648話 オスカーニ迷宮発見
「いやー、一大勢力になりましたね。父上。」
「・・・・・」
「あれ父上どうしたのですか。親オリオン同盟の盟主ですよ。」
「・・・・なぜ私が盟主なのだ。」
「父上以外にいないでしょう。僕はまだ11歳ですし、最初のオリオン派ですからね。」
この親子の会話は幾度も繰り返されていた。
7領主による同盟を結ぶことになった。親オリオン同盟である。オスカーニ領、トレイス領、メクト領、ダンカン領、そして立会人達のリット領、レークル領、メーレ領の7領である。
この7領は東の小国ほどの大きさになっていた。そしてその周りの影響も大きなものになっていたのである。
「まだまだ同盟参加者が増えそうですね。」
「ロストよ、開発も良いが恨みを買うだけの様に思えるんだが。」
「間違いなく父上は恨まれていますね。」
「くっ。」
「でもその勘違いもいずれ感謝するようになりますよ。だってオリオンが勝ちますから。」
「・・まぁオリオンが勝つのだろうな。」
父であるジョンは、オリオンが勝つと言う事を実感していた。
7領主の領地経営方針を聞いたときに、あーこれは勝てないなと思ってしまったのだ。
ロストの計画の元は旧オリオン(3000年前)のやり方を真似たものである。7領の境にある関所の撤廃である。関所の撤廃から始まり一つの経済圏の確立、街道整備、税の引き下げである。
税の引き下げには皆反対であったが、今の税収をオスカーニが保証したのだ。
それならばと皆が賛成に回り成立した計画は順調に進んでいる。
「ロスト税収は大丈夫なのだろうな。」
「父上、心配し過ぎると禿げますよ。」
「誰が禿げるかー。」
「これを見てください。オリオンからのお土産です。」
「ずいぶん古い地図だな。」
「ここです。ここ。」
「んー、このマークは・・まさか。」
「そうです。迷宮です。」
「オスカーニ領に迷宮があるのか。」
「はい間違いありません。この迷宮は過去に地下迷宮として栄えていたそうです。世界大戦時には避難場所として使われていたことも有ります。」
「埋もれているのだな。もう使えないのではないか。」
「それは大丈夫ですよ。迷宮は息をするわけではありませんから掘り起こせば復活します。」
ロストはオスカーニのある場所を重点的に掘り起こしていた。
そして
「ロスト様、ありました。入口です。」
「あったあった。あったよかったーー。」
実はロストかなりビビっていた。自信満々な態度を取っていたが、胃がキリキリして眠れない程であったのだ。
ロストはふさがっていた入口を掘り起こし中に入っていった。
そこは確かに迷宮であった。中はきれいな石畳の迷路型であった。
「おーー魔物もいるなー。」
「ロスト様当たり前でしょう。迷宮ですよ。」
「へへへ、オスカーニに迷宮だぞ。迷宮。迷宮だーーー。」
自然と笑顔になるロストたちであった。迷宮は金になる。それはもう途方もないほどの金を生む施設なのだ。
これがオスカーニ領以外の場所であれば間違いなく。7領同盟は空中分解どころか戦争になっていただろう。それほど魅力がある物なのだ。
オスカーニは7領同盟の者たちに解放する事を約束していたのだ。税の保証の為に迷宮の権利を担保にしたのだ。
同盟者も、迷宮がある訳ないだろうと言っていたが。万一あれば税収どころの騒ぎではなくなるのだ。
この報は瞬く間に伝えられた。
「真か本当にあったのか。」
「凄いわ。フフフ。」
「信じられんな。」
「・・・・・」
それからのロストは迷宮周辺を休みなく開発していった。同時に探索も進めていったのだ。
「ヒャハー。迷宮、迷宮。」
「ロスト様、変な歌止めてください。こっち迄おかしくなりそうです。」
「いいじゃないか。鼻歌だよ。鼻歌ー。」
「でも本当に迷宮があったんですね。さすが世界を支配したオリオンですね。どこに何があるかを知っているんですね。」
「そうなんだよ。軍事力だけじゃないんだよ。オリオンは世界中の調査をしていたんだ。鉱脈や迷宮、各国の情勢なんかも全て調査していたんだ。」
「それでこの迷宮の規模は大きいんですか。」
「60層級の迷宮だね。1層から10層までは農地と放牧地だね。10層からは冒険者用に魔物と鉱石があるよ。まぁ俺たちだと30層ぐらいまでしか行けないけどね。」
「それでも7領の収入より多くなりそうですね。」
「なるね。農地だけでも超えそうだね。へへへへ。」
「ロスト様、その変な笑い止めましょうよ。気持ち悪いですよ。」
「だってもう金に困らないんだよ。好きなだけ開発が出来るんだよ。それも7領全てで開発しても余るほどの金があるんだよ。へへへ。」
この騒ぎは7領以外にも素早く伝えられた。商人、冒険者たちはオスカーニ領に押しかけていった。それは東の同盟領すべてに影響が出てしまった。
人の流れがオスカーニ領に集まっていったのだ。人・物・金とすべてがオスカーニ中心となっていった。
東の小国
「なぜだ。我が国がこの東で盟主であろう。」
「陛下、落ち着きましょう。まだ迷宮がきちんと稼働しておりません。今ならばオスカーニ領を潰せます。」
「おーさすが宰相だな。やれ。」
「わが国だけでは少々手こずりましょう。ですが協力者を募りオスカーニを潰します。」
「任せるぞ。宰相。」
「はっ。」
だがこの動きはロストの予想の範疇であった。
「まさか出陣出来ないのか。」
「宰相閣下、物資が集まりません。国の物資だけでは賄いきれません。協力する国や領主の物資も用意できません。」
「くっ。商人どもめ。」
この事でこの国の信用は地に落ちてしまった。東の同盟がまた一つ減っていったのであった。
ロストは予想したシナリオであったために、商人たちを動かし小国や領主たちに物資を止める作戦に出たのだ。小国や領主は物資が無ければ戦が出来ないのである。協力した商人たちはオスカーニ迷宮からの利益を天秤にかけ協力する事にしていたのだ。ロストが強制した訳でもないのである。
「商人会の皆さんご協力感謝いたします。」
「なんの何の、オスカーニ卿には迷宮がございます。その恩恵のおこぼれにあずかれるのです。」
「ありがとうございます。商人会の皆さんには迷宮町の店舗出店の許可を出しましょう。」
「「「「おおおおおおおお」」」」」
「流石オスカーニ卿ですな。話が早い。」
「これからも良しなにお願いいたします。」
「まだまだこれからですよ、オリオンとの交易も始まります。一つの迷宮の利益など吹っ飛びますよ。」
「真でしょうか。あのオリオンの魔化製品が手に入るのですか。」
「入ります。オスカーニ商会を通じて各商会に手数料1%で卸します。」
「ななななんと手数料1%ですか。ぜぜ是非お願いいたします。」
東の商人たちは世界中をまたにかけた商売をするようになっていくのであった。




