63話
建国会議
今、建国に関しての会議が開かれていた。
出席者は、ローエム王国宰相、トロレス・リームス侯爵。
ローエム王国、ウェルソン・ローエム王子
ミルトン王国宰相、ガーロン・リンガー侯爵
ローエム王国、ハロルド・オリオン公爵、
グラムット帝国、デオドール・マルティス男爵、
グラムット帝国、バッハ・ウッドリー男爵の6名である。
ハロルドが進行を行う。
「今回の会議は、国の名称、国境、そしてローエム王国からの承認です。まずは国の名称ですが・・。」
「ミルトン王国、サウスローエム王国、オリオン公国、マルティス王国、獣王国となります。」
「国境ですが、これが少し、問題が出ました。・・・・」
ハロルドは、説明をする。
現在の無法地帯は、治安の回復をしている、本来は国境になるが、防衛上グラムット帝国側に少し食い込むと運河があり、そこを境界線にしたら如何かと提案したのだ。運河手前に境界壁を、建国と同時に造作作業をやれると説明を付け加えていた。
その間にある村、町等は、境界壁を造ってしまえば従うしかなくなるので、後でも対応が出来るだろうとも。
グラムット帝国とは、現在戦争中であると、領地も確定していないので問題ない。
なら、戦いをやり易いようにした方が良いのではないかと。
ハロルドは計画図と各国の国境境界線を現した地図を配っていた。
大森林側にオリオン公国となりをサウスローエム王国、マルティス王国、獣王国となり、その後ろにミルトン王国になる。5か国の内ミルトン王国の国土が一番広い、次にオリオン公国となり、あとの3か国は同じぐらいだ。
ハロルドの説明が終わる。
「何か、質問はありますか。」
「ハロルド殿、運河手前に造る、境界壁だが出来るのですか。」
「王子、家のアレクの事は知っていますか、あやつが出来るというのであれば出来ます。」
「あの神童ですか。」
「もう、童ではないですが。普通ではありませんよ。はははっ」 ハロルド疲れた笑いをする。
アレクを知っている者は、誰も疑っていなかったようだ。
ローエム王国宰相はミルトン王国宰相に声をかける。
「リンガー殿、此度は、ご苦労をおかけした。ありがとう。」
「苦労など。ミルトン王国はグラムット帝国との戦争で疲弊しています。生き残るには、いや勝つためにこの同盟を結ぶのです。」
ミルトン王国は、属国、協力国とは言わず、同盟という。一つのプライドがあるのだろう。
今後、各国も言い方を変えていく、同盟と呼び名が変わって行った。
こうして、ローエム王国、国王を君主として属国5か国の同盟が結ばれる。
同盟の開始は、建国宣言時となる。各国の署名時
建国宣言自体は、南部では簡素に行う。事務的に宣言証を作成するだけに留める。
後日、各国に知らせる。これはミルトン王国への配慮とグラムット帝国に、境界壁完成まで刺激をしたくないとの考えからだ。
ローエム王国では宣言後、派手に行う予定だ。何しろ、ローエム王国の属国が出来るのだ。
それも、大陸南部未開の地に、事実上の国土が広がったからだ。
各国の首脳陣は、ローエム王国に行く事になる。
一通りの説明も終わり会議は終了した。
「ハロルド公爵。」
「どうしました。ウェルソン王子。」
「私は、国をやって行けるでしょうか。心配なのです。」
「大丈夫ですよ、その心配する気持ちがあれば。その気持ちを忘れなければ大丈夫です。」
「お仲間の、貴族の子息を連れてくるのでしょう。助け合いながらやって行きましょう。特に戦争中ですから、協力しないと国を亡ぼす事になりますから。」
「そ、そうですね、戦争中に建国するのでした。貴族たちの、気を引き締めなければいけませんね。皆、少し浮かれているので。」
「一国をまとめ上げるのは、大変です。況してや、戦争をしている地域に国を創るのです。」
ローエム王国の貴族たちは、サウスローエム王国の建国に大賛成をしていた。自分たちの子息を送り込むためだ。利益だけではなく、次男以降の爵位をもらえない子供を送るのだ。新しい土地で爵位貴族にするために、オリオン家にも沢山の売り込みが来ている。オリオン家もさすがに全てを断れない。親戚となる貴族、関係の深い貴族に、一定の席を用意している。
「アレク、境界壁の用意は順調か。」
「カイン兄、何とかなるでしょう。カイン兄たちにも、協力してもらうしね。」
「魔道具も作っているから、何とかなるでしょう。」
「数日はかかるから、空からの監視体制をしっかりやらないとね。」
境界壁の建造は、魔法と魔道具を使っても数日を要する工事だ。
人員も2万人動員してなのだ。
さすがにグラムット帝国も気付くだろうと、軍隊の配置と航空偵察を密に行うこととなる。
2万人は兵ではなく、作業員なのだ。この人たちを守り、建設を行うのだから大変な工事になる。
アレクは、少しでも早くできるように考え中だ。 悩んで頭から湯気が出ている。
「うんーーーーん、んーーーーん。」
アレクは、閃いた。
魔法を使い、現地で造る事ばかり考えていた。
出来る限り、造って置けばいいんだ。補強はあとで出来る。
アレクは、逆Tの字の形を準備中の作業員に造らせていった。造ったものは貨物船で運ばせれば工事の短縮が出来る。
それからは、マリア、イリアが出張ってきた、何か作業員たちに指導している。なぜか仕事の効率が飛躍的に上がっていった。
アレクは、何も見てないと呪文のように独り言を言っていた。
逆T字の壁、土台は幅6メートル、壁の高さ6メートル厚さ2メートル、長さ10メートルの境界壁が出来た。これを運んで置いていく。補修と補強は後回し、階段も後、すべて後回しにする。
壁だけ造る。アレク自身も現地で造る予定だ。
作成した壁を現地近くに運び込んでいく。一日で造るために、飛行船もフル稼働し、労働者は機械のように働いている。これで当日以降も、働けるのか心配している者もいるが、何も言えない。
これで準備も整い。建国を待つだけとなっていた。
「いやぁ、疲れたなぁ。当分働きたくないよ。」
「師匠、本番はこれからですよ。まだ始まってもいません。」
「・・・・・・・そうだった。」
アレクは、一段落した瞬間、気が抜けてしまった。もう一度、気合を入れるのは大変だぞ。
そして、当日を迎えた。 大丈夫かぁ。




