652話 町解放するアレクと暴れるカイン達
領主の屋敷から出たアレクは、町中で邪気を探し殺して回った。
夜が明けるころには、ほぼ全ての邪気たちは首を落とされていた。
流石のアレクもすべての邪気を殺すことができなかった。幾人かの邪気たちは町から逃げていったようである。
この町に残された人たちは、血だらけのアレクの姿に戸惑いの表情を浮かべていた。
「あ、貴方様が邪気様を殺したのでしょうか。」
「嗚呼、俺が殺して回ったぞ、領主も殺している。」
「「「「「ざわざわ」」」」」
「領主様を殺したんですか。」
「此処じゃ話もできんな。大きな広場があっただろう。そこにこの町の者達を集めろ。」
「ははい。」
町の中央にある広場に多くの人々が集まっていた。その姿はボロボロの服を着ている者達であった。
「俺はアース大陸南部からやってきた者だ。南部には邪気など狂った者はいない。俺が南部から来た村の人々は税に苦しみ、邪気に怯えて暮らしていた。奴隷紋を刻まれ逆らう事も出来ず。死ぬまで奴隷として生きるしかない。・・・・奴隷紋は消せる。」
「「「「おおおおおおおお」」」」」
「よいか、よく聞け。この町を解放する。人が治める町とする。」
「「「「おおおおおおおお」」」」」
それからのアレクは大忙しであった。奴隷紋を消せる者はアレクしかいないのである。
町の全員の奴隷紋を消す作業は数日間続いた。
「もう駄目だ。俺は疲れた。」
「アレク様、何言っているんです。これからでしょう。」
「艦長、あ後は頼む。」
アレクはベットの中に入りくるっと寝返りを打ち、背を向けるのであった。
「何言っていいるんです、起きてください。南部の調査だけと言いながらこんな騒ぎを起こして自分だけ寝れると思っているんですか。」
「・・・・・・」
「アレク様、いいですか。オリオン王国から通信が入っています。読みますよ。いいですか。何やってんだーーー。以上。」
「・・・・・」
アレクはガレオン号艦長にたたき起こされ、渋々町の内政作業をする事となった。
その頃、カインは大陸中央にレッドと一緒に来ていた。
カインは元ローエム帝国帝都上空を飛んでいた。
「レッドなんか俺たち目立っているな。」
「カイン、そりゃ目立つでしょう。だってドラゴンだよ。大物なんだよ、偉いんだよ。凄いんだよ。」
レッドの自画自賛している姿はどう見ても偉くは見えなかった。
元帝都の都市は大騒ぎとなっていた。ドラゴン襲来。この都市を支配する者も邪気であった。
この都市には等級の高い者が多く、都市としての機能がきちんとしていた、その為にドラゴンに向けて弓矢での攻撃が開始されたのだ。
だがドラゴンに迄届く矢はなかった。レッドの飛ぶ速度が速いために矢は当たらなかった。
まぁ当たったとしてもレッドに傷をつける事も出来ない。
「隊長、矢が矢が・・・」
「ええい、黙れ。ドラゴンが下りてきたところを狙え。」
都市の高い防壁の上で弓矢を放っている兵士たちはかなり怯えている。邪気となり知性が育ち、考える事が出来るようになった者達である。絶対に敵わない事が分かるのだ。
人であれば、家族を守るため、友を守るために戦うが、この邪気たちは全く違うのだ。上の命令で仕方なく仕事をしている者達ばかりである。
そこにレッドが防壁の上に降り立った。
ガシッ。
「ぎゃー。」
丁度その場所にいた邪気はレッドに踏みつぶされてしまった。
「槍隊突っ込めー。」
十数人の槍を持った者達がレッド目掛けて突っ込んでくる。だがレッドには全く効かなかった。槍はレッドの鱗にはじかれ刺さるどころか鱗に傷をつける事も出来なかった。
「とりゃぁ。」
掛け声とともにかっこよく飛び降りたカイン。
兵士の姿をした邪気たちを殴り殺していく。カインは首を手刀で落としているのだ。手に魔力を込めて刀の様に鋭くしているのだ。これはアレクが考えた必殺技である。カインはアレクにやり方を聴きながら覚えていた。
「よく見ろ。俺はカインだ。俺の必殺技である。闘気手刀だ。カッコいいだろう。」
ものすごく自慢気に話すカインであったが誰も聞いていなかった。
「カイン、誰も聞いていないよ。早く他行こうよ、みんな死んでるから。」
カインは、何も無かったように防壁から飛び降りた。
都市の中は、兵士がカイン目掛けて駆けてきている。カインは手刀で首を斬り落としていく。
「おりゃおりゃおりゃーー。」
数百人を殺した頃にはカインを囲むような陣形となっていた。無暗に突っ込む者はいなくなっていた。
レッドも遠巻に囲まれるような形となっていた。
それでもカインとレッドは暴れまわっていた。
囲む位置が段々と広くなっていった。
そこに1人の高級な服を着た者が現われたのだ。
「此処は我が町だ。人間無勢が暴れるなど許されん。」
「あ”ーっ、お前誰だ。」
「いいかよく聞け、俺様はこの都市第3地区の領主である。」
カインはその男を手刀で首を斬り落とそうとした。ところがカインより速くレッドが爪が切り落としていたのだ。
「あーーー、俺がやろうと思ったのにーー。」
「だってカイン、手刀するときにかっこつけるでしょう。無駄だよ。強い相手だったらそのすきに攻撃されるよ。」
「・・・・だって・・・その方がかっこいいだろう。」
殺された男は立ったままで首が飛ばされていた。男の首から血がピュウピュウと噴水の様に出ていた。
囲んでいた邪気たちは皆一目散に逃げていく。
「あーー、アレクの居場所聞けなかったな。」
「カインアレクはいないね。居ればこんな騒ぎにならないよ。」
「まっそうかな。レッド次行こうか。」
「そうだね。」
カインとレッドは都市を飛び立っていった。
残された者達は皆唖然としている。何しに来たんだと言う表情であった。
「ねーカイン、次の場所はどこにする。」
「んーー、大きな町があったらそこに降りてみるか。何か腹減ったからな。」
「そうだね、魔物の肉はもう飽きたよね。美味しいパン食べたいよね。」
「レッドもパンとスープ派だもんな。」
そうレッドは体を小さくして人と同じものを食しているのだ。そのために他のドラゴンより少しだけ太ってしまっていた。まだレッド自身気づいてはいない。気づいたときにレッドは手遅れとなっているだろう。
そんな二人を追いかける一団があった。都市から追いかけているのだ。その駆ける速さは人では考えられない程の速さである。邪気の中で速さに特化した者達である。
都市で邪気を殺しまわり暴れた者を許すほど邪気たちは寛大ではないのである。
行先を確かめるために追っているのである。
「見えなくなったぞ。」
「クソー、ドラゴンめ。」
「取りあえずこの方向だ。行くぞ。」




