705話 ドラゴンがデモ
この日、アレクは新しい都市でドラゴンのデモを目撃した。
大きなドラゴンたちが一列に都市の周りを歩いて行進しているのであった。
「あれは何だ。」
「アレク様、あれはドラゴンです。」
「ドラゴンは分かっている。何でドラゴンがプラカードを持って都市を囲んでいるんだ。」
「ププラカードには美味しいものが食べたいと書かれています。」
「・・・・・・」
アレクは都市の周りをまわるドラゴンたちの元へ向かった。
「聞けーーー。我が友たち。美味い料理を食べたいかー。」
「「「「「「おおーー」」」」」」」
「ならば働け、今このカイン王国の周りには多くの敵がいる。美味いものが食べたいならば、平和でなければ食べられないぞ。安心して美味いステーキを食べるためには敵を討て。」
「「「「「「「おーーーーー」」」」」」」
「ハーーーイ、質問。」
「はい君何かな。」
「えーーーーっと、敵は何処にいるんですか。」
「あー、邪気と戯れだな。君たちなら匂いで分かるだろう。嫌な臭いのする奴らだよ。」
「あーーー、この漂っている臭いね。元の奴らを倒したら。人化スキルとオリオン食堂の食事券1年分って本当。」
「食事券?」チラッ。
ブルーは目線を逸らしていた。
「いいよ。働き応じて食事券を出そう。オリオン王国内とカイン王国内のすべての食事券だ。だけど人化した者だけだぞ。ドラゴンの姿ではオリオン王国が破産してしまうからね。」
メラメラと闘志を燃やす一体のドラゴンの姿があった。このドラゴンはまだ若いドラゴンである。若いといっても、435歳である。浮遊島で生まれ浮遊島で育ち、幼馴染と遊んで平和に暮らしていたドラゴンたちは退屈していたのだ。
本来食物連鎖の頂点に君臨しているドラゴンたちである。
戦う種族なのである。
「フフフ、私がやるよ。」
ドラゴンの長であるブラックの孫娘である。黒光りしているその姿は黒い銀のようであった。
観た方向からでは黒であり、又銀色であった。
ドラゴンの中でもかなりの戦闘狂である。
「じゃぁちょっと行ってくるね。」
黒銀のオギンが飛び立つと俺も俺もと若いドラゴンたちが飛び立っていった。
その数およそ100体である。2000年以上生きているドラゴンたちはまだいる。それはアレクが食事を提供する事をしていた者達である。
オリオン王国の習わしで、仕事を依頼するときはまずは肉を出しているのである。
「じゃぁみんなこれ食べてから頼むよ。」
「「「「「「おおおおおおお」」」」」」」
その肉は塩と胡椒を擦りこんだ。炙り肉であった。丸々姿焼きのミタノやオークと大型の魔物たちの姿焼きである。
この日からアース大陸北部はドラゴンたちの天下となった。
大空を飛び回るドラゴンは邪気や戯れを探して狩っていった。
悪臭をたどって探している為に隠れる事も出来ないのであった。
魔王軍
「何だあのドラゴンたちは。」
「分かりません。魔王様。」
「邪気と戯れを狙っているのは確実だ。急ぎ地下へ潜るぞ。」
「地下ですか。」
「そうだ、地下だ。地下ならば臭いで追っては来れないだろう。」
「「「「「「「おーーーーー」」」」」」」
魔王もドラゴン数百を相手にすることは出来ない。1対1ならば勝つこともできるが1体対数体になれば、いずれは負けると判断したのである。
それもドラゴンが数百も探し回っているのだ。地上にいたのではいずれ襲われることがはっきりしているのである。
(クソー何なんだあのドラゴンたちはやっと大陸制覇の道筋ができたと言うのにまた初めからやり直しだ。あのトカゲどもめ、クソー。絶対許さんぞ。
まずは地下都市に本拠地を移してそこから支配しかあるまいな。
そうだ、奴隷に地上を支配させようか、奴隷が奴隷を支配する。んーーいい考えだ。我ながら天才だな。)
魔王は地下都市へと避難していった。そして地上では魔王に指名された。卑しい考えの者達が集められていった。この者達は人間、獣人、エルフ、ドワーフと多種であるが共通している事は、悪であった。
「フフフフ、お前たちに力を授けよう。その力で奴隷たちを見張れ、そして我が僕となれば地上の支配を任せようぞ。」
「「「「「「「おーーーーー」」」」」」」
「魔王様、それは真でございましょうか。」
「余に従う事で支配する力を与えよう。」
「魔王様、従います。従います。」
魔王は悪の者達に少しの力を与えた。
魔王軍の支配地域の各地にこの者達が散って行った。それは今までの邪気たちの支配より過酷になった瞬間であった。邪気たちは基本怠け者である。その目を盗み備蓄などを行なっていたのである。ある程度の自由もあった。
それが奴隷が奴隷を支配するようになった事で根本が崩れていったのだ。
奴隷と元奴隷の為に隠した物や考えが分かってしまうのだ。その為に奴隷たちはいきなり窮地に立たされていった。
奴隷たちは全て採取されてしまったのだ。食べる物を残らず取り上げられ、その日の麦を仕事終わりに配られると言う体制にされてしまったのだ。
自由もなく、食事も満足に取る事もできなくなってしまった。
地上の新支配者たちは、邪気たちの屋敷に住み、大量の食事を食べてこの世の春を謳歌していた。
「ガハハハハ。奴隷どもを働かせよ。」
魔王の支配する地域は元奴隷の悪人たちが各地域のトップとなりその側近たちが各町や村を支配する事となった。
それはもう家畜であった。
その中でも支配を逃れた町や村はいくつかあった。
ドラゴンたちに救われた者達である。偶々ドラゴンがいた事で悪人たちは殺されたのだ。
この村や町はカイン王国に従う事となり、木人を派遣して当座をしのぐこととなったのだ。カイン王国も飛び地を支配できるほどの体制ができていないのだ。
今はドラゴンたちの索敵に頼っているだけである。
「アレク。」
「何、カイン兄。」
「ドラゴンがみんな敵を倒してしまったら、俺はどうすんだ。」
「カイン兄、いい事じゃないですか。カイン王国は盤石ですよ。」
「俺は戦いたいんだ。。」
「大丈夫ですよ。敵はまだいます。魔王もその側近もいます。雑魚を相手にしてもつまらないでしょう。大物はカイン兄に任せますから待っていてください。」
「おっそうだな。雑魚は要らないな。大物、大物だな。」
カインが去った後、アレクは大きなため息をついていた。大物どころか魔王たちの行方さえ分からないのだ。魔王軍が残っているかもわからないのだ。
「ほっ、敵を作らないとな。」
アレクは少し危険思想になっていた。




