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685話 ねずみ講

「陛下、商会より開発地域に隣接にて産業を興したいとの許可を求めている件ですが。」

「あーあれか、たしか魔物牧場だったか。」

「はいさようです。あの魔物牧場は画期的な物です。是非許可をお願いいたします。」

「駄目だな。あの魔物牧場は没だな。」

「な何故でございますか。」

「お前、開発担当なのに知らないのか、魔物はテイマーがいないと飼いならせないのだ。そのテイマーが一人もいないではないか。何故魔物を飼いならせると思っているのかが分からんな。況しては開発する村の隣接地など許可出せるか。魔物の被害を出すだけだ。」


「・・・・テイマー。」


「もしかしてお前、魔物を狩った事がないのか。」

「・・・ゴブリンを一度倒したことがございます。」

「一度かハーー、まぁいい。いいかよく聞け。魔物は飼いならせないぞ。大人しい魔物はいる。餌を与えていれば大人しくしているだろう。だがなそれを態々村の隣地に作ってどうするのだ。」

「それは村の食料にしていく予定です。せめて実験として1か所だけご許可をお願いたします。」

「駄目だ、村の近くなど許可を出せるか。」


魔物を支配する、又は飼いならす事は普通の人間では不可能である。人間でそれが出来るのはテイマー又はその魔物を瞬殺できるほどの強者だけである。魔物が強者の前で生を諦める程の者でない限り魔物は従う事はしないのである。


アレクも魔物牧場のようなものは持っている、それは迷宮内で放し飼いをしているのである。地上で簡単な柵で囲うような事は絶対にしない。




ワリ商会


「なぜ、許可が下りないのだ。」

「申し訳ない。陛下が許可を出さないのだ。」

「内政官、お前は絶対に許可が下りると言ったではないか。」

「申し訳ない。この金は返金する。」

「・・・・・・」



「会長、どうしますか。もう開発村の隣地の土地を買ってしまっていますよ。」

「拙いな、一度投資者たちに見学させなければならないのだ。」

「会長、それならばいい考えがあります。金はかかりますが魔物ではなく、家畜の牛をそろえましょう。どうせあの者達は魔物なんて見た事もないでしょう。新種に開発した大人しい牛型魔物と説明しましょう。」

「おーーー、それはいいな。どうせ1か所だけだからな、ヒヒヒヒィ。」



モォォォォ。



「おお、これが魔物か、この牧場は素晴らしいな。」

「そうでしょう、そうでしょう。この牧場では品種改良した牛型魔物であります。その肉の味は普通の魔物と比べられない程、美味しゅうございます。」


元領主たちとそれに誘われた者達の魔物牧場の見学会は大成功であった。

見学者たちは開発している隣地で簡易な柵に囲まれた安普請な牛舎を見てみな感動していた。

収入のない者達にとって、紹介しただけで金が入るこのシステムは魅力的であった。

実際に牧場がある。この目で見た事で投資者たちは安心したのだ。

例え1か所だけであろうと。もう自分の中で妄想が爆発していったのだ。

自分(親)が紹介して金貨3枚、そしてその紹介者(子)が又投資者(孫)を連れて来る。それは永遠に続くと思うな錯覚にとらわれていく。


完全なネズミ講である。


だがこの時代、このねずみ講を理解している者はまだいない。ワリ商会の会長は一種の天才であった。

この会長は本気で魔物牧場を経営するつもりであった。投資者を増やして資金調達をして各村に牧場を作る事を本気で考えていたのである。だが許可が下りず、投資者だけが増えていったのだ。

金が入ってくることで紹介料を支払わなければならず、ズルズルと行ってしまったのであった。



「会長、いいではありませんか。資金はわんさかあります。1割程度支払っても5年や10年持ちますよ。その間に魔物牧場を成功させれば問題は解決します。」

「んーーー、そうだな。許可が下りないのだ仕方がないな。それより投資者のパーティー開催はどうなっておる。」

「はい今回は元領主たち主催で集める予定です。オリオンと対立する反オリオン同盟の者達に声を掛けたようです。」

「あの元領主たちは節操がないな。」

「ですね。反オリオンの者達は資金集めの意味で投資するようです。」




オリオン城


「何、画期的なシステムを見つけただと。」

「はい陛下、この図をご覧ください。」


ある部下がアレクにねずみ講の説明をしていく。この説明はマリアとイリアにも事前に説明をしている。その時にマリア、イリアは相手にもしなかった。そこで王であるアレクに説明してオリオンが利益を上げるようにしたかったのだ。そして自分が出世する予定であった。


「お前は馬鹿か、こんな物出来るわけがないだろう。」


その家臣はアレクが出来ないと言う事が理解できなかった。元になれば絶対に儲かるシステムなのだ。


「いいかこのシステムはな、破綻する。」

「えっ。」

「一口金貨100枚だと、その紹介者に金貨3枚、そしてそのまた紹介者に金貨1枚だぞ。永遠に続くと思っているのか。どんなに稼いでも紹介者に金貨など出せるわけがないだろう。それに年間10%の利益還元だと信じられんな。」


アレクはこの家臣に説明していく。


「いいか、年間利益10%と紹介料と金貨3枚を稼ぐのにオリオン王国として考えてみよ。税を10%多くするにはどうやる。」

「・・・・・・・・無理です。」

「そうだ10%も多くすることは無理なのだ。人口が増え税を支払う者が多くなって初めて税収が増えていくのだ。民の所得が上がって初めて税収が増えるのだ。これが基本だ。システムだけで金儲けなど出来ぬのだ。」

「でですが何か画期的な売り物があればどうでしょうか。」

「画期的な売り物ならば売れるだろうな。それは紹介料など払わずとも売れるものだろう。」

「・・・・・・・・」





この事でアレクはねずみ講の調査を進めていった。その報告の中で、ワリ商会が元締めを行ない、反オリオン同盟の者達も投資者となっている事を突き止めたのであった。



「マリア姉、イリア姉、どう思います。」

「反オリオン同盟は潰れるわね。」

「そうね、調査では反オリオンの領主たちは資金の7割を投資に向けているわね。」

「馬鹿なんでしょうね。」

「違うわ、それほどオリオン王国を恐れているのよ。」

「資金を稼げれば武器や兵を集められると思っているのでしょうね。」

「それもあるけど、同盟内の権力争いが主ね。」

「まだやっているのですか。」

「そうヨ、あの元領主たちが力を取り戻しているのよ。魔物牧場だったかしら、その投資で親になった事で子や孫である反オリオン同盟内で力が戻ってきているのよ。」

「これ戦争にもならないでしょうね。」

「そうよワリ商会を潰せば終わりね。」

「魔物牧場は経営していないわよ。本当に魔物牧場を経営していればオリオン王国としては手は出せなかったけど、経営自体が虚偽なら潰せるわね。」

「マリア姉、イリア姉、もう少し様子を見ましょう。その方がオリオンにとっていいでしょう。」

「アレク、あなた資金を丸ごと奪うつもりね。」

「さぁ、どうでしょう。」


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