691話 カインの支配地
この戯れの支配していた大都市は、かなりの人口がいた。
今、カインは大都市の内政官となっていた。
「だぁぁぁぁぁ、やめた。やめた。俺には出来ない。」
「カイン将軍、貴方が始めた戦争です。支配した地域の統治も将軍の仕事です。」
「レフト、俺は戦いが専門なんだ。内政や統治何か向かないんだよ。やりたい奴にやらせろよ。」
「それは今選別しております。今後カイン将軍が統治なさる国ですから、選別に時間が掛かります。」
「えっ、俺が統治するのアレクが王だろう。」
「何言っているのですか、北部は全てカイン将軍の領地となります。オリオン王国は知らないと言っていましたよ。」
「えっ、マジか。アレクの奴、くそー。」
カインは自分が始めた戦争であるが、全てアレクのせいにしていた。内政などやりたくないからである。
それでもカインは何とか大都市の統治を問題なく行っていた。それはこの大都市内にかなり優秀な人材がいたのであった。
カインは城の謁見の間で数人の元奴隷たちと話していた。
「へーー、タンドラ大陸から連れてこられたのか。」
「はい、私はタンドラ大陸で邪気と戦っておりました。最後の人の国であったギット王国で政務を仕切っておりました。もう50年も前の話です。」
「ん、50年も前の話。そんな年には見えないな。エルフの血でも入っているのか。」
「はい、8分の一ほどエルフの血が入っております。それで姿が若いのでしょう。」
「よし、決めた。ギフトだったかな。ギフトを内政官に任命する。この都市を中心に俺は支配した地域を治めてくれ。」
「・・・・・・・・将軍閣下。私は奴隷です。」
「元奴隷だな。オリオンは過去など気にしない。これから頑張れ。ハハハハ。」
カインはニコニコであった。これで内政から解放されると思うと自然と笑顔になっていくのである。
カインは優秀そうな者達を全て雇い入れて統治させるようにしていた。
「カイン閣下、よろしいのですか。」
「参謀長か、いいんだよ。元奴隷だろうと関係ないんだよ。」
「カイン閣下、私の心配している事は違います。統治後の仕組みです。」
「仕組み。」
「そうです。カイン閣下が王となり国家を建国しなければなりません。」
「エッやだなー。」
「嫌だとか、そんな事言っている場合ですか。早急に建国しなければなりません。オリオン王国に建国の手続きを行ないますからね。」
カインは参謀長の言葉を忘れるために軍を纏めて進軍するのであった。
カイン軍の進軍は順調に領地を広げていっていた。北部では軍や組織だった集団が少なく邪気たちは各々が単独で戦っていたのであった。そのためにカイン軍は有利に戦い各個撃破が出来ていたのである。
「東の海まで到達したな。」
カインは東の海を手に入れた。カインの支配地域はアース大陸北部中央から東一帯を支配地期としていた。その大きさは今のオリオン王国以上の広さとなっていた。だが支配は静寂であった。
反乱でも起きれば一気に瓦解する。
「これから北に広げていかなければな。」
「カイン閣下、噂では西から魔王と言われている戯れが侵略していると言う事です。いずれカイン閣下とぶつかるでしょう。」
「魔王軍というやつらか、楽しみだな。」
カインは大陸北部、中央から東(南寄り)、魔王軍は西の端から中央(北寄り)まで侵略していた。両軍はまだ支配地域が隣接していない。中央でも、まだ数百キロも離れているのである。
「カイン閣下、この辺で一度内政に力を入れませんといけません。」
「任せるよ。ギフトに書状を出しとく。ギフトなら上手くやってくれるだろう。」
「ハーーー、またギフト殿ですか、過労で死んでしまいますよ。」
カインは一度、大都まで戻ってきていた。
カイン王国建国の為に家臣たちに領地を与えるためであった。広大な領地を手に入れたカインは軍の幹部たちに領地を与える事にしたのである。
だが普通に領地を与えてしまうとカイン軍の戦力低下を招いてしまう。そこでカインは領地には代官(内政官)を置く事にしたのだ。軍人たちが内政など出来るはずもなく。皆大歓迎であった。
基本を男爵は村3から5つ、子爵は町一つと周辺の村、伯爵は町2つ以上とその周辺の村で区分けされていった。
「参謀長、どうだ終わったか。」
「カイン将軍、終わる訳ないでしょう。」
「だよな、俺も手伝うから怒んなよ。」
それからカインと参謀長は、ひたすら区分けを行なっていた。
「参謀長、領地持ち貴族は100家ぐらいかな。」
「そうですね。領地持ち貴族、その下に内政官こちらは国から派遣するようにいたします。」
「国の役人という事か。」
「そうです。軍人が内政を行なってもろくなことになりません。」
「そうだな。あいつらが内政何か出来る訳ないよな。」
カイン軍の兵はオリオン王国の元軍人である。現在はオリオン王国軍ではなく正確にはカインの私設軍となっていたのだ。
カインは私設軍を正式な軍としなければならなかったのである。
支配した地域から税を取り、その上がりで軍を維持しなければならない。
そのためには領地の内政がかなり重要となっていくのである。
カイン王国(仮)は領地の約3分の2を配下の者達に分け与え、残りを直轄地とする考えである。
領地持ちになった者達も素人の集まりである為に、事実上は全て直轄領な物となる。
「内政は国が直接という事だな。」
「はい、その方が統治しやすいでしょう。」
「不正防止の為に、貴族の身内も内政に係らせるかな。」
「その方が宜しいでしょう。内政は開発と税額の確定など多岐にわたります。」
「領主はほぼ軍人となるだろうから、領主不在の領地がほとんどだろう。代官はどうするか。」
「それは各家の身内を当てるしかないでしょうね。」
「アレクに文句言われそうだな。」
「言われそうではありません。絶対に言われます。」
「人が足りないなーーー。」
「オリオン王国も人手不足です。育てるしかありません。」
「クソー、領地が広すぎだな。」
「だから言ったのです。進軍が早すぎだと。」
「参謀長、もっと強く言ってくれればよかったんだよ。そうすれば俺も止まったかも知れなかった。」
「止まりましたか。」
「・・・・・・止まらなかったな。」
カインと参謀長は漫才のようなやり取りを繰り返してやっと領地割を決めていた。この領地割を基本として内政官が調整していくのである。




