623話 アレク戦闘開始
カイン達が戦闘開始した頃、アレクは新兵1万を引き連れて空を飛んでいた。
「いいか、これからデニーズ軍3万と戦闘するが今回は基本お前たちは見学だ。」
ザワザワザワ
「お前達ではまだ無理だ。まぁ最後に少し経験として参加させるぐらいだな。」
「「「「「はっ」」」」」
「アレク様、報告いたします。敵3万は明日には空白地帯を抜けます。」
「そうか、戦場に適した場所はあるか。」
「偵察艦が確認しましたが平原等はありません。」
「仕方ないな。」
アレクは少し困っていた。戦場に適した場所が無いのだ。アレクの予想ではもう少しデニーズ軍は迂回して平原方向に出てくると予想していたのだ。だがデニーズ軍は軍を3万の軍を6つ5000で別ルートで進軍していたのである。
アレクの艦隊はガレオン号、空母2隻、中型艦4隻、小型艦20隻、貨物船4隻である。
「中型艦4隻は空白地帯とオリオンの境にて待機、敵が出てきたら殲滅しろ。小型艦はデニーズ軍の後方へ回って逃げてきた者達を殲滅だ。空母部隊はワイバーン隊で各個撃破していくぞ。」
「「「「「はっ。」」」」
アレクはデニーズ軍が6つの部隊に別れていたことで敵に番号を付けていた。
「よし、行くぞ。」
アレクはガレオン号で一番先行している部隊を目指していた。この部隊をアレク一人で殲滅するつもりなのだ。
アレクの狙う部隊は山道を進んでいた。大軍で進むには不向きな道である。
「3万の指揮官はかなり思い込みの激しい奴かもな。」
「どういう事でしょうか。」
「ん、こんな山道を大軍で進軍している、3万の軍であればもっと迂回して平原を通るルートを普通は選択するだろう。ところがこの指揮官は6つに分けて細い道でオリオンに奇襲をかけようとしている。まぁオリオンの各村を攻略するのに大軍は必要ないとの判断だろうが、目的地点までは一緒に行動すべきだ。」
「はぁ。」
アレクの説明を聞いていた部下は余り理解できていなかった。
「まぁいい。俺は出るぞ、後は頼むぞ。」
アレクは一言いうとガレオン号から飛び降りた。
山の中に降りたアレクはひたすら走る、走るデニーズ軍の先頭に向かっているのだ。30分ほど走ると漸く進軍中のデニーズ軍を発見する。
アレクはそのまま敵軍に突っ込んでいった。
突然現れた敵襲にデニーズ軍は何が起きたのか分からなかった。デニーズ軍は敵襲を警戒していなかったわけではない。だがそれは一人で敵襲をかける者を想定していなかった。少なくとも何百程度の部隊を想定していたのである。たった一人で5000の兵に突っ込むバカなど想定できるものでは無かったのだ。
アレクは一人の為デニーズ軍は気づくことが出来なかった。アレクは無言で先頭集団を剣で斬り殺していった。
「敵しゅ。」
スパっ
細い山道での戦闘である。アレクの相手にする人数も多くても10人程度である。一振りで一人を倒しながら少しずつ斬り殺していく。100人程度殺したところでデニーズ軍は敵襲の報告が部隊長にまで届いた。
「敵襲だと。蹴散らしたのか。」
「いいえ、今も戦闘中です。」
「相手は小数だろう。」
「確認できた数は一人です。」
「一人という事はあるまい。森にでも隠れているのだろう。周辺の森を警戒しながら進むぞ。」
「はっ。」
だが次々と入る報告に部隊長は困惑する。
「一人だと。たった一人を殺せないのか。」
「・・・恐ろしく強いのです。一振りで鎧ごと真っ二つにされてしまいます。」
部隊長は細長く伸びた部隊の最後尾にいる。進軍を止めて側近4人と自らがそのものを仕留めるために向かう事にしたのだ。
「このまま待機だ、気を抜くなよ。いつ森から敵が来るか分からんからな。」
「はっ。」
「行くぞ。」
部隊長は細い道を馬で駆けていった。5頭の馬が駆け抜けていく。次第に戦闘音が聞こえてくる。
部隊長は嫌な感じがヒシヒシと肌にまとわりついてくる感覚であった。
部隊長のみた光景は進む事も戻る事もできずに殺されていくデニーズ兵たちであった。
「どけーーー道を開けろーーーー。」
デニーズ兵たちは後ろから聞こえた声で振り返る。だが振り返った者はそのままアレクに斬り殺されていく。戦闘中に敵から目を話すことは死を意味している。それも自分たちは狩られている立場なのだ、一瞬の判断で死ぬのである。
「くそーー。おりゃーーーー。」
部隊長はアレクに向かって馬ごとぶつけたのだ。
突進してくる大きな馬は、アレクを踏み潰す勢いであった。だがアレクはそれを受け止めて馬ごと投げ飛ばした。
馬に乗っていた部隊長もそうだが、それを見ていた兵たちも信じられない光景を見ていた。
アレクは突進する馬を当たる寸前に足を斬り落としていたのだ。馬はそのまま転がるはずであったが、4本の足を斬られた馬はそのままの勢いから数メートル先で転がる事になったのだ。アレクは馬の脚を斬り落とす事で馬との地上に空間が出来た事で直撃を逃れたのである。アレクが馬を投げ飛ばしたように見えたのは馬が通った直後にアレクが体勢を起こしたからであった。だがまだ馬に乗る者が4人残っている。その者達は槍を持ちアレクを串刺しにする構えだ。
アレクは槍を斬り落としていく、まさか槍を斬られると思ってもいなかった騎士たちは馬から飛び降り、一人は部隊長の元へ残り3人はアレクを囲むように距離を詰めていく。
槍を折られた騎士たちは剣を抜きアレクの死角にいる者が攻撃をかけていく。
よく訓練された騎士である。一人に対して3人で囲んで仕留める。騎士のプライドを捨てた戦法である。
アレクはそれでも焦ることはなかった。死角から攻撃されるが後ろに目がついているのか避けている。
驚く騎士であったが、今はそんな事はどうでもいい事なのだ。振り降ろした剣を今度は振り上げてアレクを狙う、それも空振りとなり大きくのけぞるような体勢となった所をアレクの剣が騎士の腹に突き刺さっていた。
アレクは素早く剣を抜くと血塗られた剣を振り払うように残りの騎士に向けて血を飛ばしていた。
その血はふたりの騎士の顔を目掛けて飛んでいた。それは人の性なのか血と分かっていても避けてしまうのだ。無意識に避けてしまった騎士たちは一瞬の隙が出来る。その一瞬の隙は致命傷であった。アレクの剣が一人の騎士を斬り殺す。そして同時にもう一人の騎士をアレクの左手から投げられたナイフが騎士の右目に突き刺さっていた。騎士はそのまま崩れ落ちるように倒れていった。
その光景を見た兵たちはもう戦う事を忘れていた。アレクから遠ざかる事しか考えていなかった。
「ば化物だー。」
「にに逃げろーー。」
「殺される。」




