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664話 メルト領のロード

オリオン王国の北西に位置するダイレン伯爵領、そこは運河のある綺麗な街並みが広がっていた。

そこに突然、3体のドラゴンが飛来してきたのだ。町は大騒ぎとなっていた。


「ドドドラゴンだーー。」

「に逃げるぞー。」

「領主様は、兵士はーー」


アレク達は伯爵領館へと降りた。


騒然とする伯爵館、館の兵士たちは剣を構えているが皆震えている。


「俺はアレク・オリオンだ。ダイレン伯爵はいるか。」


アレクの名を聞いた瞬間、兵士たちは別の意味で緊張していた。オリオン王国の噂、オリオンに負けは許されない。この噂は出鱈目であるが、オリオン王国貴族内では有効であった。オリオン貴族達は武力によって周辺領主を制圧していた。そのために負けた領主は戦に強い領主の風下に立つことになっていたのである。


ダイレン伯爵の兵士は館の中に走っていった。



「どどうぞ、ここちらでお待ちください。」

アレクとカインは、館の中に案内される。




ダイレン伯爵


「アレク王が来たのか、それもドラゴンを連れて来たのか。」

「はいお館様、3体のドラゴンと凶悪カイン様もお連れです。」

「どどどうする。メルトの負けで粛清にきたのか。」

「流石にそれはないと思われます。」

「でででは、何だ。」

「解りません。お会いになれば分かります。」

「・・・・・・」


完全にビビっているダイレン伯爵は、過呼吸になりながらアレクにいる部屋に向かった。


「おおおおお待たせいたしました。」

「貴様がダイレン伯爵か。」

「はい。ダイレンでございままます。」

「ダイレン、聞きたいことがある。」


アレクはメルト領の降伏勧告、戦闘の経緯などを聞いていく。


「ほーー、ではダイレンはオリオンへの報告に間違いはなかったと言うのだな。」

「ああありません、私はメルトの戦で不利になる前に転進したのです。」

「同数ならば勝てるのか。」

「勝てます。必ず勝てます。勝ってみせます。」


自信に満ちたダイレンの言葉にアレクは呆れ気味であった。


ダイレン伯爵軍は3000の兵を率いてメルト領へ進軍した。だが3000の兵が2000に減り1000に減り、不利になった事で転進したと言うのだ。

アレクは完全に負けだろうと思ったが口に出すことはなかった。


「ではダイレン1000の兵を率いてメルトへ迎え。」

「えっ。」

「どうした同数なら勝てるのであろう。」

「あ、はい。」

「よし、俺たちはメルト領で待っているからな。一週間後までにメルト領まで来い。」



アレクは用は済んだと出て行ってしまった。

呆気にとられるダイレンであったが、すぐに立ち直り兵の手配をするのであった。


「家宰、すぐに手練れを手配せよ。金に糸目はつけない。最強の剣士を集めよ。」


ダイレンはなりふり構っていなかった。

アレクの見ている前で無様な戦いなど出来るはずもない。勝ってダイレンここにありと見せつけなければならないのだ。オリオン王国貴族として君臨するためにはアレク王に武力を見せつけるよい機会であった。


「勝つぞ。メルトなど捻りつぶしてやる。」





アレク達はメルト領の館にいた。


「ようこそお出でくださいました。アレク王。」


メルト領領主と息子のセルスとロードの3人がアレクとカインに挨拶をしていた。


「メルト。ダイレン軍を蹴散らしたようだな。」

「えあいや、そのー、すいません。」

突然土下座するメルト領主であった。

「父上、土下座などする必要はありません。戦争でただ戦っただけなのですよ。」

「そうだメルト、ダイレン軍と戦い勝っただけだぞ。何も謝る事等無いぞ。」


「ロードと言ったな。メルト軍はお前が率いていたのか。」

「はい。私が率いていました。」

「どうだもう一戦してみないか。」

「もう一戦ですか。どこと戦うのでしょうか。」

「ダイレン軍1000と同数で戦いを見せてくれ。」

「アレク王、勝つことができましたらメルトの自治を認めてもらえますか。」

「自治か、オリオン王国の法に従った方が利点は多いと思うがな。」

「オリオンの法はよくできております。さすがとしか言いようがありません。ですが違いを出すことに意味があります。オリオン王国に統一された社会もいいですが、何十年、いいえ何百年後を考えの事なのです。」

「ほーーっ。」


それからの話はアレクにとって斬新的な考えであった。


専制君主制である王国は王を頂点とした一部の者が支配する者である。それをメルト領は領主という頂点は同じであるが領主の下に議会を置き、領民の代表が協議して領地運営をしていくという者であった。


「すると、領主には拒否権があるのだな。」

「ございます。領主に拒否権が無ければ議会の思うがままになってしまいます。議会もいずれ腐敗する事を計算に入れております。」

「フーーーン。面白い考えだな。今のメルト領は小国程度(北海道ぐらい)の広さがあったな。」

「はい。」

「メルト領の自治は認めん。オリオン王国に従ってもらう。だがダイレン軍に勝った時には、ロードに分家を立てさせ領地を与えよう。」

「えっ。」

「フフ、そこでロードの思うようにやればよい。メルト領との違いを見せてくれよ。後のオリオンの参考になればよいな。」

「はっ、必ず良い結果になるようにいたします。オリオンに対して忠誠と繁栄をお約束いたします。」


それからアレクとロードは一週間色々と話し合っていた。ロードの考え方、物の見方がアース大陸の考えと根本的に違っていたのだ。アレクはロードの考え方に理解を示すが、慎重にもなっていた。国土、人口などの規模が小さければうまく運用も出来るがオリオン王国の様に大陸全体での運用には向かないように思えたのであった。


「ロード、報告は月一で頼むぞ。」

「はい議会の議事録もお付けいたします。」

「うむ、それと新しい自治の西に領地を広げてくれ。無理に広げなくともよいが、その議会政治の運用も見てみたい。戦争時にきちんと機能するのかなど色々と実験してくれ。」


ロードは焦った。自治を認めさせ。平和に静かに暮らしていく予定であったのだ。


「戦争ですか。」

「そうだ。俺は大陸を一つにまとめる。争いのない国をつくる。まぁ邪気や戯れという敵に対抗するためだけどな。」

「アレク王、その邪気と戯れはドラゴンの敵ではないと言う事ですけどそれほど問題になるのでしょうか。」

「なるな。邪気や戯れは大陸北部を支配している。南部に来ないと言う保証はないからな。敵がきてからの対応では遅いしな。それにあいつらは人を奴隷にしている。」

「分かりました。このロードも協力いたします。」

「頼むぞ。だがダイレン軍に勝ってからだ。」

「そうでした。」



そしてダイレン軍とメルト軍の戦いが始まった。




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