72話
アレク伯爵領領都
「大分、出来たな。」
「凄いですね。城ですね。」
「城だね。」
「まだ名前がないけどね。」
「なんて名称にするんですか。」
「募集しようかと思うんだけど、領民も愛着がわくでしょう。」
「それはいいですね。」
「城の中に入るよ。」
「いいんですか、こんなの建てて。」
「・・・・大丈夫でしょ。」
水の都に建つ城は、豪華に綺麗に造られていた。
オリオン公国にある城の中で一番豪華で美しい城であった。
城の外壁は真っ白でツルツルに磨かれた大理石を使用し、中も同じように磨かれた大理石で真っ白な城にした。謁見の間にはステンドグラスを張り、幻想的な雰囲気を出していた。
各所に魔道具を使い、明るく、便利さを追求した造りにしていた。
「この城、誰が住むんですか。」
「・・・・・・・たまに僕が、・・・」
「師匠は、ガレオン号を住まいにしてますよね。」
「まぁ、ノリと勢いで。伯爵だしね、住んでる事にしとこうよ。」
「見栄は張れますね。」
「師匠、ここにきちんと住んでしまえばいいでしょう。」
「リック、お前はこんな広い城に、1人で住んで寂しくないのか。」
「・・・住むのは無しですね。」
「取りあえずは、住んでいるように見せましょう。家具とか色々と置く様にしましょう。」
「じゃぁ、センスのいい、ユリ頼むよ。」
「・・・・・・・」
「ここで丸投げの行政も移して、人のいる所を見せないとね。」
「今の行政役場を、移す手配をしておきます。」
こうして、水の都は少しだけ、少しずつ前に進んでいく。
城以外は、人口も増えてきている。商店街も出来つつある。
都市は、まだ街だが、港もあり交易ができると人が集まってきている。この港を起点にして新国家と交易船をだす、商人も出始めている。
最前線の街ではあるが、平和そのものだ。何しろ治安がいいのだ、ここには艦隊が駐留している。国境警備の船もここを駐留地としている為、治安が他と比べて非常にいいのだ。
治安がいいと人が集まる、人が集まれば物が売れる、物が売れれば、商人が寄ってくる。そしてまた人が集まる。
アレク達は、この都市を見て回り、領民たちに「僕が伯爵だ。」と言っていた。
領民たちは、温かい目で見ていてくれた。
そんなアレク達も、ひと段落して国境警備隊の報告を受ける。
「報告いたします。現在、難民は日に数人は現れています。以前のような人数ではありません。」
「そうか、まだ来るのか。」
「小国群ができて、そちらに行くと思ったんだけどな。」
「小国に行くなら、オリオン公国に来ますよ。」
「まぁ、人は多いほうがいいから、これからも保護してね。」
「了解しました。では失礼いたします。」
オリオン公国から借りている部下は、深々と礼をして。姿勢よく退出していった。
「なんかきちんとしてるね。」
「師匠、普通はあれです。」
「でも、リックとかは、出来ないでしょう。」
「やれば、練習をすれば出来るようになります。」
「・・・・」みんな、無言になる。
「そうだ、ユリ、警備隊の船をパトロール船にしたら如何かな?」
「いいですね、小型の船の方が使いやすいでしょう。」
「じゃぁ、今使っている小型艦と交換しよう。小型艦は艦隊に再編してね。」
アレクは、次々と改善点を上げて、対処していく。元は優秀なのだ。ただ、少し見栄っ張りなだけだ。
あと、我がままで、気まぐれで、・・・・・・ありすぎだな。
ガレオン号艦内
「今日も仕事したね。もうお風呂入って休もうかな。」
「師匠、何言っているんですか、これから公都ブレストに向かいますよ。」
「まだ、仕事あるの。」
「師匠、まだ昼を回ったばかりですよ。」
「朝早かったから、もう夕方かと思ったよ。はははっ・・・・」
ガレオン号は、公都ブレストに着陸をした。
公都ブレスト
「この都市も変わってきたね。」
「そうですね、前も都市でしたけれど、今は大都市ですよ。」
「そうだね、区画整理を断行したもんね。あれは凄かったよね。」
「お金に物を言わせて、金貨を目の前で積んでましたからね。断ると一枚づつ減っていくから、みんな契約してましたね。」
「お金って、怖いね。」
「師匠、お金じゃなくて、人が怖いんですよ。」
「そ、そうだね。」
「師匠、冒険者ギルドがありますよ。」
「出来たんだね。南部には無かったからね。」
「人が多いですね。」
「のぞいてみるかな。」
「だめです、師匠、仕事です。」
「そうだね、先に終わらせよう。」
アレク達は、公都ブレストの建築中公城の地下に来ていた。
何をしているのか、魔力制御装置設置の、試験をしているのだ。この魔力制御装置は、公城のすべての魔化製品、魔道具に魔力を供給するのだ。 電気だな。
今では、オリオン公国の主要な都市、街にはこの魔力制御装置が設置されている。
都市に街に魔力を供給して、照明、魔化製品を、使用できるようにしているのだ。
「これで大丈夫でしょう。ブレストの都市が魔力供給できなくても、この場所だけは1か月は大丈夫だね。」
「師匠、この装置は普段は稼働しないんですか。」
「しないよ、都市の魔力供給がストップしたときに稼働するんだよ。」
「あっそうだ、少しいいじくるかな。」
ガチャガチャ、ゴソゴソ、ガチャガチャ。
「師匠また余計な事をしていますね。やめてください。」
「大丈夫、大丈夫。もう少しだから、大丈夫だよ。」
「その大丈夫が危ないんです。」
「完了。」
「師匠、この珠、迷宮核ですか。」
「そう、よく覚えていたね。」
「忘れるわけがありません。死にそうになったんですから。」
「ハハハッ。そうだった。だけどこれ正確には迷宮核じゃないんだ。」
「どう見ても、小さい迷宮核ですよ。」
「迷宮核のコピーだね。だから迷宮核みたいに成長はしない。迷宮都市にある、迷宮核に情報を送り、送り返される。迷宮都市に行かなくとも情報を見れるようになる。僕だけだけどね。」
「この場所なら、人の出入りもないし安全だからね。ちょっと設置しちゃった。」
「人には言いません。聞いてません。何も見てません。」
アレクは「そうだね」しか言えなかった。見ざる、言わざる、聞かざる。とか思ってしまったからだ。
それからアレク達は地上に出た。オリオンの行政地区を避け、こそこそと街を散策した。
隠れていると、見つかるそんなもんだ。
マリア、イリアに見つかり、焦ったが何もなくケーキを奢ってもらい帰っていった。
アレクは、いい気分で、ガレオン号に戻っていった。
これは、マリア、イリアの布石だとは気づいていない。