659話 荒ぶるドラちゃん
アース大陸南部ではドラゴンの脅威に震えていた。邪気は人よりも強い、だがドラゴンよりも弱い。
これは特別な者を除きドラゴンが最強種であるからである。
シロ、ドラちゃん、レッドとカイン達は、南部大陸を縦横無尽に暴れまわっていた。邪気たちにとって不幸なことにドラゴンたちは飛べる事であった。人なり地上を移動するものであれば、追跡をして寝込みを襲うなどの対策が出来たのだが、空を飛びどこにいるのかもわからない状態である。そして突然に町や村を襲い邪気たちを殺していくのだ。
大陸中でのテロ活動をしているようなものである。
「シロちゃーん。今日はどこ行く。」
「あの一番大きい町に行こうかな。あそこ邪気がいっぱいいるからね。」
楽しそうに会話するドラちゃんとシロである。黙って聞いているカインとレッドは唯のお付きでしかなかった。
コソコソ
「レッド、二人で行かせよう。」
「そうだねカイン、その間に逃げよう。」
「ドラちゃん、今日は二人で行ってきてよ。俺たちはアレクの所に行ってくるから。」
「えっそうなの。どうしようかなーー。」
「二人で暴れてきなよ。邪気を倒すのはシロとドラちゃんしかいないよなー。なぁレッド。」
「そそそそうだね。」
「なんか怪しいなー。」
「なななんにもないぞ。」
「まぁいいよ今日は二人で行ってくるよ。アレクの所で待っていてね。絶対よ。」ギロリ
「ああ当たり前ノ助だー。」←カインはこれで否定しているつもりであった。
「ねぇカインあんな約束してよかったの。」
「約束なんかしていないぞ。当たり前ノ助だと言っただけだ。俺の友達の名前だな。」
「ねぇカイン、だいぶ無理があるよ。」
「ダイジョウブだよ。たぶん。」
こうしてレッドとカインは自由を手に入れたのであった。自由となったレッドとカインは正義の味方を再開していた。だがシロとドラちゃんが大暴れしたことで邪気たちが隠れてしまっていた。ある者は地下に潜りまたある者は大都市に逃げていった。
そして邪気たちの統治が緩んでいった。
邪気たちの大都市では、奴隷の管理や税の集金などが滞り大問題となっていた。
「・・・・蛇王様。」
「どういうことだ。」
「ドドラゴンの襲撃で都市が麻痺しております。」
「ドラゴンごとき何とかせよ。」
「・・・・・・」
「フン使えぬ奴らばかりだな。」
「地下のアンデットドラゴンを出せ。」
「まさか蛇王様あのアンデットドラゴンにドラゴンを当てるのですか。」
「それしかあるまい。」
「ドラちゃん、競争だよ。」
「いくよー。」
ビューーーーンとスピードに乗った2体のドラゴンは蛇王の住む都市へとやってきていた。ブチブチと潰していくシロとドラちゃん
「ぎゃーードラゴンだ、逃げろーー。」
「ギャー。」
「嫌だー。」
そこにシロとドラちゃんと同族の匂いがしてきたのだ。
「シロ。なんか変なにおいがするよ。」
「そうだね。」
「あれ、キングスじゃないの。」
「えっキングスは死んだよ。」
「でもキングスだよね。」
グルッ。ガァァァァ。
それはかつてローエム帝国時代に一緒に暮らしていたキングスであった。キングスはローエム帝国が滅ぶ時に命を落としてしまったのだ。
「アンデットになっていたのね。それに奴隷紋もあるわね。かわいそうに死ねないのね。」
ドラちゃんは怒りに震えていた。かつての仲間であるキングスが死ぬに死ねない状態であることが許せなかったのだ。勇敢に戦い。皇帝を守る為に死んだキングス。それが奴隷紋を刻まれアンデットとして操られているのだ。許せるわけがないのである。
ドラちゃんはキングスの前にでた。
「キングス。もう安心して眠りなさい。」
ドラちゃんの一撃はキングスを切り裂いていた。死んでも死なない体にされたキングスでもドラちゃんの一撃は強烈であった。奴隷紋を切り裂き、アンデットでいるための魔核を破壊したのだ。
キングスの目が一瞬正気に戻った。「あ”・・じ・が・・どう。」
蛇王は城からその光景を見ていた。
(あんなに強いのか、信じられん。あれでは勝つことができないではないか。どうする、どうする。)必死に考える蛇王であったが最強の隠し玉であったアンデットドラゴンが一撃で倒されてしまったのだ。
今の蛇王には手立てがなかった。
逃げるしかないとの結論に至った蛇王は城の地下へ向かった。さすがに国の外に逃げる事は出来なかった。
ドラゴンが暴れまわり帰るまで身を隠すことにしたのだ。
ドラちゃんとシロは城を破壊していった。
ザーナン国(蛇王の国)王都は破壊尽くされてた。邪気たちは逃げまどい。殺されていった。
もう手の付けられない状態であった。キングスをアンデットにしたことが許せなかった二人は手当たり次第に壊していったのだ。
荒ぶる二人を止める事は誰にもできなかった。もしレッドとカインがいても二人を止める事は出来なかったであろう。いや違う一緒に暴れていたであろう。
多少気の済んだシロとドラちゃんは帰っていった。
残された王都は瓦礫の山となっていた。邪気たちは殆んどが殺されていたがまだしぶとく生き残っている者もいた。
「・・・中央に知らせるのだ。」
蛇王は瓦礫となった城の地下から出てきた。
「蛇王様、ご無事ですか。」
「フンあんな攻撃など大したことないわ。」
「おーーーさすが蛇王様だー。」
生き残った邪気たちは蛇王が生きていた事で安心していった。
蛇王は王都を捨て第2都市へ移る事になった。
「第二都市へ行くぞ。支度をせよ。」
「はい。」
蛇王
何だあのドラゴンは暴れるだけ暴れてまるで獣だ。あんな奴がいてはどうする事も出来ないではないか。どうするか、他の王に応援を頼むか、嫌拙いな。この蛇王様が負けたと思われては馬鹿にされてしまう。クソー何でこの国にきたんだ他の国で暴れろー。
あのドラゴンは拙い。強すぎる。
蛇王は前にドラゴンと戦ったことがあるのだ。その時は蛇王が勝つことができていた。その事からドラゴンでも負けないと言う自信があったのだ。
蛇王は知らなかったのだ。蛇王の戦ったドラゴンはコモドドラゴンと言われるドラゴンもどきであったのだ。
生き残った邪気たちを引き連れて邪気の大移動が開始された。立ち寄る村で人間を憂さ晴らしに殺し機嫌の良くなった蛇王は、少し冷静に考える事が出来るようになっていた。
「外交官を出せ。応援を呼ぶぞ。」
「蛇王様、応援でありますか。」
「あんな化物を余だけで倒すのリスクがあり過ぎる。他の国にも負担させるのだ。」
「おーーーさすが蛇王様です。」
感心する邪気たちの姿があった。
邪気たちは何も考えていないのである。その方が気楽だからであった。
邪気たちは楽しく人を殺し、楽しく暮らせればいいのである。他の邪気が死のうが自分が生きていればいいのである。




