712話 レオン
「だだだーーーっ、やっちまった。」
レオンは豪華な部屋で頭を抱えている。
レオンは先日のパーティーで正室、側室、妾を纏めて妻としたのだ。それはもう出席者たちの度肝を抜いていた。
「陛下、レオン王国に連絡しませんと、奥様達の部屋がありません。」
「・・・・・・・」
「いいですか陛下、ご正室、側室はお城に住まわせる、お妾様は貴族街に屋敷を与えなければなりません。ですが、レオン王国には金がありません。幸い、オリオン王国と山の迷宮国家から膨大な祝金が入りました。全てをそちらに使う事で何とか体制は整います。」
「・・・・・好きにやってくれ、皆に不住させないようにな。」
「お任せ下さい。」
レオンの秘書官は、これで終わりだとは思っていなかった。あのレオンである。一年後、2年後には数十人増えている事を見越しているのだ。
秘書官は城の改築とお妾さんの屋敷の手配と忙しそうにしている。
後日レオンが報告書を確認した時、城は50人ほど側室が住めるようになっていた。妾用の屋敷も一つずつではなく大きなお屋敷でみんなで暮らすようになっていた。
大きな城の出城のような場所で、300室もある屋敷と言えないような小さな城であった。
「こんなに部屋要らないだろう。」
「陛下、必要です。例えばお妾様が100人になった場合ですが、その使用人達は一人に付き二人とします。それだけで200人となります。料理人など色々と入れますと200人から250人程度は必要です。一部屋二人としても役職者には個室が必要となります。100人まではこの屋敷で大丈夫です。」
自信満々に伝えている秘書官であるがレオンは妾100人はないだろうと思っていた。
だが後年妾が100人に迫る事となる事は、今は誰も知らない。
レオン王国王都
「なんだかレオン王の結婚が決まったようだぞ。」
「おーー、おめでたいな。で相手は誰なんだ。」
「テレーナさまというらしいぞ。」
「ん、俺の聞いたのはミレーネ様と聞いたぞ。」
「俺はセレナ様と聞いたぞ。」
「俺はマリエ様と聞いたぞ。」
「「「「・・・・・・・」」」」」」
「まさかな。」
「まさか、そんな事はないだろう。」
「そうだぞ、俺たちの王様が、ただの女好きなんてありえないだろう。」
「そうだそうだ。」
「絶対に違うだろう。まさか全部を娶るなんてありえないよな。」
「そうだそうだ。」
王都の民の間で広まる噂は、現実離れしているとあくまで与太話としてとらえていた。王の妃が数十人となるなどありえない話であった。それも一気に娶ると言うのだ。
王都の酒場では今日もハーレム王の噂でもちきりであった。
「ハーレム王の話は本当の用だぞ。」
「マジか。」
「嗚呼、城の改築をするらしい、それと城の横に小さな城を建設するようだ。」
「おっ、じゃぁ仕事が増えるな。」
「そうだ、これから忙しくなるぞ。」
レオン王国は好景気に沸いていた。大規模公共事業となり、5000人規模の雇用が生まれたからである。今は西への進軍がないために人余りの状態であるのだ。
そこに景気対策を兼ねたこの事業である。民は種馬王、ハーレム王などとにやけながら噂を肴に楽し気に騒いでいるのだ。
山の迷宮都市
「レオン、帰るのか。」
「嗚呼、帰るぞ。国もそう留守に出来ないからな、」
「また西へ向かうのか。」
「いいや当分はないな。俺の国は今それどころじゃないからな。」
「・・・・レオンが勝手に嫁を増やしたからだろう。」
「そうだけど、まぁ成り行きだ兄貴。」
「たまにはここに帰って来いよ。」
「応、じゃぁな兄貴。」
レオンは嫁たちを迎えるために自国へ戻っていった。
残された、嫁たちとその親たちは大変であった。
正室のテレーナは一人一人面会して、側室の序列を決めていたのだ。妾は皆同列とした。
「テレーナ様、お疲れ様です。」
「フーッ、こんなに大変だとは思わなかったわ。」
「テレーナ様、本当に大丈夫なのでしょうか。」
「心配ないわ、陛下には許可を貰っているわ。」
ホッとした表情の女官長である。
にのレオン嫁騒動の裏側の話である。
レオンの嫁たちはオリオン家の家臣である。山の迷宮時からの家臣もいれば新しい家臣もいる。人不足のレオン王国で一気に人員獲得の時であった。
レオンはこの嫁騒動を利用してオリオン王国と山の迷宮から優秀な人材を引き抜く事にしたのである。
側室と妾の家から人を引っ張る事にしたのだ。レオン王国の爵位と領地を餌に、各家の分家を立てさせたのだ。
この試みは各家でも歓迎された。単純に領地が増える事もあるが役職が増える事が歓迎されていたのだ。
一つの貴族家では役職が増える事はない。家臣たち出世も頭打ちなのだ。
それが今回単純に倍となるのである。
中には一貴族家で二人の側室の家もあった。姉妹同時に相手にしていたのだ。
この貴族家の親は、何も言えずに呆けてしまった。
まさかの娘がもうお手付きだとは思ってもいなかったのだ。それも二人同時だと聞かされた時には、心臓が止まるほどの衝撃であった。その親の黒い髪は話が終わる事には真っ白な白髪になっていたという。
だが娘たち姉妹は嬉しそうにレオンからの結婚の品を抱きしめていたという。
跡継ぎであった。弟は父を見て子供は男だけでいいと心に誓ったのであった。
エレメルは夫であるハロルドと話し合っていた。
「まだ膨れているのかい。」
「だって側室と妾ですよ。それも同時なんてありえないわ。」
「仕方ないだろう。あれで家臣たちや近隣領地の者達は喜んでいるんだ。」
「それはそうですけど、レオンの節操のなさが親として恥ずかしいですわ。」
「・・・・・・・・そうだな。」
そうレオンの親はハロルドとエレメルである。ハーレム王、オリオンの種馬、種馬王などと言われている王の親なのだ。
町を歩けば祝いの言葉を言われる。民たちからそれは嬉しい事である。それは嬉しい事であるが、たまに関係者の親類の類までいるのだ。側室の関係の者達はまだいい。だが妾関係者の者達は膨大な数であった。
名前を間違える事が出来ないために、愛想笑いでしのいであるのだ。
その苦労は大変なものとなっていた。
「山の迷宮に親せきが1000人増えたのですよ。」
「うっ。ハーーーーー。」
山の迷宮では皆家族のようなものであった。仲がいいのだ。
だがそれとこれとは違っているのだ。親戚となれば色々と面倒な事も出てくるのである。それが1000人増えたのだ。
「何かあるたびに1000人余分にかかるのですよ。それにレオンの事でまだまだ増えていくでしょう。」
「だが孫も増えるぞ。一人に1人と言事はないだろう。二人三人となる者もいるだろう。3,40人は、孫が増えるぞ。」
エレメルはここでやっと気づいた。そうだ孫が増えるのだ。それも大量生産される予定なのだ。あの種馬であれば間違いはないだろう。エレメルは今日、レオンをこれほど頼もしいと思ったことはない。
後にエレメルが亡くなる時、孫や曾孫に囲まれて旅立った。その時の孫や曾孫など1000人を超えていたという。
エレメルが亡くなる時、本人の希望で孫たちに囲まれて死にたいと言う要望から、体育館のような広い部屋の中央にエレメルのベッドが一つありその周りに孫たちが皆集まっていた。
入りきらない程の数に警備の者達は顔が皆引きつっていた。




