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732話 瓦礫の迷宮

アレクは今迷宮内にいる。

この迷宮は、アース大陸北部最大の迷宮である。北部で迷宮と言えばこの迷宮都市であった。かつてこの都市国家は栄え、繁栄していたが、今は見る影もないほど衰退している。それは過去の世界大戦やスタンビードによってこの都市が何度も崩壊してしたからである。

100万人都市といわれたここは迷宮に飲み込まれていた。


瓦礫の迷宮、それはかつて栄えていた都市の傷跡であった。



アレクは瓦礫の迷宮内をゆっくりと進んでいた。かつての都市を見学しながら奥へと進んでいく。


(おっ、こいつは(スケルトン)2000年前の服着ているな、あれ、こいつは1000年前の服だな。

こうしてみると歴史の博覧会だな。

2000年前以上の者達はいないな、そうなると滅んだのは2000年前か、都市の入り口には新しい町の瓦礫があったから2,300年前に一度この都市を復活させようとしたのかな。)



アレクは飲み込まれていた廃墟都市を進み本来の入り口である、迷宮内に入っていった。

廃墟都市とは大きく違い、緑あふれる光景が広がっていた。だが魔物たちの密度の濃さにアレクは顔をしかめていた。


「なんだこりゃ溢れる寸前だったな。」


魔物たちはアレクの姿を確認すると我先にと襲い掛かってきた。




襲い掛かる魔物たちを軽く斬り捨てていく。


「こりゃキリがないな。サンダーレイン。」


ゴゴゴゴゴゴゴ、バチバチバチ。


アレクの魔法によってっ者達は黒焦げになっていた。

ようやく1層を抜けたアレクは、2層へと進んでいく。2層も又魔物で溢れていた。


2層、3層、4層、5層と魔物たちは皆、溢れていたが魔物が弱い事もありなんの問題も無く進んでいった。

6層に入ると又迷宮内の様子が変わっていた。かつては農作地としていたのであろうこの6層は麦畑が広がっていた。

黄金色の穂を垂らし、枯れる事のない黄金色の実を付けていた。


「こりゃ凄いな、活用できるな。」


6層、7層(農作地)8層(果実園)9層(放牧地)魔物一切出ない9層までを進みボスのいる10層に入ると大きな扉が開いたのであった。


「おっボス戦か。」


アレクはボス部屋と進んでいった。

10層のボスは少し大きいオークであった。少しがっかりしたアレクであったが、まぁこんなもんだよなと思い直しオークに斬りかかった。一振りで終わると思っていたアレクであったが、まさかの空振りをしたのだ。


「えっ。」


焦るアレクであった。まさかオーク程度に空振りをする事はありえないと思いながら剣を振り下ろす。だがまたもや空振りをしてしまったのだ。


「何でだ。」


アレクはオークを真っ二つにするつもりで剣を振り下ろしていた。オークが避けてもどこかに当たるハズである。

全く当たらないという事はありえないのである。


(何かがおかしい。オーク程度の魔物に俺の剣が当たらない事はありえない。これ本物か。)


アレクは剣ではなく殴り倒すことにしたのだ。もし幻影であれば殴る事は出来ない。素通りしてしまうからである。

だがアレクの拳もオークに当たる事は無かった。すべて見事に空振りしたのである。


対するオークはにやけた面で笑っていた。

「ブッヒヒヒヒヒ。」


「フン、オークごときが俺に勝った気でいるのか、爆炎。」


アレクの一言でボス部屋すべてが炎に包まれていった。オークを斬れないのであれば部屋すべてを焼き尽くそうと考えたのである。

たかがオーク一匹にこれ程の上級魔法を使う事はまずない。アレク以外であれば自分も焼け死んでしまうからである。


「ブヒャヤヤヤァァァァァァ、ギャァァァーーー」


豚の断末魔の叫びと共にボス部屋にはアレク一人が佇んでいた。


「あれは何だったんだ。ボス部屋に仕掛けがあったのか。」


答えの出ないままにアレクは先に進んでいく。

11層からは多少魔物が強くなっていたがあまり変わらなかった。19層まで進んだアレクは20層で又ボス戦となった。


20層のボス部屋に入ったアレクは、10層と同じであった。対する魔物はオークからオーガに変わっていたが、剣も拳もオーガに当たる事は無かった。

アレクは冷静に自分の剣筋を見ていた。オーガに触れる瞬間、剣の方が避けているのであった。


「フン、迷宮の仕掛けか。」


アレクは何度も何度も切りかかり空振りしていく。迷宮からの仕掛けと分かったが、対処の方法が無いのである。又広域魔法で倒すこともできるが、アレクとしては仕掛けを破る事を優先していた。



一度オーガから離れると一つ大きく息を吐いていた。


「フーーーーッ。」


「行くぞーー。」


アレクは剣を2本持ちオーガに向かって走り出す。オーガもアレクを待ち構えている。

アレクの2本の剣はまるで生き物のようにオーガに向かっている。剣の先が蛇のようにクネクネと曲がって見えているのである。これは残像であった。

余りにもすしーどが早く剣が繋がっているように見えていたのだ。

それでもオーガに当たる事は無かった。通常では考えられない事である。全くかすりもしないのだ。


それでもアレクは剣をオーガに向かって振り下ろしていく。


そして200振り程経過したときにオーガに当たったのだ。


「グウァ。」


「フーーーーーーッ、やっとか。」


アレクはオーガと対峙している時息を止めていた。息をすればそれだけ剣が遅くなるのだ。

その為に息をとめていたのであった。少しでも早く剣を振り抜くためであった。



一振りでも当たればオーガなど簡単に切り捨てることが出来るのだ。だが剣が当たらなければ殺すことは出来ないのである。



オーガの死体を見つめていると少しだけ地面が振動していることに気づいた。


動いている時では気づくことはできなかったであろう。静止しているこの状態で無ければ気づく事は無かった。


ボス部屋の床から人型の魔物が姿を現していた



「お前が20層のボスか。」

「いいや違うよ。20層のボスはそのオーガだよ。私はこの迷宮の代理者だね。」

「迷宮の代理者が何の用だ。」

「アレク・オリオンだったかな。アレクス・オリオンの生まれ変わりだね。流石に強いけどアレクス程ではないね。」

「先祖の事など知らんがいずれ俺は超える。」

「無理だね。アレクスまでの強さはアレクが生きているうちでは無理だね。」

「フン、そんなことやって見なければ分からない。」

「分かるよ、迷宮は何千年も人々を見てきたんだ。この迷宮はね3000年前のアレクスの時代にも攻略されていなかったんだ。」

「そんな事は知らん。たまたま攻略されなかっただけだろうが。」

「いいよいいよ、最下層で待っているから早く降りてきなよ。またね。」



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