723話 屋台の肉が美味い
商都の広場は大勢の人に囲まれた、冒険者たちが恥ずかしそうにモジモジとしている。
数十人もの冒険者たちは商都の住人たちに囲まれて臭い、汚いなどとコソコソと小声でいられていたのだ。
冒険者たちは縛られた侭であるために、動くことが出来なかったのである。
そこへ、冒険者ギルドの者達が駆けてくる。
「すいません、通してください。」
冒険者ギルドの職員は縛られている者達の元へと近づき質問をしてくる。
「えーーっと、ドラゴンと一緒に飛んできたたちで間違いないですか。」
「そうだよ、この赤ちゃんたちは森にいたんだ。それを僕が取れてきてあげたんだ。それと赤ちゃんたちはお漏らししちゃったからね。」
「・・・あのー、ドラゴンさんですよね。」
「そうだよ僕はキース、隣はラース、そしてポチ。」
ペコリ×2
クスクスクス。 町の民衆たち
「お漏らししてもオシメもしていないからここまで連れてきたんだ。」
誇らしそうに胸を張っているキースであった。
「キースさん態々ありがとうございます。ですがこの者達はオシメをするような年ではありません。」
ガーーーーン。
「えっ赤ちゃんはオシメしないの。」
「キースさん、この者達は赤ちゃんではありません。大人です。」
「えーーーーーっ、でもでもでもお漏らししていたよ。赤ちゃんじゃなきゃお漏らししないでしょう。」
話を聞いていた民衆はもう耐えることが出来なかった。
「ブッフォ。」
「「「「「「「ぎゃははハハハハハ、もう駄目だ耐えられない。」」」」」」」
民衆は冒険者に対してタオルやどこからとってきたのか布オシメが投げ込まれていた。
「オシメ冒険者、頑張れよ。」
「お漏らしマン。世の中まだまだつらい事もあるからな強く生きろよ。」
「頑張れよ。」
「漏らしたからって恥だけど、他の町なら生きられるぞ。ブッ、ここでは生き恥だけどな。」
ギルド職員は、お漏らし冒険者たちをギルドまで連れていくとにした。投げ込まれたタオルを巻き黄色いしみが見えない様にしている。
屈辱に震える者、真っ赤な顔で俯いている者、泣いている者と色々である。
「キースさんラースさん、ポチさんはこの場で待っていてください。すぐに戻りますから。」
「分かった。待っているよ。その間は伝説の串焼きを食べているよ。」
キースとラースの目が光る。キラリン。
キースとラースは翼を広げるとふわりと浮いた。そして屋台の前にすっと降りたのだ。
「おじさん。串焼き頂戴。」
「・・・・・・どどどうぞ。」
キースとラースは30本ほどある串焼きを起用につかみムシャムシャと食べ始めていた。
「おいしーーーい。」
「生肉とは一味違うね。」
すぐに食べ終わってしまったキースとラースは次の屋台を見つける。
「あのーーお金・・・」
キースとラースは次々と屋台を荒らしまわった。
金を払わない無銭飲食であった。
お金と言われるがキースとラースはお金の意味を知らなかったのであった。
屋台の主人たちは恐怖で肉を提供し続けていた。3メートルもあるドラゴンが2体である。お漏らし冒険者たちでも敵わないドラゴンである。そんな凶暴な者達に肉を出さないと言えるはずもなかった。
豪快に食べるキースとラースに顔を引き攣らせながら、肉を提供していく。
そこへギルドの職員が戻ってきた。
「キースさん、ラースさん、ポチさん。お待たせしました。」
「あっ、お姉さん。こっちの肉美味しいよ。」
職員は屋台の主人の顔を見る。
ドラゴンがお金を持っていない事は分かる。
「キ、キースさん。お金って分かります。」
「ん、お金。何それ美味しいの。」
「・・・・・キースさん。人は物を貰う時にお金を払って物と交換するんです。キースさんたちは肉を食べてお金を払いましたか。」
「払っていないよ。」
「キース。あれあれ、あれがあるじゃない。」
「ラースあったまいいねー。あれがあるね。」
キースは腕輪から何かを取り出していた。
それは金であった。
「これでいいかな。」
絶句するギルド職員と屋台の親父たち。
キースが取り出した金は大きかった。
「ここんなに要りません。」
「いいよいいよ、又来るからその時のお金にしてね。」
「「「「「「うおおおおおお」」」」」」」
屋台の親父たちの雄たけびが叫ばれる。
屋台の肉を毎日う売ってもこの金の塊を手にすることなど一生無いだろう。
30センチほどの金の塊は、屋台のおやじたちの全員の一生の稼ぎより多い物であった。
この日屋台の親父たち10人の会合が開かれた。
その者達の目はランランと輝いていた。
ギルド職員はキース達を商都城へと連れて行く事になっていた。
ギルド職員の顔は引き攣っている。肉を食べながらキースとラースは楽しそうに歩いている。
ドラゴンの威厳はどこにもない。タダの食べ歩きをしている子供であった。
「キース知っている。ここはねオリオン王国なんだって。」
「おじいの言っていたオリオンなんだ、へーーーっ。」
城の中に入ったキースとラースは大広間まで連れてこられていた。
そこにはアレクが待ち構えていたのであった。
「あーーーーっ、あの人知っているよ。おじいのとこいた人だ。」
「どこかで見たことあると思ったが、浮遊島のドラゴンだな。おじいとはクロの事か。俺はアレクだ宜しくな。」
「うん、おじいの名前はクロだよ。」
「お前たちの名は何という。」
「僕はキース、こっちはラースで、外に待っているのがポチ。」
「でキース、お前は家出したのだな。」
「えっ、何で知っているの。」
「お前のジジイから通信が入ったんだ。浮遊島で捜索隊がもすぐ来るぞ。」
「えええーーー。」
「キースどうしよう、もっと外で遊びたいよ。お肉食べたいよ。」
「そうだね、お外楽しいもんね。」
このドラゴンは刺激の少ない浮遊島での生活より、刺激的な地上の自由な生活を気に入ってしまったのであった。もっと楽しみたい。もっと味付き肉を食べたいと思ってしまっていたのだ。
「アレクさん。僕たちを雇ってください。」
「働くのか。」
「うん、そうすればおじいも文句言わないと思うからね。」
アレクは悩む。ドラゴンはいくらいてもいいが子供のドラゴンでは役に立たないと思っているのだ。それも遊びたい盛りのドラゴンである。
「いいでしょう。仕事するからさー。」
「・・・・・・・クロの許可を貰えたら雇ってやる。」
「「やったー。」」




