっぱり、ガレオン号はいいね、飛行艇だから空だけじゃなくて水の上も航行できるしね。」
アレクは、一人で納得をしていた。
「師匠、大森林を見たいと、いいましたけど訂正します。」
「僕もそう思うよ。周りは木、木、木だけ。飽きるね。」「もっと強い魔物がガバッと、くるとか想像していたよ。」
「私も同じです。この広い川には強い魔物は居ないとガッパさんは言っていました。」
「水の中には、強いのはいないのか。」
「師匠、あれですかね。集落は。」
「どれ、そうみたいだね、手を振ってるしね。おおおーーーい。」
ガレオン号に小舟が迎えに来たので、乗り込み岸に向かった。
ガッパの小屋の中には、十数人の魚人がいた。
話は、紛糾した。
まず、オリオン公国の存在を知らなかった。アレクは丁寧に説明をし、水の都の事、魔物の対応、排除、集落の補強、強化、大森林の中に水の街づくりでの便利生活等の色々を魅力的に説明、説得をしていった。
「今の集落が良ければ、集落の補修と補強を遣りますよ。その代わり立ち寄った船の補給をお願いします。」
「まあ、それならいいかな。」
「あと、水の街は湖の近くに造りますから、移住したい方は出来るようにしましょう。」
「あったかい食事も魔道具も手変えますよ、あっ、仕事をしてもらいますよ。仕事をしてお金を稼ぐ、そして食べ物、物を買うんです。」
アレクは、色々なものを持ってきていた。今回はすべて、友好の為の贈り物として渡したのだ。
魚人たちは、貧しい生活をしていた。それをアレクが、魅力的にこれからを語って誘惑をしていったのである。
コロッと、魚人たちは納得してしまった。イチコロであった。
魚人たちに、お金を稼ぐために水の都内と、港で働くことを進めた。慣れてもらうために一緒に働こうと提案したのだ。物が買えるよ、と誘惑。コロコロところがる魚人。
アレク達は、一応の合意をしたので、一度オリオン公国に報告をするために戻る事になった。
「じゃぁ、またすぐに戻るから、ガッパは水の都に居てね。」
アレクは、オリオン公国を目指してガレオン号を浮上させた。
驚いたのは、魚人たちであった。
口をパクパクさせていた、まるで魚の様であった。