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660話 メルト領のロード

アース大陸南部の南西に小さな領地、村が3つ人口1200人ほどの領地がある。

その領地で一人の男の子が生まれた。その子は領主の次男としてすくすくと育ち、兄を助け妹の面倒を見ながら楽しく暮らしていた。


その暮らしもオリオンの出現で南部に暗雲が立ち込めていた。

オリオン王国が現れたことで平和であった南部が戦国時代へと変わってしまったのだ。


オリオン以外から見ればオリオンは侵略者である。



メルト家(領)


「父上、オリオンが北のセシル領を落としました。」

「セシル領が飲み込まれたか。」

「ロード、セルスを呼んで来い。」

「はい。」


「セルス兄上、父上がお呼びです。」

「ロードどうした急用なのか。」

「セシル領が落ちました。」

「・・・・・そうか。」



「父上。」

「セルス座れ。」

セシルとロードはメルト領主である父の前に腰掛ける。


「ロード説明せよ。」


ロードはセシル領の事を説明していく。


セシル領は、メルト領より北東の位置にある領地だ。メルトとはかなり離れている。

メルト領はオリオンに対してかなり警戒をしている。強大な軍事力を持つ大国それがオリオンの認識であった。


「オリオンはいずれメルト領に進軍してくるでしょう。」

「「・・・・・」」

「我がメルト領は降伏か戦うかの選択をしなければなりません。ですが今のメルト領は戦いにもなりません。何しろ村が3つの小領主だからです。」

「「・・・・・」」

「それにオリオンはドラゴンも操る軍事国家です。戦っても皆殺しに会うだけです。」

「「・・・・」」

「ですがご心配に及びません。父上、兄上。このロードが一度だけオリオンを退けます。そして降伏しましょう。」

「「・・・・・」」

「あれ父上、兄上どうしましたか。」

「ロード、良くそんなにメルト領が弱いオリオンが強いとはっきり言えるな。」

「だって事実じゃないですか。空飛ぶ船を持つオリオンと軍馬もいないメルト領では話にならないでしょう。」

「まぁそうだがもう少し言い方があろう。」

ウンウン。(兄)


「父上、現実を見ましょう。正確な情報が無ければ判断を誤ります。」

「ロード確認なんだが、オリオンと戦うのか。」

「まともに戦っても勝つことは出来ないでしょう。ですがオリオンも一年中戦争をやってはいません。現にセシル領を落として進軍が止まっています。ある程度領地を広げると内政に時間をかけています。

流石オリオンですね。内政を重視しています。」

「ロードそんな相手にメルト領は勝てるのか。」

「勝てません。降伏するんです。」

「お前一度オリオンを退けると言ったではないか。」

「そうです。一度オリオンを退けます。」「それはメルト領に力がある事を見せつけるためです。」

「オリオンと戦端を開けば皆殺しにされるというではないか、大丈夫なのか。」

「分かりません。」

「おいおい、そんな不確かな事では許可できんぞ。」

「ですがメルトの自治を認めさせるには一度は戦わなければなりません。メルト領を素通りしてくれるとは思えません。」


そんな親子会議を繰り返していたメルト領は、対オリオン対策として隣地の領主を吸収していった。

それは次男のロードの戦略と父と兄の武功がかみ合ったことであり奇跡の進軍と言われていた。メルト領の周りは大きな領地で囲まれていた。弱小領主として周りの領主から相手にもされていなかったのだ。

メルト領村3つ、隣地の領主町10、村40など差が開きすぎていた。

まともに戦っても兵300対兵2万ぐらいの差があったのだ。それも大領主2つと接している。ほかにも中領主もいるが大領主に従属しているようなものであった。


ロードは戦略家であった。生き残るために知恵を絞った。


まずロードは長年揉めている隣領主(ジルバ領、いつも下に見られいちゃもんを付けられている)

そこを攻める事にしたのだ。

メルト領をバカにしている為にまさかメルトが攻めてくることなど全く考えていなかった。ジルバ領は

メルトにうまく対応できなかった。


ジルバがいつものようにメルトにいちゃもんを付けに来たのだ。100人の兵を引連れて川の水利権をよこせと言ってきていた。

メルトには絶対飲めない事である。


ジルバの兵もいつものように村人たちを脅していた。まるでチンピラが大声を上げて威嚇しているような風景であった。

委縮する村人たちロードはそんな光景をにがにがしく思っていた。

いつか見返してやる。そんな思いがあった。

力のない者は力のある者に屈しなければ生き残る事は出来ない。それは自然の原理である。



「これはジルバ殿、メルト領にご用ですか。」

「なんだ小僧か。メルトはどこにいるのだ。」

「父上と兄上は出ております。」

「フン使えんな。メルトに言っておけ、ジルバに水利権を献上しろとな。」

「お断りします。」

「なにぃぃ。」

「ジルバ卿、水利権はメルトの物です。何故ジルバに献上しなければならないのです。意味が分かりませんね。」

「小僧、いい機会だ教えてやる。メルトが生き残るために水利権をジルバに捧げるのだ。生きたければジルバのために働くのだな。のう皆もそう思うだろう。」


「「「「「「はっ。」」」」」」


ニヤニヤしているジルバと兵達であった。


「お断りします。お帰り下さい。」

「こ小僧、いい気になるなよ。メルトが謝りに来ても許さんぞ。」

「父が謝りに行く。ありえませんね。」


36歳のジルバは12歳のロードに馬鹿にされ、怒りに任せて剣を抜いたのだ。


「ジルバ卿、メルト領に対して宣戦布告と受けりましょう。」


ジルバはしまったと思った。流石にからかうために来たが戦争をしに来たわけではないのだ。ジルバの所属する大領主に言い訳も出来ない。下手をすればジルバに非あるとなり取り潰しの浮き目にあうこともありうるのだ。


「やれ。」


ジルバの立つ固い土が柔らかくなった。一瞬の出来事であった。

ジルバは首だけ出して体は土の中に埋まってしまったのだ。

何が起きたのか理解できなかった。


「なななにが起こったのだ。」

「あれ分かりませんか。ジルバ領がメルト領に喧嘩を売ったんですよ。」


ブスッ。


ロードはジルバの首にナイフを刺していた。

即死ではなく血管を切ったのだ。驚いた兵たちは逃げる者とジルバを助けようとするものに別れていた。逃げる者達が約半数。助けようとするものは10人程であり残りはその場から動かない。



「きさまーーー。」


怒りの表情でジルバの家臣10人ほどがロードに向かって斬りかかってきた。

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