722話 冒険者たち
キースとラースは母ウルフに案内されて主のいる場所に来ていた。
「ウルフさん、ここまででいいよ。後は僕らが話をするからさ。」
「よろしいのでしょうか、助けていただいただけではなく。あんな美味しいお肉迄貰ったのですが。」
「大丈夫だよ。終わったらまた肉上げるねー。」
「ゴクリ。」
母ウルフと分かれたキースとラースは奥に進んでいく。
森の奥にいくと、1体のドラゴンが寝ていた。
「ドラゴンさーーん、起きてますかー。」
グウウウウウーー、スウピーーー。
「完全に寝てるね。」
「敵がいないから安心しているのかな。」
「でも無防備だよね。このままやっつけちゃう。」
「拙いよ、一応話をしないと拙いよ。」
30分ほど声を掛けているが一向に起きる気配さえない事で、飽きっぽい子供のドラゴンは二人で遊んでいた。
「ギャハハハ、必殺のブレスだーーー。ゴオオオオオーーー。
「何オー、こっちは吹雪の舞。」
子供ドラゴンたちは軽く遊んでいるつもりでも周りにはそうは見えていない。2体のドラゴンが争っているように見えていた。
主と言われいるドラゴンも実は起きていた。本能で寝たふりをしていたのだ。
最初は本当に寝ていたのだが、子供たちが遊んで暴れている事で起きたのだ。そしてこれは拙いと寝たふりを続けていたのだ。
そして等々、主のドラゴンに被害が及ぶ。
キースの放ったブレスがずれてドラゴンに直撃してしまったのだ。
「ギャァァァァ。」
「あっ、マズッ。」
「あっ。」
「ごめん、ごめん大丈夫だよね。」
キースは大丈夫だと、前提に謝っている。
これはドラゴンが丈夫である為に間違った認識ではない。
「ギャウギャウギャァ。」
「ラース何言っているか分かる。」
「んーー、多分だけど、お前らどこの者だって言っていると思う。」
「浮遊島って知っている?」
「ギッ・・・・・。」
キースの一言でドラゴンは震え出していた。
浮遊島のドラゴンというだけで震え出していたのである。
「大丈夫、僕たちはまだ子供だから何もしないよ。」
「うんうん。」
「ぐううぅぅ。」(本当?)
「それよりここの主なんでしょう。」
「グウ。」(そうです)
「みんなと仲良くしないとダメだよ、特にウルフと仲良くね。」
「ガウ。」(了解しました)
ドゴーーーン。
「何々。」
冒険者と言われる者達からの攻撃であった。
この地にドラゴンが現われ、噂になっていたのである。ドラゴンスレイヤーという名声を得るために大勢の冒険者が集まっていたのだ。
冒険者たちはドラゴンに気付かれないように慎重に近づいていた。1体と思われていたドラゴンが3体もいたのだ。それも子供のドラゴンである。貴重なドラゴンの中で子供のドラゴンはさらに貴重である。
「「「「「うおおおおおお」」」」」
冒険者たちは、大きなドラゴンに向かって一斉攻撃をかけてきた。
ドキュン、バキュン、ドゴーン。
「や、やったか。」
煙が晴れるのを待っている冒険者たち、今自分たちの中で最大級の攻撃であった。この攻撃を食らっても生きているはずはないと思っていたのだ。
だが現実は非情である。たかが数十人の人の攻撃などドラゴンにとって、人が針でチョコンと突いた程度のものであった。
まぁ、埃まみれの方が嫌がった事は内緒である。
「ゴホゴホッ。ナニコレー、埃で僕の綺麗な鱗がくすんじゃったよー。」
「ゴホゴホ、目にゴミが入ったー。」
「ガウガウ。」(少し痛かった。)
土煙が治まった先には、何事もなかったようにドラゴンたちがいたのである。
その姿を見た瞬間、冒険者たちは固まってしまった。自分たちの最大級の攻撃が全く通じなかったのである。
「グワーッ。」
「ポチ待て。」
突然のポチ宣言で、ドラゴンが固まる。
(えっ俺の事だよね。俺ってポチって名前だったかなー。)
キースはドラゴン(ポチ)の攻撃を止めさせていた。
「キース、あれ冒険者って人たちだよ。」
「おーーー、冒険者ってあの伝説の勇者の職業だよね。でも弱くね。」
「うん、弱いね。」
子供ドラゴンは、冒険者たちに近づいていく。だが愛嬌のある子供ドラゴンたちが近づいていくと冒険者たちは少し余裕が出てきたのか。目で合図を送っている。
ターゲットを子供ドラゴンに変えたのだ。
何の疑いもなく近づく2他のドラゴン。
あと10メートルという距離に迫った時、冒険者たちは魔法と弓の攻撃を開始したのだ。
「おりゃーー、やっちまえー。」
「とりゃー、いてまうどー。」
ドコーン、ドコーンドコーン。シュッシュッシュッシュッ。
キースとラースは突然の攻撃にも何の問題もなかった。素早い動きでドラゴンパンチ(猫パンチ)を放っていく。軽くなでるようなものだが人では強烈な一撃となっていた。
数十人の冒険者たちはピクピクと痙攣している者や垂れ流している者達で悪臭が漂っていた。
「くさっ。人ってこんなに臭いのお風呂入っているのかな。」
「キースこれってお漏らしだよ。聞いたことあるんだ。人ってお漏らしするんだって。」
「へーードラゴンじゃありえないね。お漏らしって、クスクス。」
「お漏らしマンだねー。」
「まだ赤ちゃんなんだよ。この子たち。」
キースとラースは大きな勘違いをしていた。ラースが聞いたことは生まれた人の赤ん坊は、おっぱいを飲みおしめをしていると言うものであった。見たことがなかったのだ。
大人と子供の区別がつかなかったのである。
優雅な浮遊島で育った子供ドラゴンは優しかった。赤ちゃんと誤解した人達を人里迄送ってあげようと考えたのだ。
「ポチ手伝って。」
「ガアウ。」(俺ってポチ?)
キースとラースはポチに手伝ってもらい、人たちをロープで吊るして運ぶことにしたのだ。何十人もつづられた冒険者たちはロープでつながれ大空を飛んでいた。
「キース、人里ってどこにあるの。」
「んーー、人の匂いのする方かな。」
キースは全く地理を知らなかった。人の匂いを頼りに多くいそうなところへと向かっていた。
そこはアレクのいる商都であった事は偶然であった。
大空を3体のドラゴンが飛んでいる。それはアレクまですぐに報告が上がっていた。
アレクはドラゴン3体という事で、レッド達と思っていたのだ。人を吊るして飛んでくるようなものはレッドぐらいだと思っていたからである。
「広場を開けてやれ、レッドなら後で俺の所に来るように言ってくれ。」
「はっ了解しました。」
「おおー、あそこに一杯いるねー。」
「あの広場に降りようよ。」
3体のドラゴンはゆっくりと吊るした者達を傷つけないように地上に降ろしていく。
そして3体のドラゴンは地上に降りた。
「すいませーーん。この子たちお漏らししちゃったんです。」
町の住人たちの集まるこの状況で屈強な冒険者たちのお漏らしをばらされてしまったのだ。
プーンと臭ってくる。汚物の臭い。
周りに集まった。民衆たちはあっこれう〇この臭いだと気づいてしまった。
民衆の冒険者たちを見る目が冷たくなっていた。




