表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
630/919

630話 魔の森

魔の森そこは古より、不浄の森などとも呼ばれている。


その森に今デニーズ王国軍の施設がある。その施設は兵の訓練場、宿舎などがあり3万人者兵士たちが訓練をしている。


「兵の訓練は進んでいるか。」

「はっ閣下、順調であります。」

「そうか死者が多くなっているようだがあまり殺すなよ。」

「大丈夫であります。その辺のさじ加減は心得ております。」

「・・・」



この訓練場では徴兵された元農民たちが訓練を強制されていた。元農民に強化剤を注入し人を強化しているのだ。強化剤は人の思考も低下させている。命令に服従するように兵を仕込んでいるのである。




ある地下施設



「陛下、3万の強化兵は順調な仕上がりです。」

「そうか、わが軍はこれでオリオンに勝てるな。」

「はい陛下、ですがいまだに王都へオリオンが進軍していないことが気がかりです。」

「そうか、オリオン領都の損害が大きかったのではないか。」

「その事もちろん影響しているはずですが、無傷なドラゴンがどこにいるのかが分かっていません。」

「ドラゴンか厄介な相手だ。」



デニーズ王に取ってドラゴンはその程度の認識でしかなかった。本物のドラゴンを知らないために恐怖が無いのであった。それはかなり大きな間違いであることを今後知る事になるのだ。




魔の森



アレクは魔の森に入っていた。デニーズ軍の訓練を隠れて見ていたのだ。

軍の訓練というよりも兵器をつくっているようであった。


「これ死兵にするつもりか。」


アレクは3万のも兵が死兵となった事を考えていた。かなり拙い状況に陥る事が分かる。この場で殲滅しなければ多くの地域で被害が出る事が分かったからである。

一か所にいる今殲滅しなければ3万もの死兵を殲滅する事は出来なくなるからである。


幸いにまだ訓練は続いている為に各地に派遣される様子はない。


「どうするか。」


アレクはこの場で殺してもアンデットとなり別の脅威となる為に攻撃をすることを躊躇ってしまったのである。


一度ガレオン号へ戻りレッド達を呼ぶことにしたのだ。圧倒的火力で3万の兵を焼き払う事にしたのである。


灰になる迄焼き払う。



「レッド、クロとドラちゃん、ブルーも呼べるか。」

「あっアレクーー、呼べるよ。ねー今度はどこ行くのーー。」

「森を一つ焼き払うんだよ。灰になる迄な。」

「もしかして魔の森。」

「よくわかるなレッド。」

「へへ、だって灰になる迄焼かなきゃいけない場所なんてそんなにないよー。」

「そうだったな。すぐに行けるか。」

「えーーっとカインはどうするの。」

「そう言えばいないなカイン兄はどこ行ったんだ。」

「へへそれがね、今デート中なんだよ。」

「マジか。」



アレクはレッドを連れて魔の森へ向かっていた。



「レッド、クロたちは大丈夫か。」

「うん大丈夫だよ、こっちに向かっているよ。」

「よし、魔の森を周りから焼いていくようにするぞ。逃げられないようにする。浄化の炎も忘れるな。」

「任せて、アレク。浄化も再生もいけるよ。」




「アレクが命ずる。魔の森を焼き払え。灰になる迄焼き尽くせ。」




5体のドラゴンが魔の森の周りから森を焼いていく。外回りをぐるっと焼き払い外へ逃げる事が出来ないようにしていった。広大な魔の森であるがドラゴンの力の前ではその広さもあまり役には立たなかった。


森の外縁から焼かれていく魔の森は徐々に中へと向かっている。その頃森の中の兵たちは炎の熱気と酸素不足の為に多くの者が死んでいた。


アレクも予想外であったことだが炎は中心へと集まるのだ。そのために熱波が襲い掛かっていたのである。正気を失っている3万の兵たちはまだ幸せだったのかもしれない。まともでないために何が起こっているのかを理解していないからである。だが兵たちを見張り訓練していた者達は苦しみながら死んで往った。


「嫌だー死にたくない。」

「熱い、熱い、熱い」

「いやだー。」



最初に一酸化中毒で死ねた者達は楽であったであろう。眠るように死ねたのだから。



アレクはガレオン号の甲板からその光景を眺めていた。

流石のアレクも顔を顰めたくなるほどであった。だがアレクが決断して指示を出したのだ。目を背けるわけにはいかなかった。


「人は醜いな。自分の幸せの為に人を殺すんだからな。」


誰も聞いていない。


アレクは自分が大量殺戮者であることを自覚している。戦争のない世界をつくるためには戦争をしなければならない。人とは話し合いで解決できる生き物ではないのだ。戦いを好み、求める種族なのである。


人は優越感の上にしか存在できないのだ。知性のある生き物である人間は惑星の支配者階級であることを無意識に意識しているのだ。力の弱い者であろうが子供であろうが無意識にそして親も無意識に教えているのである。


例えばペットをかわいがる。それ一つでも支配者と非支配者と立場が明確にしているのである。小さな子供が大きな犬を撫でる。万一犬が噛み付けば容赦なく犬は殺されるだろう。言い訳など聞かない、聞く事も出来ないが間違いなく処分される。それは支配者に害を与えたからである。


家畜は人の食料である。殺すために生かされている。非支配者である家畜は贖う手立ても考えもないのだ。それこそが非支配者であるのだ。


どんなに強大で力のある者でも支配者側ではない物は殺されるのだ。支配者に階級に外のある者は全て排除の対象となるのであった。

又支配者同士でも日々争いは生まれている。オリオンとデニーズ王国の戦争も支配者階級同士の争いである。



「答えなんか無いのかもな。」



それは極論であり、考えの放棄ともとれる結論であった。



3万に以上の焼け死ぬ姿を眺めていたアレクは妙な感情に支配されていた。

それは罪の意識なのかはわからない。一つだけ分かる事は他の者にはやらせないであった。



丸5日魔の森は燃えていた。


全ての物を焼き尽くして灰になり、土に帰っていった。


そして灰の中から又新しい命が生まれてきていた。焼き払われた森に木の芽が出てきていた。


それは幾度も繰り返される星の生業である。



後にこの魔の森は再生の森と言われるようになる。

再生の森は生命力に溢れ、怪我も病気も治りが早くなると言われるのであった。

3万もの抜け殻魂の生命力がこの森に宿り人に生命力を与えていったのである。

それは生きる事が出来なかった3万もの兵たちが恨む事もなく、人として死ねた事を感謝していたのであった。


最後の仕上げをされる前であった為に人として死ぬことができたのであった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ