622話 対決
「でどうなんだアレク。」
「調べたところではデニーズ王国は獣人達の領域で戦闘する算段ですね、これはうちと同じです。デニーズ軍約7万を二つに分けて進軍予定ですね。3万と4万ですね。
この一方をカイン兄とレッド、獣人部隊に担当してもらいます。カイン兄の方で4万をお願いします。」
「おっ俺の方が多いな。まぁレッドがいるから大丈夫だろう。」
「レッドにはクロとドラちゃんも応援に来てくれるようですから大丈夫ですよ。それに実質レッド達だけで戦闘は終わるでしょう。」
「えっ俺いらないのか。」
「・・・・・・・」
そしてデニーズ王国から宣戦布告がオリオンへ伝えられた。
宣戦布告に伴い、カインは獣人達の村であるダム村を前線基地としてデニーズ王国を監視していた。
「カイン様、デニーズ軍4万は前衛1万として進軍しています。ダム村より3日の距離にあります。中平原を陣地にするようです。」
「よーーし、予定通りだな。」
カインと獣人達は中平原に向かった。
「おーー凄い数だな。」
カインの目前には4万もの兵が犇めき合っていた。簡単な柵を作り陣地としている。デニーズ王国の考えは別部隊である3万の軍が空白地帯を迂回してオリオン領へなだれ込む予定であった。この4万の軍はオリオンを引き付ける役目である。そのために自分たちの戦いやすいように陣地を固めていたのである。
デニーズ軍(4万)
「将軍、簡易砦の建設に入りました。敵襲が無ければ10日ほどで砦は完成いたします。」
「そうか、敵もまだ2000程度だ。オリオン軍は1万との報告が来ている。あと8000は数日のうちに来るだろう。それまでに砦を完成させろ。」
「はっ。」
だがこの考えは根本が間違っている。カインの軍にはオリオンの兵が一人もいないのである。
翌日
カイン達はデニーズ軍に対して攻撃準備に入っていた。
「カイ・・大将、本当に俺たち戦わないんですか。」
「嗚呼そうだ。ここでお前たちの兵を失うわけにはいかないんだとさ。」
「アレク様の作戦ですか。」
「そろそろ行くぞー。」
カイン達はデニーズ軍向かって進軍していく。その速度はかなり遅い。
デニーズ軍
「将軍、オリオン軍2000がこちらに向かっております。」
「ほーーっ、援軍が来ないうちにこちらに来るのか。こちらは1万の兵を前面にだせ。5倍の兵力だ踏みつぶせ。」
「はっ。」
簡易な柵内から出てデニーズ軍1万が横一列に展開する。
「カイン様、約1万の兵が出てきました。」
「進軍を止めー。」
カインは敵前800メートルの位置まで来ると前進を止めた。
カインは一人軍の前に出ていく。
「デニーズ軍、俺はカイン・オリオンだ。このまま素直に国へ帰れ。そうすれば死ななくて済むぞ。」
「「「「うおおおおおおおお」」」」」」
「デニーズ軍よ、オリオンに勝てるとでも持っているのか。大きな間違いだぞ。お前たちはもう負けている。」
「何を言っているんだ、馬鹿少年君。この戦力の差を理解できないようだな。数も数えられないのか。」
「「「「「「アハハハハハハ」」」」」」」
「デニーズ軍の兵たちよ。勝てないのら逃げろよ。行くぞーーーーー。」
カインが叫んでも何も起こらなかった。妙な間が空き、カインもどうしていいのかが分からなかった。
「「「「「ガハハハハハハ」」」」」」
「どうした何も起こらないぞ。口だけかガハハハハ。」
1万を預かる将軍は最初少し警戒したが、何も起こらない事でお腹が痛くなるほど笑い苦しんでいた。
「これが敵の策であったならば、俺の負けだな。ククククッ。あーダメだ、お腹が痛い腹筋が崩壊しそうだ。」
デニーズ軍の兵たちも笑っていた。一方カインは顔を真っ赤にしてて怒りで震えている。
「くそーー、レッドは何してるんだ。俺が嘘つきになったじゃないか。」
その10秒後、上空から3体のドラゴンがデニーズ軍に向かって急降下していた。
皆笑い過ぎて上空など誰も見ていなかった。普通でも地上に敵がいるために空を見る事はないのだが、今回は特に笑いも入り誰一人気づかなかった。
3体のドラゴンはほぼ同時にブレスを放っていた。
それは一瞬で1000人ほどを焼き尽くすほどの威力があった。
レッドは前衛軍である1万の中心地に放ち、クロとドラちゃんは後衛の3万に放っていた。
レッドの放ったブレスは1万を指揮している者を直撃していた。そのために幹部の殆んどが焼き死んでいたのであった。
レッドがデニーズ軍のど真ん中に降りると咆哮をあげた。
「GAOOOOOOOO」
レッドの咆哮でデニーズの兵たちは固まってしまった。死の恐怖で動けなくなってしまったのだ。レッドはそんな動けない者達を尻尾で薙ぎ払い、手の爪で引き裂いていった。
「ににに逃げろーー。」
一人のデニーズ兵が叫んだ。
その一言で皆我にかえる。
前衛軍の生き残りたちは四方に逃げ出していた。砦に逃げこむ者、オリオン軍に向かう者と色々であった。オリオン軍に向かった者達が一番生存率が上がった事は皮肉でしかなかった。
砦に向かった者はクロとドラちゃんの餌食となり。横に逃げる者達も同じようにブレスなどで殺されていった。オリオン軍に向かって逃げた者達はドラゴンからの攻撃が無かったことで死なずに済んだのであった。だがオリオン(獣人)達にもてあそばれていた。
「なぁこれ戦争なのか。こんな弱い戦士は初めてだぞ。」
「・・・・・知らんよ。デニーズ軍に聞けよ。」
獣人達は困惑していた。ドラゴンの奇襲で逃げて来た兵が余りにも弱いのだ。
デニーズ兵は剣を持ち皮鎧を着ている。一方獣人達は皮鎧のようなものはつけていない。
必死に斬りかかるデニーズ兵を笑いながら避ける。そして軽く殴ると兵が面白いように吹っ飛んでいくのだ。
「あいつら本気でやっているのか。」
「顔は本気っポイな。」
「弱すぎだろう。」
獣人達は余りにも弱い兵の為にやる気も無くなっていた。これはデニーズ兵が弱いのではなく。獣人達が強いのであった。獣人達は人間と比べかなりの身体能力が違うのである。人の2倍以上の能力の違いである為に弱いと判断したことは間違いではないのだ。知らなかっただけである。
ドラゴンが暴れ狂っている為にカインと獣人達は見ているだけであった。たまに来るデニーズ兵も片手間で殴り飛ばしている程度であった。
「あーーー暇だな。」
「大将それは仕方ないですよ。ドラゴンの戦闘に巻き込まれますからこのまま待機ですぜ。」
「・・・分かってるんだけどな。」
そして30分後ドラゴンたちの戦闘は終わっていた。




