726話 ローザ・フォレイン
アレクは西への進軍を開始していた。
レオン率いる軍団(3万)、ロードが率いる軍団(3万)とアレクが率いている軍団(2万)の3つの軍団が同時に3方向から進軍していったのだ。
オリオン王国はこの作戦で大陸南部制覇を完結させるつもりである。
南部の約半分を支配しているオリオン王国にはもう強敵はいない。だがオリオンの支配を良しといない勢力は存在している。
その勢力たちもこれが反抗できる最後の戦いだと分かっているのか、かなりの抵抗をしていた。
ある町では、村中が反抗してきた。オリオン王国としては村人たちに降伏勧告を出したがまったく聞き入れられなかった。
アレクは、この事で少し落ち込んでいたのである。
村人や世界の人々は己の周りの事だけを考えている。それは仕方のない事であり、この世界の常識であった。
アレクは、世界の事を考えている。邪気と戯れ、そして国々の争い。一つにまとまらなければ平和は訪れないのである。
一つの村が、平和に暮らせても違う村が又は国が争っていてはいずれ戦火に巻き込まれてしまうのである。
その事が理解されないのだ。
反抗する村人を幾人か殺し捕らえた。その時に村人からの憎しみの籠った眼差しが忘れられなかったのである。
「アレク様、あの村の事を悔やんでおりますか。」
「ロストか、少しな。世界の平和と一人の村人を天秤にかける事は出来ない。何方を取るかと言われれば世界の平和だ。それは何度考えても同じ答えだろう。だが村人から見たら俺たちはただの侵略者だ。平和な村を武力で征服にきた悪者だな。」
「アレク様、村人たちに説明しても分かってはもらえないでしょう。ですが10年後、いいえ50年、100年後には分かってもらえます。」
「そうだな。」
「・・・・次の町は反抗勢力最大の都市です。今回の進軍で最大の戦闘となるでしょう。」
「分かっている。やる事は分かっているんだ。あの男を殺した責任は俺がとらなきゃならないからな。そんな平和な時代を作らなきゃあの男も浮かばれないな。」
「・・・・・おの男は洗脳されていたと思います。反抗勢力は巧みに村人たちを操っています。」
「反抗勢力も必死だからな、俺が許さない事を分かっているのだ。」
アレク軍2万は、城砦都市手前で止まっていた。
この都市は反抗勢力の最大拠点である。
都市の人口は約3万でかなりの大都市である。
「この都市の領主は殺されたのか。」
「そう報告がきております。」
「何処からの情報だ。はいこの領主の娘からの救援要請です。」
アレクはこの城塞都市の元領主の娘である。ローザと面会した。
ローザ・フォレイン 11歳であった。
フォレイン家は代々この地の領主を務め都市を繁栄させていた。
この地は、センターランド王国に属していた。王国は、フォレイン伯爵を反オリオン勢力に売り渡したのだ。
センターランド内では、オリオンに降伏する勢力と最後までたたう勢力で別れていた。王は反オリオン勢力を王都から一掃するために拠点を与えなければならなかったのだ。ある程度の防衛能力があり、ある程度栄えている場所、それがこのフォレイン領であった。
王国は、フォレインを罠にはめたのだ。
王都に呼び出し毒をもったのであった。
フォレイン伯爵は王城内で毒殺され、謀反の罪を着せられてしまった。
伯爵家の家臣たちは、娘であるローザを逃がすことに成功するが冤罪を晴らすことは出来なかった。
センターランド王国が嵌めたのだ。王国に訴えてもどうする事も出来なかったのである。そして領地は王国直轄領となり、そこで反オリオン勢力が決起したのである。
センターランド王国は、オリオン王国に降伏する考えを示している。ところが元フォレイン領である王国直轄領では反オリオンとなっていた。
「父は毒殺されました。」
「ローザ殿、その事は聞いている。センターランド王国で毒殺されたと言う事だな。」
「はいアレク様さようです。センターランド王国は貴族会議と称して呼び出し父を毒殺しました。それに謀反の罪まで追わせ領地を没収し、お家の断絶迄したのです。許せません。」
11歳の子供が拳を震わせ涙を流している。
「こちらでもフォレイン家の事は調べた。ローザ殿の言っている事はほぼ間違いはないだろう。オリオン王国は全面的にローザ殿に協力をする。」
「では、私に兵を貸してください。」
「ローザ殿が指揮をとるのか。」
「私は、父の恨みを晴らします。私自身が戦わなければなりません。父や家臣たちが殺されたのです。私を逃がすために多くの家臣が命を落としました。」
「・・・・・・」
アレクは悩んでいた。11歳とまだ幼い子供である。戦闘能力が高いようにも見えないのだ。
戦闘能力が高ければたとえ11歳でもかなり強い。だが戦闘能力が低い者では一撃で殺されてしまうだろう。
「ローザ殿は人を殺したことはあるのか。」
「あ、あります。逃げていた時に1人殺しました。」
「ロード殿、修羅になれるのか。戦いとは感情を殺し、ただの殺人鬼になる事だ。」
「私は、鬼にでも悪魔にでもなれる。領民の為、家臣の為、そして父の無念を晴らすために鬼になる。」
「そうか。」
アレクはローザにスキル玉を与えたのだ。
スキル玉は、能力解放、雷魔法、身体強化、そして狂化のスキル玉であった。
アレクは反抗勢力をつり出す作戦に出た。城塞都市を攻める事は出来るが、領民に被害が出てしまう為に釣りだし作戦を決行したのだ。そのた為の作戦がローザの存在であった。
「我が、領民たちよ。無実の罪で毒殺された父フォレインの子ローザ・フォレインだ。今、我が領地を占領している。センターランドの犬ども覚悟しろ。私がお前たちを殺してやる。」
11歳の女の子供が大声で叫んでいる。城塞都市内に響き渡るその声は、今迄情報の入らなかった領民たちの歓声に覆われていた。
「「「「「うおおおおおお」」」」」」
城塞都市都市に籠っている反抗勢力は、子供に馬鹿にされたと思ったのか、城門を開き騎馬隊と兵士が出てきたのであった。
反抗勢力2000が城壁の外に横一列に布陣していた。
反抗勢力の一人が前に出てくる。
「おーーそこに居るのは謀反人の子ではないか。」
「私は、ローザ・フォレインこの地の領主だ。お前たちは私の領地から出ていけ。」
「ずいぶんと威勢がいいな。ガハハハ。かわいがってやってもいいぞ。」
ローザは兵500を借りていた。反抗勢力の4分の一である。
反抗勢力はローザの兵が少ない事で出てきたのだ。反抗勢力もオリオンに完全勝利をもぎ取る事は出来ないと考えていた。ある程度の勝利をもぎ取り、交渉するつもりであった。自治領の確保これが反抗勢力の目的だった。自治領であればかなり自由に采配出来るのである。小さな王国のような物である。
ローザは一歩前にでる。その後ろにはフォレイン家の家臣10人がいた。




