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7話 商売の天才

翌日


父、ハロルドと従士長、デリックは頭を抱えていた。

テーブルの上には、そろばんとリバーシーがあるのだ。

そう、異世界物の定番、リバーシーである。


アレクは翌朝、起きるとすぐに商店街に出かけていった。

木工職人の店に押しかけ、そろばんの各部品を何軒かの職人に分離発注した。金にものを言わせ優先で作らせているとき、また思いついた。

そろばんより、リバーシーの方が簡単に作れるじゃないかと。

ちょうど、木工職人がいるし。ついでに作ってもらおうと、職人に笑顔でお金を置いた。

職人は金払いの良い5歳児に、呆れながら引き受けていた。

宿に戻ると、そろばんを組み立てた。

そろばんとリバーシーは簡単に作れるのでマネをされる。

そろばんを分離発注したのは、何を作成したのか、分からせないためだ。

すぐにマネをされるだろうが、当分は大丈夫だろう。

完成させた、そろばんとリバーシーをカシャカシャと音をさせながら、父のもとに向かう。


「ちっちうえー、おはなしがあります」


と、ここまでは普通にしていたハロルドだが、段々と話を聞いていると頭が痛くなってきた。

そろばんの実用性をパチパチとやりながら説明し、リバーシーのルール説明をしながら対戦し。対戦しながら、商工ギルドに商品を売るのではなく、商品の権利を売ったらどうかと話す。

簡単に真似をされる商品は、弱小貴族ではどうにもできない。

どうにもできないなら、どうにかできる者にやらせればいいのだ。


説明を終えたアレクは、部屋を出かけるときに、  


「では父上、あとはお願いします。あっ、リバーシーは貴族用に装飾されたものを作れば、高値で売れますよ。」  

意気揚々と孤児院に向うアレクを、父とデリックは無言で見送っていた。


「ハロルド様、俺はもうアレク坊とは王都に行きたくない。」

「気があうな、私もそう思う。」


「「「はーっ」」」と二人は深ーい、ため息をついて商工ギルドへ交渉に行った。


アレクは、ルンルン気分で町中を歩いている。


孤児院に着くと、リックとマックが待っていた。

「リック、マック、何人ぐらい働いてくれそう?」

「院長に聞いてくれよ。こっちだ、です」


院長の部屋に入り、状況の説明をきくと。

13歳以上、22人で12歳以下も、希望者が多く、何とかなだめたようだ。

「大丈夫ですよ、オリオン家は定期的に王都に来てますから、その時に希望者を連れて行ける様にして置きますから。」

「ありがとうございます。」

「黒板もありがとうございます。これで勉強を教えられます。」

「そうだ。お土産があるんですよ」

アレクはリバーシーをだすと、ゲームのルールを説明して、孤児院のみんなと遊んだ。

リバーシー大人気だ。やっぱり売れるな、と細く微笑む。



アレク、金の亡者である。



気分よく、宿屋に戻ってくると、疲れ切った父がいた。

「父上、具合でも悪いのですか」

「アレク坊、ハロルド様は商売の天才といわれています」

ニッと笑いながらデリックが説明してくれた。


そろばんとリバーシーを商工ギルドに持ち込んで、商品販売権と商品の作成権をギルドに、一台に付き、販売代金の一割で売ったのだ。

商工ギルド幹部は、大騒ぎだったようだ。

商工ギルドは、リバーシーより、そろばんに驚愕していたようだ。

商人だからこそ、そろばんの利用価値、商品力を理解し、そして自分たちも儲かるシステムを持ってきてくれた、ハロルドは商売の天才として扱った。

そろばんとリバーシーの契約は完了したが、今後の登録システムについて、明日打ち合わせをするのだとか。

アレクは大変そうだなと思うが、自分が原因とは思っていない。


薄情なアレク。


その次の日もハロルド以下、みんなが忙しく働く中、のーんびりと買い物をしている。


そして出発の日


南門に孤児院22人が旅立つのを見送りに来ている。

院長は、ハロルドに挨拶をしている。

見送りに来た、子供たちは旅立つ22人に、抱き付いて泣いている。

落ち着いたところで、馬車に乗り込みゆっくりと進んで行く。

みんな目を真っ赤にして、鼻をずぅずぅやっているが、悲しい顔はしていない。


また会えるとわかっているから。










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