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627話 死闘2

その戦いは壮絶であった。


オリオン騎士団は何度かの突撃で大きく数を減らしていた。相手はまだ4000もの数を要しているのだ。

馬も疲弊しているこのままでは後一撃が出来るかどうかであった。

そこに後方から数十人の一団が割り込んできたのだ。ガレオン号から飛び降りた者達である。

この者達は走りながら魔法を放ちデニーズ軍を翻弄している。


「爆炎をやるぞ。」

「「「「「おう」」」」」


「撃てー。」



ガレオン号と数十人の援軍によってオリオン騎士団は壊滅せずに引くことができたが、残されたアレク隊の者達は逆に追い込まれていった。




ガレオン号



「よしこれで治療は大丈夫だろう。後はアレク様が目覚めれば大丈夫だな。」

「よかった。ですが艦長、領都の中に入るのですか。」

「いやこの場で攻撃を続行する。領都の防壁内に入ってはガレオン号の威力を発揮できなくなるからな。」

「そうですね。それに艦隊が応援に来る時間を稼がなくてはいけませんからね。」

「それまで外の者達が持てばいいのだがな。」

「・・・・・」





「くそー、敵が多すぎだぜー。」

「当たり前だろ、こちらの100倍いるんだ。」


デニーズ軍はオリオンの事をきちんと研究していた。魔法攻撃を想定して盾を持っているのだ。ファイヤーボールなどの遠距離攻撃を盾ではじき返しているのである。


「あの盾、邪魔だな。」

「嗚呼、特殊な盾だろうな。」


アレク隊の者達は魔力が尽きていた。後は剣のみでの勝負となっている。


「「おりゃー。」」


アレク隊一人に対してデニーズ軍は4人で囲んでいる。アレク隊の者は一人又一人と数を減らしていく。

だがデットとルイスはまだ走り回って敵をかく乱している。



「あの二人を仕留めろ。」


デニーズ軍の副官はデットとルイスに狙いを絞っている。


そこにアレク艦隊のワイバーン隊が駆けつけたのだ。上空から急降下するワイバーンはまるで爆撃機のようであった。


デニーズ軍は突然の上空からの攻撃で怯んだ。この機にデットとルイスは敵の指揮官を狙ったのだ。


「行くぞ。」

「おう」


二人は指揮官に向かって駆けていく。二人は左右から指揮官を狙っている。言葉を交わしたわけではない。二人に相手がどう行動をとるのかが分かっているのだ。

息のあった攻撃であった。デットは指揮官の乗る馬の脚を切り裂いていた。

馬は驚き、暴れる。そのすきをついてルイスが指揮官の首を撥ねていた。


「うりゃーーー。」


指揮官の戦死はデニーズ軍にとって負けを確定するものであった。


だがデニーズ軍の兵たちは引く事をしなかった。




「クソー何故引かないんだ。」


「拙いな、もう俺たちしか残っていないな。」


デニーズ兵たちはデットとルイスに向かってくる。二人も死に物狂いで応戦しているがもう限界となっていた。敵の指揮官を打ち取った所で力は尽きていたのである。それをまだ持たせている事事態異常であった。

それは生への未練であった。二人の大好きなカリーを一人残させたくないとの思いからである。


足掻いて、足掻きぬいて生き残る。死を覚悟して乗り込んだ戦場で生への執着が生まれたのだ。

100倍もの敵と対峙して死を覚悟していたが、生き抜けると言う思いが出てきていた。



「この場を突破するぞ。」

「ガレオン号に戻るか。」

「あーそうだワイバーンが来たんだ。仕事は終わった。」

「あとは生き残るだけだな。」

「行くぞ。」



二人は同時に走り出していた。デニーズ兵たちもそれにつられるように二人を追っていく。

それはオリオンの防壁を背にする事でもあった。

防壁にはまだ弓兵や魔法攻撃の出来る者達がいるのだ。防壁から一斉に放たれた攻撃魔法はデニーズ兵の背に降りそそいでいた。


その攻撃により、デニーズ軍は混乱してしまった。立ち止まり防壁に向かう者、二人を追う者とに別れてしまったのだ。その混乱がデットとルイスの命を繋いだ。



二人はガレオン号の真下迄引くと崩れ落ちるように寝転がっていた。


「生き残ったな。」

「ああ、だけどかなりの戦死者が出たな。」

「・・・・」


二人は黙って戦場を見つめている。するとこちらに駆けて来る者がいる。


「おおおおーーい。」


3人の男たちが駆けてきている。


二人を見ると3人はもう走る事も出来ないのかその場で転げてしまっている。

「大丈夫か。」

「よく生きていたな。」


3人は疲れ切っている為に喋る事も出来ない。


「ガレオン号から救護班を呼んできてくれ。」


デットがルイスに指示を出す。


「すぐに呼んでくる。」



5人はガレオン号内に戻る事が出来たのだ。デットとルイスを見たカリーは大粒の涙を流していた。


「よかった。」

「ただいま。」

「死ぬわけないだろう。」




この戦闘はオリオン軍の勝利となった。



アレク艦隊の応援が到着するとデニーズ軍は殲滅されたのだ。デニーズ軍は最後の一兵まで戦う事を止めなかった。この戦闘で捕虜は一人も出なかったのだ。



オリオン側は降伏勧告を出し戦闘を止めるように何度も伝えたが、聞き入れる事はなかった。



後に判明したことだが、この部隊の者達は死兵とされていたことが判明する。死ぬ為に敵に特攻をすることを任務としているのだ。

デニーズ王国内で家族を人質とされ断る事の出来ない者達であった。死ぬまでそんな戦場を繰り返す集団であった。



ガレオン号



「そうか、自爆部隊か。」

「はい、そのような部隊がある事は分かっていましたが、まさか全滅するまで戦闘を止めないとは。」

「確かに厄介だな。あんな部隊がゴロゴロいたんではたまらないな。」

「アレク様、どういたしますか。」

「一度、皆で協議しなければなるまい。カイン兄も呼んでな。」

「では領都へ入りますか。」

「嗚呼、他の戦況も確認したいしな。それに死体の処理をしなければな。」


オリオン領都の前には死体で埋まっていた。デニーズ兵約5000の死体である。

放置する訳にはいかない。放置すれば疫病の元となるからである。火葬処理をするために数日を要すであろう。



アレク艦隊はオリオン領と内へと着陸した。


アレクの活躍は領都内からも分かっていたために領民たちの熱狂はすさまじかった。




「「「「「「「おおおおおおおお」」」」」」」」




「「お帰りなさい。アレク。」」


「マリア姉、イリア姉ただいま戻りました。」

「よかったわ。生きていたのですね。報告を聞いたときは心臓が止まるかと思ったわ。」

「そう簡単には死にませんよ。ハハハ。」

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