661話 メルト対ジルバ
ロードに襲い掛かった者達はその場で土に埋まっていた。
ロードはジルバの者達を拘束していた。
ジルバの宣戦布告を証明させるために生き証人とするためであった。
ジルバ兵数人をロードは解放し、ジルバ領とその周辺に解放したのだ。
「ロード大丈夫か。」
「父上、心配いりませんよ。全て計画通りです。」
ロードはジルバ領を飲み込む計画である。
ジルバ領はメルト領の倍の広さがあり。交通の要所であった。ジルバはその為に大きな力があり、周りの領主から嫌われていたのだ。
「ロード、ジルバの者はメルトに攻め入るのではないか。」
「攻めて来るでしょうね。」ニヤニヤ
「ま拙いではないか。どどうする。」
「父上、落ち着きましょう。兄上を見習ってください。落ち着いていますよ。」
ロードの兄セルスは事の大きさにびっくりして立ったまま気絶していただけであった。
それからのメルト領は大忙しだ。ジルバに攻め入るのだ。
「いいか諸君、これは戦争だ。ジルバの者に教えてやろう。メルトの強さをな。」
「「「「おおおおおおおお」」」」」
メルト兵300とロード隊20人は進軍を開始していた。メルト兵300を指揮するのは兄であるセルスだ。ロード隊は別行動をとっている。
この進軍はジルバ領にも伝わっていた。
ジルバ領の兵力は1500もあるのだ。300の兵でジルバを落とす事等出来るはずがないと思っている。
それよりもジルバの子である3人の息子たちは家督争いを繰り広げていた。
通常であらば、父の敵を取って家督を継ぐと宣言も思想であるが、このジルバの子供たちは非常に仲が悪かった。
父が死んで喜んでいたのだ。口うるさい父がいなくなり、自由に出来るようになったからだ。
ジルバ領は交通の要所である為に者が集まり、人の出入りも激しい人が集まれば金が集まっていく。そのために金の苦労などしたことが無いのだ。
3人の息子たちは永遠にジルバが続くと思っているのであった。
長男レイス(16歳)。次男トイス(15歳)、三男カイス(14歳)この3人全て母親が違うのだ。
その為に3つの勢力に別れ日々いがみ合っているのであった。
3人は対メルト領との戦争の会議に出ていた。
「メルト軍は兵300でこのジルバ領に向かっております。」
「フン300だと、蹴散らして終わりだろう。」
「おっ珍しく同じ意見だな。トイス。」
「馬鹿兄貴か誰が考えても同じだ。」
「誰が馬鹿だー。おーーなめんなよ。」
「馬鹿を馬鹿と言って何が悪い。お前掛け算できないだろう。7の段を言ってみろ7×8。」
「5・・五十・・・」
「やっぱりバカだ。」
「トイスてめー殺されたいのか。」
長男のトイスは頭は悪いが腕力がある。次男のトイスは頭いいが剣の腕はそれほどでもないのだ。三男のカイスは剣の腕もなく。頭もそれほど良くもなく平均的な男であるが、性格が根暗であった。
根暗それも仕方のない事である。3男のカイスはジルバ領の正妻の子であったのだ。
その為に3男であろうが正当性を母親が主張していたのだ。
ジルバ領を纏める者はいなかった。死んだジルバがすべてを仕切っていたために、誰も全体を把握する者がいなかったのだ。
不毛な言い争いで何も決まらない会議(数日)を続けているとメルト軍が目前まで迫っていた。
ジルバの者達も敵が300の為に蹴散らせると思っているのである。
「お三方、よろしいですか。もう明日にはメルト軍300がこのジルバの町に来てしまいます。こちらは兵1000を町の入り口で待ち構えて対応でよろしいですかな。」
「フン、ジムか。俺はそれでいいぞ。」
「誰が指揮をとるんだ。」
「俺だろう。正妻の子だからな。」
「あ”ーーーーっ。」
流石に家臣たちもいい加減に飽きてきていた。
「お三方、ここは軍事の専門家である。カイレスにの指揮を任せましょう。」
「「「・・・・・」」」
「よろしいですな。」
「「「分かった。」」」
「カイレス頼むぞ。」
「任せな。メルトの弱兵など殺してやる。それより戦後は俺にメルト領の半分をくれよ。へへへ。」
この発言でまた会議が荒れた。
ジルバ軍は簡単なお仕事のような気軽な形で布陣していた。
「いいか野郎ども。メルトの弱兵を殺せ。一人殺せば銀貨1枚だ。」
「「「「「「「おーーーーー」」」」」」」
1000人のジルバ兵の前に300のメルト兵が対峙している。
両陣営の距離はおよそ800メートルであった。
両陣営は自分から動く事はしなかった。メルト軍はロードからの指示の為、攻める事が出来なかったのだ。
対するジルバ軍は迎え撃つ構えでいるために攻める事をしなかった。睨み合いは丸一日を経過していた。
カレイスは敵が300であることで罠を警戒していた。まともに激突すればジルバが勝つ。3倍以上の戦力である為に負けるはずがないのだ。そのために罠があると思っているのだ。正面に堂々と対峙している300の兵がいるのだ。普通ならば撤退するか。交渉をしてきそうなものである。それが一切ないのだ。
ロード隊
「ジルバ兵1000は攻めませんね。」
「当たり前だ。ジルバのカレイスは臆病なんだよ。負ける要素がある時は受け身になるんだよ。」
「罠を警戒しているんですか。」
「そう罠があると思っているんだろうね。」
「堂々と布陣している為に罠があると思ったんですか。」
「そうだよ。3倍の相手にあそこ迄堂々と布陣して攻めてこないから疑ってしまったんだよ。でも1日経ったからもう限界でしょう。今日にも先端は開かれるよ。」
「拙いじゃないですか。罠なんてないんですから。」
「あるよ。」
「えっあるんですか。」
ジルバ軍はメルトに向かって攻撃に移った。
「突撃ーーーー。」
「「「「「「おーーーー」」」」」」
攻めるジルバ軍に対して
「よーーし逃げるぞ。」
メルト軍はくるっと反転して駆け足で逃げていった。
呆気にとられるジルバ軍であったが敵が逃げた事で士気が高まった。
「殺せ、奪えー。」
「「「「「「「おーーーーー」」」」」」」
逃げるメルト兵追うジルバ兵、2キロほど逃げたところでメルト軍の簡易砦があった。柵を作り2メートルほどの堀をつくった。簡易な砦である。
「敵に突っ込めーーー。」
ジルバ兵は簡易な砦に目を向けている。あんな粗末な砦一瞬で落とせると確信しているのだ。堀はただ穴を掘っただけであり。柵は木を組んだだけである。それにみすぼらしい小屋が2つ砦と言えない物であった。
ジルバ兵が砦に取り付こうとした時、それは起こった。
砦の廻りは泥沼になっていたのだ。メルト兵は決められた場所を通り砦迄戻っていた。だがジルバ兵はそんな事は知らないのだ。
足を取られ膝上まで埋もれ身動きが取れなくなっている1000の兵たち。
「弓を放てーーーー。」
シュシュシュシュシュシュシュ。シュシュシュシュシュシュシュ。
それは一方的な弓の訓練であった。動けない的に当てる事は簡単であった。
メルト兵は皆弓の訓練を受けていたのだ。300人の弓兵は一人10射矢を放っていた。
1000の兵で生きている者はごく少数であった。無傷の者は誰一人いないのだ。指揮官であるカレイスも罠にはまり死んでいた。
「ロード様、うまくいきました。」
「よし次は領都の占領だな。まだジルバには500ほど兵がいるからな気を抜くなよ。」
「はっ。」




